日本でも続々誕生する宇宙ベンチャー 世界トップクラスの技術もある一方、課題は資金面?

AbemaTIMES

2019/7/13 10:00



 人類が初めて月面着陸に成功してから今月で50年。アメリカではAmazonの創業者・ベゾス氏が全長30km、直径3~6kmで数百万人が住めるという「宇宙コロニー」構想を計画。また、宇宙旅行会社「ヴァージン・ギャラクティック」が上場、およそ8億ドル(約870億円)を調達し、商用サービスの開始に向けて事業を進めている。

日本でも堀江貴文氏が出資する宇宙ベンチャー・インターステラテクノロジズが国内初の民間ロケットの打ち上げに成功、今週土曜日には次のロケットの打ち上げ準備を進めるなど、宇宙ビジネスが盛んになっている。


 火星や月などでの宇宙探索や資源開発に取り組むispace、小型衛星開発や画像販売のアクセルスペースやキヤノン電子、デブリ除去のアストロスケール、宇宙旅行のPDエアロスペースが存在、地上でも衛星通信の分野でインフォステラ、測位サービスにグローバル測位サービス株式会社、人口流れ星を制作するALEなど、宇宙ベンチャーが続々と登場している。

10日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、そんな日本の宇宙ビジネスの最前線を取材した。

■数センチ単位のGPS測位や、"人工流れ星"の挑戦も



 宇宙ビジネスの基盤はロケットや衛星の製造・打ち上げだ。その市場は国内だけで3000億円と言われているが、かつてはそのほとんどが政府管轄の事業だった。しかし世界的にも注目を集める宇宙ビジネスへの期待から、2008年に宇宙基本法、2016年には宇宙活動法を制定し、民間による宇宙開発を後押し。こうした流れから国内の衛星製作も活発化、町工場にもビジネスチャンスが舞い込んだ。

その一つ、神奈川県茅ケ崎市にある「由紀精密」は、宇宙ベンチャー「アクセルスペース」のフレーム製造を担当している。大坪正人代表は「世界的に小型衛星ブームになっていて、急速にビジネスチャンスが広がっている。ちょっと前までは医療機器が売り上げで一番のシェアだったが、今は宇宙関連部品が最も大きい」と話す。

同社では、60年にわたって培ってきたノウハウを生かし、2012年頃に本格的に宇宙関連事業に進出。打ち上げに耐えられる強さ、軽さ、さらに厳しい精度も要求されるため、加工には熟練の技術が必要だ。そうしてできた小さな部品は30cmの超小型衛星に使われ、実際に宇宙空間を飛んでいる。そうした実績が認められ、一昨年には当時皇太子だった天皇陛下もご訪問された。


 衛星を用いて正確な位置情報を提供するグローバル測位サービスでは、スマホやカーナビなどに欠かせないGPSからのデータを補正し、数センチ単位での測位に挑戦している。数センチ単位での測位に挑戦している。

五百竹義勝同社取締役は「世界中で100機くらいの測位衛星があり、その情報を補正してやることでセンチメートル級の測位をしようという技術で、一番大きなところは自動車の自動運転への利用だ」と説明する。自動運転は農機具などさまざまな分野でも活躍が期待されているが、走行車の位置や障害物との距離に少しでもずれがあると大事故につながるため、より細かく、正確な測位が必要となるからだ。


 生活の分野だけではなく、エンタメ界にも進出している。夜空を舞うロマンチックな流れ星を人の手でつくろう、そんなサービスを考えたのがALEだ。宇宙のちりが地球の空気の層にぶつかり起こる発光現象である流れ星を人工的に作り出すシステムを開発、1月には"人工流れ星"を放出する機械を乗せた衛星の打ち上げにも成功している。来年5月には世界初の実証実験を行う予定で、広島県や瀬戸内海を中心とする直径200km圏内で見ることができる見込みだ。

同社セールスマーケティングの北村氏は「自然の流れ星は0.5秒~1秒弱であっという間に消えるが、人工流れ星は3秒~10秒くらいの長さ。ゆっくりと楽しめる。それを見た子どもたちや、我々の活動を知った子どもたちが宇宙と科学に興味をもっていただけたら、宇宙ビジネスや科学研究の担い手が増えていき、さらに活性化すると思う」と実験成功に期待を寄せる。

■日本の宇宙産業の課題は、やはり"お金"?



