文在寅政権こそが日韓産業界の”共通の敵”? 半導体材料輸出規制の背景を読み解く

AbemaTIMES

2019/7/14 12:41



 韓国に対する半導体材料の輸出規制開始後、初めての日韓事務レベル協議が行われ、規制の撤回を求める韓国側の代表と経産省との間での議論は5時間以上に及んだ。

日本側が問題視しているのは、韓国の輸出管理体制だ。世耕経済産業大臣が「(日本を含めた各国は)軍用品への転用が可能な機微技術などの輸出について実効性ある管理を行うことが求められている」と指摘したように、軍事転用可能な戦略物資がロシアなど第三国に不正輸出されたことが発覚しており、その数は150件以上に上っているとみられる。中には日本が輸出を規制しているフッ化水素が密輸された事案もあったといい、一部の物資が北朝鮮に渡った可能性を報じる韓国メディアもある。5日には小野寺前防衛相がテレビ番組で「工業製品に使うのは7割くらいで、残りを何に使うのか韓国は返答しなかった」と指摘している。


 これに対し、韓国の産業通商資源省は11日、「軍事転用が可能な戦略物資の"密輸出"を4年間で156件摘発した」と反論。北朝鮮へのフッ化水素横流しの可能性についても「いかなる証拠も発見できない」と否定している。さらにWTO(世界貿易機関)の理事会では「日本の輸出規制は不当な報復措置だ」と主張、康京和外相はアメリカのポンペオ国務長官との電話会談で「アメリカの企業などにも悪影響を与えかねない」と懸念を伝えている。

今回の輸出規制措置について、早稲田大学教授の長内厚氏は「正直にいうと、あまり大した問題ではないのではないか」と話す。


 「日本政府が言っている通り、今まで特別に認めていたことをやめました、というだけの話だ。水道の蛇口に例えると、開けっ放しだったところに手をかけたという状態であって、閉めたわけでも、今後すぐに閉めるということもないと思う。だから文大統領の言う"前例なき非常事態"という表現も大げさだというのが率直な感想だ。また、"これからは日本に頼らずに内製する"と文大統領は言っているが、もはや両国どちらか一方だけでものづくりをすることはできない。確かに韓国は日本への依存度が高い一方、中国や台湾にも優遇措置なしで輸出しているので、"韓国でなくても"という思いが日本にはあるが、メーカーの人たちも基本的には対立していないし、一見ライバルに見えていても、共通の部材の値段が上がればお互いに困る。むしろ日韓の間では利害が一致している部分があって、とにかく手を組んでやっていかないとダメだよね、というのが産業界の共通理解だ。個人的な意見だが、来年の総選挙に向けた韓国国内のパフォーマンスではないかという気がしている。だから日本と韓国の産業界、韓国の野党、前保守政権の共通の敵は文政権なのかもしれない」。


 経産省の幹部は会合に先立って、今後の輸出規制について「もっとインパクトがあるものがある」と問題の長期化を示唆している。

元経産官僚の宇佐美典也氏は「韓国政府の方々が来日した目的は、日本の意図や、制度的にどこが問題になっているのかを確認しに来たということだろう。激しいやり取りがあったということではないと思う。また、北朝鮮との関係については、韓国政府の言う通りだと思う。北朝鮮に半導体の工場があるというなら話は別だが、普通のフッ化水素を使えば軍事用途は満たせるので、高純度のフッ化水素を送る理由がない」との見方を示した上で、「一般の方々にとっては突然このような状況になったように見えるかもしれないが、実は規制の見直しは今年に入ってからずっと行われていて、外国企業が日本の半導体企業に投資する時には経産省の許可が必要になるというような改正も行われた。また、"さらに手を打つ"ということも予告されていた。背景にあるのは、"製造2025"という中国の政策にきちんと対応しなければならないという、アメリカも含めた考え方だ。ただ、今回の措置はアメリカと合意してやったというよりも、ある意味でそれをうまく利用してやったということだ。長内さんの言う通り、経済界が"協力した方がいい"と考えているのは間違いない。今回の措置のポイントは、韓国企業に対する直接的なペナルティではなく、韓国政府に対するペナルティだということだ。これからも輸出許可は出すだろうし、日本政府と韓国企業の直接の関係が作られていくという転換点になると思う。サムスンのトップが文大統領との会合よりも日本に来ることを優先したのは、その象徴だ」と指摘した。


 韓国ギャラップによる最新の調査結果では、「日本に好感を持っている」と答えた韓国人は12%で過去最低、「日本に好感を持っていない」韓国人が77%に上っている。また、韓国の世論調査会社「リアルメーター」のアンケートでは、行った結果、「日本製品の不買運動に参加する」と回答した人が66.8%に上った。

実際に日本製品の不買運動は始まっており、一部の小売業者が日本製の食料品を店頭から撤去しているほか、ソウル市民からは「日本の規制は不当だと思うので私も運動に参加する」との声も聞かれるが、「運動自体は理解できるがそれが根本的な解決になるかは疑問だ」と話した人もいた。

長内氏は「韓国では反日が選挙の票になってしまうし、どうしても感情の問題になってしまうところがあるが、不買運動の中心にいる団体の前会長は極めて文政権に近い人。表向き反日の姿勢を取らざるを得ないという雰囲気もあるため、個人がどこまで本心から反日なのか、ということがある。実は今回の問題を最も冷静に受け止めていたのが韓国メディアだと思う。慰安婦問題や徴用工問題を踏まえた日本への報復なのではないかという前提で話を聞いてきたアメリカのメディアに対し、"これは日韓の間の経済連携にとってマイナスしかない。どう解決していこうか"というスタンスで答える記者が多かった」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶放送済み『AbemaPrime』は期間限定で無料配信中

当記事はAbemaTIMESの提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

もっとよむ

注目ニュース

もっとよむ

あなたにおすすめ