世界屈指のエイフマン・バレエ記者会見 独特な舞踊言語と心理描写「新しいロシアバレエを披露」

SPICE

2019/7/18 12:04


『ロダン ~魂を捧げた幻想』 (C)Evgeny Matveev
『ロダン ~魂を捧げた幻想』 (C)Evgeny Matveev

2019年7月17日、駐日ロシア連邦大使館で21年振りの来日を果たしたエイフマン・バレエの来日記者会見が行われた。バレエ団はすでに7月13日に滋賀県びわ湖ホールで『アンナ・カレーニナ』を、15日に静岡県グランシップで『ロダン ~魂を捧げた幻想』を上演。18日から21日まで東京公演を行う。

この日の会見はバレエ団創設者にして芸術監督のボリス・エイフマンと、「ロダン」のタイトルロールを踊るオレグ・ガブィシェフをはじめリュボーフィ・アンドレーエワ(カミーユ・クローデル役)、リリア・リシュク(ローズ・ブーレ役)の3人のダンサーが登壇し、公演への期待と自信、エイフマン・バレエの魅力を語った。

■「1990年代の日本公演がバレエ団の方向性に自信を持たせてくれた」

ボリス・エイフマン
ボリス・エイフマン

エイフマン・バレエは1977年にエイフマン自身がサンクトペテルブルクに設立。当時はレニングラード・バレエシアターという名で活動し、小説『白痴』『十二夜』を題材にした作品や、ときにはロックやポップスを使っての舞踊など、ロシアの伝統的な古典バレエをベースにエイフマン独自の現代的な振付を融合させたバレエをつくり出してきた。斬新な舞踊言語のみならず、その作品は深い物語性と心理描写がなされ、1990年代の来日時、その作風はアヴァンギャルドなものとも捉えられた。

今回の招聘元であるジャパン・アーツは1990年代にエイフマン率いるカンパニーを招聘し5回の公演を行っている。2019年、21年振りの来日を果たしたエイフマンは「1990年代、私たちの国はペレストロイカの中にあり、非常に困難な時代にあった。そうしたなかで行った日本公演は、自分たちのバレエの方向性が正しいのだという自信を与えてくれたとともに、我々バレエ団の背中を押してくれた」と振り返る。また「今回21年振りに"戻ってきた"と言われるが、戻ってきたのは私(エイフマン)だけ。バレエ団はまったく新しいものに生まれ変わっている」と語る通り、バレエ団は"日本での空白の21年"の間に「エイフマン・バレエ」と名を変え、ロシアのみならず、アメリカやヨーロッパ、アジアなど世界各地で公演を行い、その心理描写や感情表現は「心理バレエ」「哲学的バレエ」としての評価を高め、今では世界屈指のバレエ団のひとつとして成長を遂げてきたのである。

エイフマンの世界を表現するダンサー達も「今や世界的に引っ張りだこ。彼らは踊りの技術ばかりでなく、深い心理描写や演技を見せてくれる素晴らしい“俳優”でもある」と目を細めつつ、自信と信頼をのぞかせる。

■バレエの言語・魂は世界共通 必ず日本の人々の心に響く「ロダン」「アンナ」

(左から)リリア・リシュク、ボリス・エイフマン、リュボーフィ・アンドレーエワ、オレグ・ガブィシェフ
(左から)リリア・リシュク、ボリス・エイフマン、リュボーフィ・アンドレーエワ、オレグ・ガブィシェフ

エイフマンが今回満を持して選び、上演する作品『ロダン ~魂を捧げた幻想』(7月18、19日)と『アンナ・カレーニナ』(7月20、21日)はバレエ団を代表する2作品だ。ローズ・ブーレ(ロダンの内縁の妻)を演じるリシュクが「『ロダン』は単なる伝記作品ではない。2人の偉大な彫刻家と、ロダンを支えたローズとの愛憎の物語」と語るように、三者三様のそれぞれの思いが絡み合って、バレエ団ならではの「心理バレエ」を生み出している。

「私は世界各地での成功を通し、人々の言語は違えども、魂は同じであり、心は一つであると確信している。言葉や文化、宗教が違っても、“魂”は世界共通。バレエは言語を越えた表現であり、人々の心を結び付けるバレエ芸術こそが、今世界で求められているものだと思う」とエイフマン。そのうえで「エイフマン・バレエは、ロシアバレエの伝統と、革新性の双方を持っている。どちらの作品も日本のお客様の探求心を満たし、心を動かすと確信している」と熱く語った。

■ダンサーが語る『ロダン』とエイフマン・バレエへの思い

リュボーフィ・アンドレーエワ
リュボーフィ・アンドレーエワ

今回登壇した『ロダン』チームの3人も、それぞれに来日公演の思いを述べた。
初来日となるアンドレーエワは「日本のお客様が慣れ親しんだ古典バレエとは全く違う作品を受け入れられるのか不安だった。しかし静岡の公演終了後、お客様に温かく受け入れてもらえ、また泣いている方々がいるのを見て嬉しく思った」と静岡公演を振り返る。そのうえで「エイフマン氏はアーティストから力を引き出すだけでなく、観客の心を揺り動かせる人だと改めて思った」と語った。
オレグ・ガブィシェフ
オレグ・ガブィシェフ

ガブィシェフは「エイフマン・バレエのダンサーとして、“踊り”という言語で話せることを非常に誇りに思う。静岡では観客の方々が舞台に集中し、私とともにロダンの苦悩を感じていることが伝わってきた。アンドレーエワとは初演時から8年、リシュクとも長く踊ってきて、今では感情表現だけを考えて踊れるようになっている。毎回細かいニュアンスの発見があり、公演を重ねるごとに積み重ねてきている。今回は日本ならではのロダンをお見せできると思う」と挨拶。また「エイフマン・バレエのコールドバレエは単なる群舞ではない。彼らもまた一人ひとりが主役です」とも。
リリア・リシュク
リリア・リシュク

「日本文化や日本の皆さんが大好きで、来日を心待ちにしていた。バレエではローズの自己犠牲とロダンへの愛の物語をぜひ見ていただきたい」と語るのはリシュク。ワガノワ・バレエ・アカデミーを卒業して、エイフマン・バレエに入団したリシュクは「エイフマン氏を知ったとき、ついていきたい、ここで夢を見たいと思った。演劇的バレエを踊りたいと思っていた夢がかない、またバレエ団は日々自分を成長させてくれている」と語った。

■「シアターは博物館ではない」 20世紀の作品をさらに21世紀へ


エイフマンは自身の作品をしばしば改定、ときにはまるで別物にまでリニューアルすることで知られており、今回の『ロダン ~魂を捧げた幻想』は、初演時にはなかったサブタイトルが付いている。『アンナ・カレーニナ』は2010年、2012年に新国立劇場で上演されているが、その時とはまた違った改定がなされている。
「せっかく振りを覚え、役を我が物にしたダンサーには申し訳ないと思う。しかし劇場は博物館ではない。バレエ作品は生きているし、ダンサーも変わるし、私も変わる。私は20世紀につくった作品を、21世紀の時代にそぐうものして渡したい」と語る。

「戻ってきた」エイフマンと、「初来日」したエイフマン・バレエ。エイフマン不在の20余年、日本の観客も変わっている。エイフマン・バレエの「今」を、そして2019年の『ロダン』『アンナ』をしっかり心に留め、今度は数年後の再来日を期待したい。

『アンナ・カレーニナ』 (C)Souheil Michael Khoury
『アンナ・カレーニナ』 (C)Souheil Michael Khoury

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