医師が解説 - 予防接種が社会人の常識である理由 第5回 東京2020で注意すべき感染症 - 医師が警告


東京2020大会開幕まであと1年を切り、ムードは一気に盛り上がりを見せてきていますが、その一方で懸念されているのが、海外からの感染症の侵入と流行の可能性について。

そこで、ナビタスクリニックの久住氏に、東京2020における感染症のリスクと、そうしたリスクを回避するためにできる対策について話を聞きました。

○東京2020と「はしか」や「風疹」のリスク

「東京2020大会期間中は世界中から多くの人が来日しますし、競技会場など、1つの場所に人々が密集する機会が増えます。そうした状況下では、感染症のリスクは高まりますね」と久住氏。では、どんな感染症が流行しやすいのでしょうか。

「今、世界中で流行している『はしか』や『風疹』は、海外から持ち込まれる可能性は高いと思います」

日本では、はしかや風疹の免疫を持っていない人が、大人世代に多くいます。近年、そうした人々の間で、数年おきに大流行が発生。ワクチン接種を呼びかけているものの、現実にはなかなか進んでいません。だからこそ、東京2020では、より一層の警戒が必要だと久住氏は言います。

「はしかや風疹は感染力が高く、大人が罹ると症状が重くなりがちです。ワクチン接種で予防できるのですが、何かきっかけがないとなかなか受けには行かないもの。東京2020を一つのきっかけに、免疫のない人は、今こそ受けておいてほしいですね」
○東京2020と「デング熱」のリスク

また、大会期間が夏の時期ということで、デング熱の流行も懸念されると久住氏は言います。

「デング熱は蚊がうつす病気です。熱帯、亜熱帯の地域では主にネッタイシマカという蚊が媒介するのですが、日本では、ヒトスジシマカ、いわゆるヤブ蚊が媒介します。2014年に、代々木公園周辺で日本初の感染例が見つかったことで話題になりましたので、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。

デング熱は、病気を持った蚊が日本国内に入ってきて発生するのではありません。人が持ってくるのです。ウィルスを持った人が日本に入ってきて、蚊に刺されるとことで広がります。東京2020の開催期間は蚊が多い時期なので、十分に発生し得ると思いますね」

デング熱のウィルスは、一度環境に定着してしまうと駆除するのは非常に難しいと久住氏。

「ウィルスが日本に入ってきてある程度定着してしまうと、蚊の卵にウィルスが入り、そこから毎年ウィルスを持った蚊が生まれてきてしまいます。そうなったら大変です。デング熱のあるシンガポールには、日本よりも蚊が少ない。それは、蚊の駆除のためにDDTという殺虫剤を使用しているからです。DDTは発がん性があることが分かっていますが、それよりもデング熱の方がはるかに有害なのです」

そんなデング熱から身を守るにはどうしたら良いのか。久住氏に聞きました。

「デング熱は、残念ながら予防のためのワクチンはないので、なるべく蚊に刺されないよう、虫除け対策を徹底することが重要です。また、週に1回は植木鉢にたまった水を捨てるなど、蚊を増やさないための対策も必要ですね」
○企業で集団予防接種を行う

たとえ予防接種の重要性や必要性を分かっていても、忙しいビジネスパーソンが仕事の合間に会社を抜け出して注射を打ちに行くというのは、現実にはなかなかハードルが高いもの。だったら、医療機関の方が彼らの下に出向いていけば良いのだと久住氏は言います。

「2013年、サイバーエージェントに依頼され、約3,500人の社員を対象に麻疹、風疹の集団予防接種を行いました。これだけの人に予防接種のためにクリニックに来てもらうのは大変なことですが、会社内での実施なら、極めて簡単に効率的に実現できます」

集団予防接種の実施にあたって企業側に依頼することは、予防接種希望者を集めること、そして当日の会場準備とスケジューリングくらい。医療機関側が事前に行うことも、保健所に届出書を提出するだけだと久住氏。

「2005年以降、予防接種法に書かれている予防接種は、すべて集団接種を行っても良いという解釈になっています。ですから、基本的にはどこでも実施できますし、それほど手間も要しません。近年、社員の人間ドック費用の助成を行っている企業が多くありますが、一方で、感染症の予防対策を行うことも大事なことではないでしょうか。

感染症は、たくさんの人がいる大きな会社ほど流行しやすい。東京2020を目前に控えた今こそ、ぜひ企業の皆さんにも、予防接種の集団接種について検討いただきたいですね」

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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