毎日ツラい…更年期障害のイライラに効く漢方薬

All About

2019/7/25 21:15

更年期障害が原因のイライラや倦怠感は、風邪で熱が出ることと同じ、自分ではどうにもできない「症状」です。上手につきあっていくための考え方と、助けになる漢方薬をご紹介します。

更年期障害のイライラ・倦怠感……感情がコントロールできず自己嫌悪に

クリニックで漢方相談をお受けする際、受診された症状とは別に、気持ちや情緒の状況についても伺います。この時に更年期世代の女性から「イライラして苦しい」とご相談いただくことは珍しいことではありません。

「更年期でイライラする」と聞くと、感情に任せてずっとイライラしているイメージがあるかもしれませんが、単にイライラしている方は少ない印象で、実際のご相談では、イライラや倦怠感、そういった気持ちの変動への疲れや罪悪感で、複雑な悩みを持たれている方が多いです。

例えば、

「夫と娘に対するイライラが止まらないんです。イライラするのが苦しくて、涙が出ることもあります。あと職場の少し非常識だなと思う人にもイライラしてしまって……全部、私に負担がくるからだと思うのですが、気持ちに余裕がなくて……。かと思えば、すごく悲しい気持ちになって、何もやる気が起きない日もあります。これも更年期だからなんでしょうか? イライラしていると家族にも申し訳なくて……」

といったように、イライラするときもあれば、やる気が出ず、倦怠感が強いときもある。そしてそれらの感情がうまくコントロールしきれないことへの疲れや罪悪感はよくいただく相談です。

更年期障害でイライラが起こる原因・メカニズム

更年期に関わらず、イライラは時としてどうしようもなく沸き起こってしまう感情です。家族や職場の人など、周りにも影響を与えますが、イライラしている本人も決して好きでイライラしているのではなく、心穏やかに過ごしたいのにうまくコントロールできないものです。

そして更年期の女性がイライラしやすくなってしまうのには、理由があります。更年期世代の不調は、卵巣の機能が低下し、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減ることで引き起こされると考えられます。

女性ホルモンは、脳の視床下部からの指令を受けて、卵巣から分泌されるホルモンです。視床下部は、体内のホルモンの分泌をコントロールするだけでなく、体温調節や、精神神経活動の調整も行っています。

卵巣機能が衰えると、脳の視床下部から指令を受けてもホルモンが分泌されないことから、脳が過剰に指令を出すことで、心身の不調を起こすようになります。

ただ、更年期の症状はエストロゲンの減少だけではなく、その他の要因も関与して個人差もあるので、それぞれに応じた対応が効果的です。

そのため更年期障害のイライラに使う漢方薬は様々ですが、以下で一部をご紹介します。これらは全て市販薬としても販売されているため、薬局でも購入可能です。

更年期障害によるイライラに効く主な漢方薬・それぞれの特徴

■肝気鬱結タイプの方には「加味逍遙散(かみしょうようさん)」
情緒不安があり、少し怒りっぽく、月経前にはさらにイライラして、胸の張りや頭痛なども多く、イライラだけでなく、抑うつ症状など、不定愁訴の訴えが多い肝気鬱結タイプの方には「加味逍遙散(かみしょうようさん)」を処方します。

■肝鬱化風タイプの方には「抑肝散(よくかんさん)」
ストレスを受けると、怒りやすくイライラが強くなり、コントロールができなくなる、また、夜にはなかなか寝付けないなど、不眠や神経症が更年期症状として現れている肝鬱化風タイプの方には「抑肝散(よくかんさん)」を処方します。

■心肝血虚タイプの方には「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」
疲れているのに眠れないというときに利用されます。不眠はイライラを助長する要因にもなるので、ストレスや疲労があり、ふらつきや不眠、寝汗、また動悸や不安感などのある心肝血虚タイプの方には「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」を処方します。

高血圧や強い便秘のある方には使えません。

■気滞血瘀、心火旺、気血両虚タイプの方には「女神散(にょしんさん)」
月経前症候群(PMS)や、自律神経失調症などにおけるイライラ、めまい、のぼせ、頭痛などに対して効果を発揮する処方です。

加味逍遙散が効くタイプにも類似していますが、より上熱下寒の症状が強めで、イライラすると同時に、カーッと暑くなる方にも適しています。また、少ない症状が重く出る方が多いです。このようなタイプの方には「女神散(にょしんさん)」を処方します。

■心腎陰虚、心火上炎タイプの方には「天王補心丹(てんのうほしんたん)」
なかなか寝付けない、眠りが浅い、夢を見るなどに加えて、手足のほてりやのぼせ、寝汗、足腰がだるいなどの症状がある心腎陰虚、心火上炎タイプの方には「天王補心丹(てんのうほしんたん)」を処方します。

漢方薬の飲み方と注意点……初回は専門家に体質を弁証してもらうことが重要

漢方を開始する際は、上記のようなタイプでご自身が何に当たるのかを正確に見極めることが大切です。この体質を把握することを「弁証」と言います。まずは、漢方に専門的に取り組まれているドクターや、漢方専門薬局などの専門家に、体質を弁証してもらってから開始しましょう。

漢方薬は飲んですぐに効果が現れる場合もありますが、2週間ほど経ってから変化を感じる方も多いので、指示される日数は服用を継続してください。ただ、効果がないのに、何カ月も漫然と継続することはお勧めできません。

また「漢方薬だけ服用していればいい」というものではなく、やはり日々の生活習慣の積み重ねにより不調は出やすくなります。イライラの鬱憤を晴らすために、暴飲暴食をして胃腸に負担をかけたり、夜更かしを続けて生活のリズムを崩したりすると、漢方も効果を発揮しづらくなります。

まずはご自身の体調を労わるように、生活の基本として下記のかんたんな養生を心がけていただくことが大切です。

・食事……腹八分目を心がけ、季節の食材を取りいれましょう
・運動……週に2回程度、定期的に行いましょう
・睡眠……毎朝、すっきり起きれる程度の睡眠時間を取りましょう

漢方薬の主な副作用……病名のみでの処方には注意

「漢方は副作用が少ない」と思っている方も多いですが、実は、副作用報告は少なくありません。漢方は本来体質をベースに処方を検討しますので、体質をみることなく、病名から漢方を処方されることが原因になり得ると考えられています。

また、頻度の高いものとしては、下痢、軟便、食欲不振、浮腫などがあります。気になる症状が出た場合には、医師、薬剤師に相談しましょう。

更年期障害に悩まれている方に

漢方相談を行っていると、更年期障害でイライラが止まらないというご相談は非常に多いのですが、 「自分の性格の問題ではないか」「家族にイライラしてしまい申し訳ない」と自分を責められている方もいらっしゃいます。

更年期でイライラが起きるのは、 風邪をひいたら熱が出るといった症状と同様、年齢によるホルモンの変化により自然に起きる症状です。個人の性格や努力でどうにかできるものではありません。

ご本人にとって辛い症状であることも多いので、ご家族の方にも、今の状態は症状であるということを正しく理解してもらえるように説明しておくこともお勧めです。
(文:住吉 忍(薬剤師))

当記事はAll Aboutの提供記事です。

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