ストレスによる暴飲暴食を防ぐ方法を精神科医が解説


仕事が多忙なあまり、たまったストレスやイライラを発散しようとつい食べすぎ・飲みすぎをしてしまった経験を持つビジネスパーソンは多いはず。ストレス発散方法は人によってそれぞれだが、その手段が飲み食いになってしまった場合、身体面にも金銭面にも健全的ではないことは明らかだ。

では、暴飲暴食がストレス発散の手段になっている人は、どのようにしてその「呪縛」から逃れればよいのだろうか。精神保健指定医の髙木希奈医師にうかがった。

○ストレスを感じやすい人と感じにくい人の違い

髙木医師によると、そもそも人にはストレスを感じやすい人と感じにくい人がいるという。ストレス耐性になぜ個人差が生じるのかというと、人格は「もともとの性格傾向(遺伝的要因)」と「養育環境、生活環境(後天的要因)」によって形成されるため。ポジティブシンキングの人とマイナス思考の人とでは、物事の捉え方が違ってくるそうだ。

以下のような人はストレスを感じやすいという。

・何でもネガティブに考えてしまう
・物事を悲観的・被害的に捉えてしまう
・マイナス思考
・自分に自信がない
・自己否定感が強い
・真面目で融通が利かない完璧主義者
・過剰適応の人
・自分の気持ちや感情、思っていることをなかなか人に言えず自己主張ができない
・自分の感情を抑えたまま、何でも周囲の環境や人に合わせてしまったり、他人の意見に流されやすい
・頼まれたら断れない
・他人に気を遣いすぎる
・人の目を気にしすぎる
・プライドが高い

こうした人はストレス対処能力が低く、何かしらのストレス要因が発生した際、臨機応変に対応できない。うまくストレス発散や対処ができないと、身体の不調につながる可能性が高い。

「心と体は密接に関係しています。身体的な疲労によって気持ち的にも余裕がなくなり、ささいなことで過剰に反応したりイライラしたりと、ストレスを感じやすくなります。生活リズムの乱れや疲労、睡眠不足によって自律神経やホルモンバランスが乱れると、心身ともに不調をきたします。また、食事も大きく関係しており、食生活が乱れていたり、偏っていたりすると、身体機能の不調やホルモンバランスの乱れから、ストレスを感じやすくなります」
○ストレスによる心身への影響

ストレスが原因で心身に現れる諸症状は以下の通り。

心理的なもの……抑うつ気分、不安感、焦燥感、意欲低下、情動不安定、イライラ、怒りっぽくなる、神経過敏、集中力低下など

身体症状……不眠、過眠、悪夢、食欲低下、過食、倦怠感、易疲労感、動悸、頭痛、腹痛、胃痛、胸焼け、肩こり、めまい、発汗、下痢、便秘など

これらはあくまでも一例で、このほかにもさまざまな症状が出てくるとのこと。
○ストレスと食欲の関係性

ストレス耐性には個人差があり、ストレスが私たちの心と身体にどのような影響を及ぼすかがわかった。では、そのストレスがたまると暴飲暴食をしたくなる衝動に駆られるのはなぜなのか。高木医師は、この行動にはさまざまなホルモンバランスが関係していると指摘する。

「胃から分泌されるグレリンというホルモンは摂食を亢進させる働きがあり、空腹になると分泌されます。一方、食事をすると、脂肪細胞から分泌されるレプチンというホルモンが食欲抑制、エネルギー消費の促進に働きます。それ以外にも、視床下部の食欲中枢において、オレキシンなどの多数の神経ペプチドや、腸などの末梢組織で分泌される食欲調整物質が複雑に相互作用して食欲を調節しています」

だが、睡眠不足に陥るとグレリンが増加してレプチンが減少する。増進した食欲に歯止めをかける存在が少なくなるうえ、常に食べ続けるとレプチンの働きが鈍ってしまい、結果としてますます過食になってしまう。

さらにストレスがたまると、それに対抗しようとして、コルチゾールという抗ストレスホルモンが分泌されまる。コルチゾールには、糖や脂質を体に蓄える働きがある。すなわち、

過労などで睡眠不足になるとグレリンが増加→グレリン増加と並行して食欲を抑制するレプチンが減少→暴飲暴食をしやすくなる→過労でたまったストレスがコルチゾールを分泌するため、過食で体重増加が進みやすくなる

髙木医師によると、ストレスを強く感じているときには、暴飲暴食以外にも引きこもり、過活動、遅刻、欠席、欠勤、喧嘩、無謀運転、浪費、過度の飲酒や薬物乱用、ギャンブル、破壊行為、犯罪といった問題行動を起こしてしまう可能性があるという。
○ストレスへの良い対処法

ストレスへの良い対処法は、まず休息や休養。過労が明らかに原因の場合、上司や産業医に相談するなどして仕事量をセーブするという選択肢もアリだろう。職場の人間がストレッサーの場合は、可能な限りその人と距離を置くようにしてみよう。とにかく、ストレス要因からちょっと離れて、何もせずにゆっくり休む時間を作ることが重要だ。

そのほか、以下のような行動もストレス対策として効果的だという。

・規則正しい生活リズムで生活する
・ぬるめのお風呂にゆっくりつかる(好きな香りの入浴剤を入れたり、リラックス効果のあるアロマオイルを垂らしたりするのもお勧め)
・バランスの良い食事をする
・ウォーキングや散歩などの軽い運動をする
・マッサージや整体などに行く
・自分の好きなことや趣味を見つける
・掃除をする
・愚痴や悩み相談をする(ストレス内容を人に話す)
・ストレス要因となっている出来事を改善できるように環境調整を行う

そのほか、自分でストレスの低減に努めることも大事な要素となってくる。「ストレス対処法を学んで適応力を高める」「『ほどほどに』と気持ちの面で余裕を持つ」「オン・オフの切り替えをうまくできるようにする」「嫌なことがあっても、いつまでも引きずらず、次にどうすべきかを考える」などを心がけるとよいと高木医師は話す。

ストレスに伴う過度の飲食を止めたいと考えている人は、まずはそのストレスを取り除いたり、低減したりできるよう努めてみる。たまったストレスは、軽い運動や新たな趣味探しなど、暴飲暴食以外の手法で発散できるようにトライしてみるといいだろう。

「それでもストレスがたまり、うつ症状がひどくなるといったように日常生活や仕事に支障が出てきてしまう状態が2週間~1カ月以上続くようであれば、精神科への受診が必要です。症状がひどいようであれば、必ず専門の医療機関にご相談くださいね」

※写真と本文は関係ありません

○取材協力: 髙木希奈(タカギ・キナ)

精神保健指定医、精神科専門医・指導医、日本医師会認定産業医。長野県出身。聖マリアンナ医科大学卒業。精神科病院及び産業医として企業に勤務。
美容医療の施術クーポンとコスメを扱う通販サイト「キレナビ」を運営するメディアド代表。一般社団法人 予防医療研究協会の理事等を務める。著書に『あなたの周りの身近な狂気』(セブン&アイ出版)など。趣味は海外旅行とスキューバダイビング。オフィシャルブログはこちら。

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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