ハイヒールを男性も履いて一日働くような施設が出来るといい。#KuToo/内田春菊

女子SPA!

2019/8/7 08:46

 職場で女性にのみ、足への負担が大きいパンプス・ヒールを義務付けることをやめるよう求める動き「#Kutoo」が大きな広がりをみせています。

グラビア女優でライターの石川優実さんが、セクハラ被害を訴えた「#Metoo」にちなみ「靴」と「苦痛」をかけあわせ「#Kutoo(クーツー)」名付けて呼びかけた運動は、すでに3万人以上がネット署名しています。

けれども、石川さんが6月3日、厚生労働省に署名を提出しましたが、その後の国会答弁で根本匠・厚労大臣が「(女性の)ハイヒールやパンプスの義務付けは社会通念に照らして業務上必要な範囲かと思います」と話すなど、なかなか解決への道は険しそうです。加えて、石川さん個人へのバッシングもひどいのが現状です。

こちらのニュースについて、マンガ家・小説家の内田春菊さんに読み解いてもらいました。(以下、内田春菊さんの寄稿です)

◆#KuTooで思い出す「ヒール付きミュール強制」の職場

ニュースを聞いてまず思ったことは、この運動を始めた人は相当な目に遇ったんだろうな、ということですね。ハイヒールは好きで履いてる人も多いし、ヒールでないとここはどうも映えないという場もある。強制されるって話も、わたし自身が自由業者なせいもあるでしょうが、あんまり聞きません。すんげえヤな奴から、ねちねちやられたんだろうな~。

私の唯一のその手の体験をお話ししましょう。池袋の「りりかる」という喫茶店のウエイトレスしてた80年代のことです。そんな昔の話してどうするとお思いでしょうが、当時でもちょっと珍しかった。そこの部長(観光会社経営の喫茶店なので店長より偉い人がたまに来る)はなんと、「ヒール付きミュール強制」してたのです。

ミュールって、もちろんかかとの固定できないサンダルのことですよ。私はラグジュアリータイムに、部屋着でゆったり歩くときに履くものと思ってました。

当時は生足文化がなかったため、ウエイトレスは皆ストッキングにミュール。どうなると思いますか。足がむっちゃ痛いのはもちろん、銀盆片手にオーダーを運びまくらなくてはならないのによちよち歩きしか出来ない。踏み外してコーヒー浴びた同僚もいました。上の階に出前に行った帰りの階段に響き渡るヒール音。なんにしてもヒールのミュールのウエイトレスって、ちょっと下品な気がするんですけどどうでしょう?

最初私はペタンコのパンプス履いていたんです。ウエイトレスとして妥当な靴と思ってましたが、そのゴリラ顔の常に上からの部長が、

「それだと大股でドタドタ歩くでしょうが!」とミュールを強制。私のパンプスから始まった話でもあり、まじか、と思いました(当時の言い方だと「ウッソー、ヤッダー」って感じかな~)。

結局部長様ご本人が、不自由なつま先立ちの小股歩きでお仕えするのが最も美しいというセンスをお持ちなのでしたが、誰からも反論は出ず。なぜなら皆、新しい制服に対する抗議で手一杯な時だったのです。

脇の下が出る不思議な袖(子ども服でたまに見かける形ですが、検索しても名前がわかりませんでした)のワンピの下にブラウスを着る権利をどうにか勝ち取ったウエイトレスたち。ミュールの働きにくさより脇の下が出ないことを優先したのです。

バレンタインに誰からもチョコがもらえないと怒る部長

ここの時給は700円で、当時にしては高給でした。「経験者優遇」と張り紙にあったので、経験者ですと言うと、「まずみんなと同じ時給で初めてもらうんですよ」と店長に言われ、その後ゴリラ上から部長から

「ふん、いくらもらうつもりだったか知らないけど」

と 鼻で笑われるという優遇にあずかりました。

社員とバイトのまかないにあからさまな差があるとか、海水浴で虫にさされて瞼(まぶた)が腫れたとき、ちゃんと支配人に見せに行ってから休んだのに、治って出勤したとたん店長から、

「だんなに殴られたんだってェ?」

と 嬉しそうに言われたり(一回目の結婚中で、実際DVされてました)、そんなことはまだいいとして、店長が自分の話を聞いてくれる天然女子(仕事出来ない)を可愛がって私のシフトを削って回してるのがばれた時、

「きみはちょっとうるさい(なんにでも抗議する)んだよね」

と 言われたのもほんとだからまあいいとして、一番驚いたのはバレンタインデーに、

「誰もチョコレート持ってこなかった」

とゴリ上部長が怒っていたことです。

社員ならそのくらいのご機嫌取りするかもしれないが、ウエイトレス全員バイトですからね!てか、この人もしかして、ウエイトレスたちに好かれてるとでも思ってるのだろうか?いったいその自信はどこから?

というわけで、きっとKuTooを始めた人のそばにもあのゴリ上みたいなのがいたに違いない。ほんとに気の毒です。ハイヒール、男性も履いて一日働くような施設が出来るといいですね。ぜひミュールとか、脇の下の出る制服も置いといて欲しいです。

<文&イラスト/内田春菊>

【内田春菊】

漫画家、小説家、俳優、歌手。1984年漫画家デビュー。1994年『私たちは繁殖している』『ファザーファッカー』でBunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。最近では自身の大腸がん・人工肛門の日々を描いた『がんまんが』『すとまんが』で大きな反響を集める。『ファザーファッカー』を実母の目線で描いた『ダンシング・マザー』を2018年に発表。

当記事は女子SPA!の提供記事です。

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