ウイスキーの聖地を巡るなら大きめのトランクを空にして行くべき理由

日刊SPA!

2019/7/12 15:54

― 30代が知らないと恥ずかしい! 今さら聞けないお酒のキホン第55回 ―

スコットランドのアイラ島では、泥炭(ピート)で香り付けしたスモーキーなウイスキーが作られており、世界中のファンが愛飲しています。筆者も、普段もっとも飲んでいるのがこのアイラウイスキーです。長年夢だったそのアイラ島に2泊3日で突撃し、すべての蒸留所を見学してきました。今回は、2~3日目の様子を紹介します。

◆まずは1983年に閉鎖されたポートエレン蒸留所へ

アイラ島ではBnB(ベッド&ブレックファスト)に宿泊しました。施設の評判が左右されてしまうだけあり、朝食は力が入っていました。自由に楽しめるフルーツやチーズ類のほか、プレートも料金内で楽しめます。当然、地のモノを楽しみたいので、トラディショナルプレートを頼みました。残念ながらハギスはなかったのですが、ブラックプディングはありました。豚の血と脂身、スパイスなどを使ったソーセージのようなものです。ドキドキしながら食べたのですが、臭みなどはなくとても美味しかったです。イギリス料理はまずいといったイメージとはほど遠く、どこからその風評が出たのか不思議に思いました。

朝食後はすぐに出発。1日かけて6か所の蒸留所を巡らなければなりません。まずは、ポートエレン蒸留所へ。とはいえ、ここは1983年に閉鎖されています。それまでに作られていたボトルがわずかに市場に出回っていますが、筆者は見かけたら飲むようにしています。ショットで1万~2万円くらいしてしまいますが、ボトルが高価なので仕方のないところです。先日モエヘネシーディアジオから「ポートエレン 39年」がリリースされましたが、価格は54万8000円(税抜)でした。それほどのウイスキーだったのです。

当然施設の中には入れなかったのですが、ウェアハウスに描かれたロゴを目の当たりにできて感動です。キルン塔も見ることができました。ポートエレン蒸留所は復活することが決まっています。もう少しすると同じ場所に建造が始まりますが、キルン塔などは文化財として残されるようです。

驚いたのがウェアハウス内に大量の樽が眠っていたことです。ポートエレンの在庫がまだあるのか、と目が輝きましたが、どうも他の蒸留所にスペース貸ししているだけのようでした。

来年稼働すれば2025年くらいにはファーストリリースされるでしょうか。とても楽しみです。

◆ラフロイグはシングルモルトウイスキー初の英国王室御用達

クルマで移動中、白い荷物置き場のようなものが何か所かあったので何か聞いたところ、ピートの切り出し場とのことでした。近寄ってみると、ピートをスコップで直方体に切り出し、乾かしているところでした。ビニールシートは雨よけとのことです。ただしこれは家庭で使う暖房用で、ウイスキーに使うピートは重機で掘り出しているそうです。

生のピートは草入りの泥のようで、微妙に柔らかかったです。もちろん、火を付けなければ燻製香もしません。ピートはその土地の所有者のものとのことで、ここでは持って帰ることはできませんでした。

稼働中の蒸留所で一番南にあるのがラフロイグ蒸留所です。1815年に設立され、2015年には200周年を迎えています。チャールズ皇太子は、自身の誕生日のお祝いとしても訪れるほど好きな銘柄で、1994年にはシングルモルトウイスキーで初めての英国王室御用達許可証を下賜されました。

原材料の大麦は、85%をポートエレンから買い付けていますが、残り15%はラフロイグ蒸留所で製麦しています。珍しく、フロアモルティングという手法で発芽を促し、キルン塔の乾燥室で発芽を止めます。このおかげで、ピートの効き具合を表すフェノール値は40~45ppmなのですが、遙かにインパクトのあるピート感が出ているのです。

ここでは、アイラフェスティバル限定ボトル「ラフロイグ カーディス2019トリプルウッド オリジナルカスクストレングス」を購入しました。

◆ラガヴーリン蒸留所ではツアー参加がオススメ

続いて、お隣のラガヴーリン蒸留所にやってきました。こちらにも、ガイドのクリスティーンさんがツアーを申し込んでくれました。35ポンドの「Warehouse demonstration」です。これは樽の貯蔵庫で、実際にラガヴーリンを試飲するというものです。

これが、一種のショーのようになっており、20人ほどの参加者を巻き込みながら全員で盛り上がりながら楽しめます。なぜか筆者はトップバッターで全員の前に引き出され、試飲用のウイスキーを吸い上げる大役を任されました。

2019年のフェスティバルボトルを始め、7年熟成、9年熟成、21年熟成、22年熟成と5種類ものラガヴーリンを楽しめます。筆者はいいのですが、ペースも速いので、普通の人だと酔ってしまうこともあるでしょう。そんな時は、持ち帰り用の小瓶をもらい、ウイスキーを入れることも可能です。ただし、1人1個くらいしかくれないので、不安なら持参するのもありだと思います。余ったウイスキーは地面に捨てられてしまうので、とてももったいないです。