 世界における宇宙産業の規模はおよそ30兆円規模となっている。一方で日本の産業規模は、ロケットや衛星などの宇宙インフラ産業は3000億円、通信、放送サービスは8000億円、GPSなどの宇宙関連民生機器は3兆~4兆円、測量、衛星データなどの宇宙利用産業は未知数となっている。

また、日本勢の宇宙進出について、ベイカレント・コンサルティングが発表した宇宙ロードマップ(2018年)によれば、来年には宇宙への有人輸送サービスが始まる見通しで、2025年には惑星への着陸回数が増加、電気や水などのライフラインの導入、2030年には短期滞在、2035年には定期便化による移住環境の発展、そして、2040年には人類の存続可能な環境が整うと予想している。

日本総合研究所の齊田興哉氏は「戦後の積み重ねもあるので仕方ないが、アメリカの宇宙関連の国家予算は5兆円クラス。それに対して日本の市場規模は基本的に国家予算が充当されている宇宙インフラ産業で3000億円、通信・放送サービスも含めると1.1兆円クラスが日本の市場規模だと言われている。つまり、世界の市場規模の30兆円のうち、1兆円分が日本のシェアだ」と話す。


 「国直轄の事業だと宇宙ロケット、人工衛星は宇宙用の部品を使わなくてはいけないが、これが非常に高額なものになる。一方、堀江さんがやっているインターステラのロケットなどは基本的に民生部品を活用し、頑張ってコストを削減しようとしている。今は民生部品をどの部分にどう使えばいいかという試行錯誤の部分。そこでコストが格安になれば、航空機のような感じで宇宙旅行にも行けるようになるかもしれない。日本でもispaceさんが月面移住や生活圏・経済圏を構築することを目指し、資金調達して頑張られている。アクセルスペースさんも打ち上げを実施している」。

その上で、宇宙旅行の実現可能性については「コスト面など、まだまだ課題は多い。例えば日本のH-ⅡAなどのロケット1機の打ち上げに100億程度かかるので、ヴァージン・ギャラクティック社が調達した約800億では8回分。基本的にはつらいと思う。それでも要素技術としては整いつつあるので、あとはどうやってコストを下げていくか、それをどうやって実現していくかがクリアできれば、ロードマップのようなスピード感が出て、2040年ごろの惑星移住も現実味を帯びてくる。資金面の問題を除けば、決して夢ではないと思う」と話した。


 SpaceBD代表取締役の永崎将利氏も「日本は純粋に科学技術というところでやってきたが、衛星の開発はもともと偵察衛星から技術の革新が進んできた。また、アメリカは国費で作ったものをどんどん民間に、いわば気前よく使わせ、ベンチャーが立ち上がるとどんどん発注をかけ、育てていく文化があった。これも投入できる額が大きいからできることだろうが、日本の場合、同じようなアクションを起こしてもしょうがないところがある。官というのは当然のことながら税金から出てくる国費を使うので、失敗ができない。一方、民であれば失敗ができる。お金さえ潤沢にあれば何度もトライしてコストを下げ、改善することが可能になってくる。官から民へという大きな流れがあるので、過去の20年とこれからの20年のスピード感は違うと思う。はやぶさや、ロケットのような技術は世界の先頭に立てるレベルだ。これだけ成功率が高く、遅れない日本のロケットは世界一だと思う」と指摘。

「我々は日本で初めての"宇宙商社"を目指しているが、これはものづくりや技術革新に挑むというよりも、事業開発をやっていこうということだ。技術革新に特化したいという人たちの"手間"を引き取ったり、出てきたものをマーケットとつないで技術を売り循環させたりする、これが大きなコンセプトだ。たとえば超小型衛星を宇宙空間に持っていきたい人にロケットの空き枠を探してきて、そことマッチングさせたり、必要な技術の支援をしたりする。JAXAによる民間開放の第1弾事業で我々が選定事業者になっているし、私自身も宇宙に行きたいので、人工衛星のハードルをどんどん下げ、より効率的に安く届けるようにしたい」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶放送済み『AbemaPrime』は期間限定で無料配信中の

当記事はAbemaTIMESの提供記事です。

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