『わた定』『あな番』の中国・ベトナム人役に日本人俳優、ハリウッドなら即炎上?

女子SPA!

2019/7/18 08:46

 先月終了したドラマ『わたし、定時に帰ります。』(TBS系列)は、アメリカ在住日本人の間でも人気のあった作品。

「日本人はやっぱり働きすぎだよね」と共感する人や、「向井理がカッコ良すぎる」と萌え死にする主婦が続出し、放映中は筆者が住んでいたアメリカの小さな街の、小さな在米日本人コミュニティでもおおいに話題になりました。

でも絶賛する声と同時に耳にしたのが、「中国人店主を演じている役者さん、日本人だよね。あれ微妙じゃない?」という意見でした。

◆キャスティングで難航の『アラジン』、似た肌の色でも批判噴出?

『わたし、定時に帰ります。』の中華料理店店主や、『あなたの番です』(日本テレビ系列)の中国人留学生・ベトナム人青年を演じているのは、いずれも日本人ですよね。

在留外国人の数が年々増えていることを考えれば、現代の日本の日常を描くドラマや映画に外国人キャラクターが登場するのは自然なこと。しかしその一方で国外から見ると、いまだに中国人やベトナム人などの外国人役を、日本人俳優が片言の日本語で「外国人っぽく」演じていることに違和感を持ってしまうのです。

近年アメリカでは「ホワイトウォッシュ」にとても敏感です。これは、米国でマイノリティとされる黒人やアジア人、ヒスパニック系など、白人以外の役柄を白人の俳優が演じることを指す言葉。

オードリー・ヘップバーン主演の名作『ティファニーで朝食を』に登場した日本人を白人俳優が演じるなど、古くからハリウッドではひんぱんに行われてきたことでしたが、近年、そうした白人中心的な考え方が「差別につながる」という批判が高まってきました。

日本人役(草薙素子)をスカーレット・ヨハンソンが演じて大炎上した『ゴースト・イン・ザ・シェル』のように配役一つで総スカンを食らい、興行的に大コケしてしまった事例もあります。

そのため昨今は、原作に忠実なバックグラウンドを持つ役者をキャスティングするよう心がけるスタジオが増え、インド人役にはインド系の役者(『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』のイルファン・カーン)を、コロンビア人にはコロンビア人(『モダン・ファミリー』のソフィア・ベルガラ)をといった具合に変わってきました。

大ヒット中の実写版『アラジン』はホワイトウォッシュ批判を気にするあまり、キャスティングが難航したことで有名な作品。世界各国から候補者を厳選し、ランプの魔神ジーニーを演じるウイル・スミス以外の主要キャストは、中東、中央、東アジアの役者で揃えました。

ところが『インディペンデント Independent』によると、ヒロインのジャスミン役に決まったインド系のナオミ・スコットに対し、「インド系はアラブ系とは違う」と批判する声が噴出したとか。

ハリウッド作品に対する世間の目は厳しく、たとえ肌の色が似通ったキャスティングをしても、「私たちの文化(人種)はそんなんじゃない」と不満を持つ人はある程度は出てきてしまうのです。最近では、キャスティングが窮屈になりすぎて、「演技者はどんな役柄でも演じられるべき。芸術はポリティカル・コレクトネスに動じるべきではない」とスカーレット・ヨハンソンが疑問を呈したことも。

◆人種間の歴史の問題、多数派が少数派を真似するのはアウト?

では同じアジア人の中国人を、日本人が演じることについてはどうでしょうか?

ハリウッド映画やアメリカ製のドラマをよく観ている周囲の在米日本人に、『わたし、定時に帰ります。』の中国人や、『あなたの番です』の中国人・ベトナム人の扱いについて聞いてみると、こんな答えが返ってきました。

「長年アメリカでマイノリティとして生きてきて、日本人訛(なま)りの英語を理解してもらえなかったり、笑われたりして傷ついてきた私自身のコンプレックスの問題かもしれませんが、あの配役では笑えませんでした」(在米日本人・女性・45歳)

「『わた定』の女優さん、演技が上手いですよね。喋り方が父の再婚相手の中国人にそっくりで、最初は本物の中国の方だと信じていました。ただ、お金に細かいステレオタイプな中国人として描かれている点は残念だな、と。あれを日本人が演じていたとなると、差別的だと受け取る中国人もいるんじゃないでしょうか」(在米日本人・女性・35歳)

「アメリカの『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』というコメディドラマにインド訛(なま)りの英語で喋るキャラクターが出てくるんですが、ちゃんとインド出身の俳優が演じていました。白人がインド訛りのインド人を演じるなんて想像もできませんが、もしそんな演出だったら笑えなかったと思います」(在米日本人・男性・39歳)

要するに、この問題はその地域における人種間の歴史によるところが大きいと思うのです。

昔からアメリカで差別的な扱いを受けてきた黒人などを白人がそれっぽく演じると、たちまち炎上してしまいます。が、その逆はさほど炎上せず、一般的に同等の扱いを受けている白人同士、例えばフランスなまりのアメリカ英語をアメリカ人が演じて笑いにしてもあまり問題視されません。つまり、多数派が少数派をイジると差別と受け取られるのです。

ひるがえって、日本における中国人は、昔から「中国人、嘘つかない」や「~あるよ」といったお決まりのフレーズを使ってコントのネタとされてきました。その歴史も手伝って、フラットな気持ちで見られない人が多いのかもしれません(海外で日本人が「メガネでチビで出っ歯」に描かれてきたのと同様ですね)。

実際に日本語も中国語も話せる在日華僑の女性(51歳)に聞いてみると、「日本での中国人描写にはもう慣れっこですが、多様化が進んでいるこの時代にあまりにも典型的な描き方をされているのを見ると、バカにされているようであまりいい気分はしません」とその微妙な心境を語ってくれました。

もしも逆の立場だったら? 中国が舞台の華流ドラマに登場する日本人を、中国人俳優が片言で演じて笑われていたら? なんとなく心がざわざわしませんか?

在留外国人が増えて人種がさらに多様化する日本で、ドラマ・映画での外国人役はその国の人をキャスティングする時代がきたのかもしれませんね(ハリウッドほど各国俳優がそろってないのが難点ですが…)。

Source:「Independent」

<文/橘エコ>

【橘エコ】

アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。

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