ラガヴーリンのオフィシャルボトルは8年もしくは16年なので、21年や22年を楽しめるのはとても貴重な機会です。当然、超絶美味でした。とにかく、倉庫番のイアン・マッカーサーさんのキャラクターが強烈で、ラガヴーリン蒸留所に行ったらぜひこのツアーに参加することをオススメします。時間に余裕があるなら、蒸留所内の設備を見学する8ポンドの「Lagavulin Distillery Tour」にもチャレンジしましょう。

◆世界的に有名なアードベッグは意外にも小さな蒸留所

筆者が愛飲するアードベッグ蒸留所では、ランチとツアーの両方を楽しみました。アードベッグは1815年に設立され、200年以上の歴史を持ちます。しかし、所有者を何度も変えており、直近では1997年にグレンモーレンジが買収しています。そのグレンモーレンジも現在ではLVMH傘下になっています。

アードベッグは世界的に有名で、どのバーにも置いてあることが多いことから巨大蒸留所と思っている人が多いのですが、実はとても小さい蒸留所です。ポットスチルも最小の2基しかありません。とはいえ、需要の増大から、ポットスチルと発酵槽を倍増させる計画が進行中とのことです。

ツアー中、発酵槽で発酵したビールのような液体を飲ませてくれました。レア体験で面白かったのですが、飲み過ぎると腹を下すと後で言うのには痺れました

ツアーの最後には、狭い地下倉庫のような部屋に参加者全員で入って試飲を行います。通常販売品のみですが、雰囲気たっぷりで楽しかったです。

アードベッグ蒸留所ではぜひランチも楽しんでください。パニーニとクラムチャウダーどちらも絶品です。量が多いので男性でもハーフでいいかもしれません。

◆キルホーマン、ブリックラディを経て最後はアイラ島最古の蒸留所へ

南の蒸留所の次は大きく北西に向かいますが、その途中にラガン川を渡りました。ラガン川はボウモア蒸留所で仕込み水として使われている川でもあります。これがまた、ウイスキーが流れているのかと思うくらい茶色いのです。汚れているのではなく、ピート層を水が通過して色づいているのです。岸辺に降りて飲んでみたかったのですが、時間もないため撮影のみ。

北西には2つの蒸留所があります。その片方が、キルホーマン蒸留所。2005年に設立された新興蒸留所です。124年ぶりに誕生した蒸留所となります。しかも、唯一海岸沿いではなく、内地に建造されました。

ウイスキーになる前のニュースピリッツから、発売されたボトルはすべて飲みましたが、後発だけあり、ずるいぐらい美味しく仕上がっています。ちょっとお高めでコスパは微妙ですが、力強くピーティで癖になること請け合いです。

ここにもカフェが併設されており、たくさんの人がいました。ギフトショップも大きいのですが、フェスティバルボトルはありませんでした。がっかりしていると、クリスティーンさんが何かスタッフに話しかけています。すると、その後、スタッフが奥に残っていたフェスティバルボトルを持ってきてくれました。もちろん、即買いです。しかも、近くにいたゼネラルマネージャーにサインするように頼んでくれました。とても嬉しいのですが、開封しづらくなってしまいました。

続けて、近くにあるブリックラディ蒸留所に伺いました。ノンピートの「ブリックラディ」とピートを効かせた「オクトモア」や「ポートシャーロット」を生産している蒸留所です。また「ザ・ボタニスト・ジン」も製造していることでも有名です。

ビジターセンターでは、誰でも購入できるハンドフィルボトルが2つ用意されていました。ヘビーリーピーテッドのポートシャーロット2007と、ブリックラディ2005です。ここのハンドフィルのラベルには、従業員の顔と名前が印刷されています。今回は、44人目のGeraldine Le Garrecさんでした。バーボン樽のファーストフィルで13年熟成です。従業員が誇りを持ち、モチベーションアップにもつながるもので、素晴らしい取り組みだと感じました。

ギフトショップも広く、ボトル以外にも大量のお土産を購入しました。

2日目最後はボウモア蒸留所です。1779年に創業したアイラ島最古の蒸留所です。ちなみに、スコットランド最古の蒸留所は1775年創業のグレンタレット蒸留所です。

◆女王エリザベス2世もお気に入りのボウモア

ボウモアはピートの試掘やモルトのフロアモルティングを今でも行っており、歴史を継承するアイラウイスキーの代表格です。そのため、「アイラモルトの女王」と呼ばれることもあります。また、女王のエリザベス2世のお気に入りでもあり、1980年に蒸留所を訪問したり、2014年に就航した新空母「クイーン・エリザベス」にボウモアのボトルを船体にぶつけて割っています。

味わいは、ソルティで華やかで、もちろんピーティです。現在はサントリーの傘下となっており、蒸留所は規模が大きく、システマティックでした。ちょっと味気ないと感じることもありましたが、たくさんの参加者に体験してもらうための仕組みなのでしょう。とはいえ、大規模なウイスキー蒸留所の設備は圧巻でした。

この日のディナーはボウモアホテルのレストラン、2次会は同じくボウモアホテルのバーにしました。こんなことなら、最初からボウモアホテルに泊まればよかったです。

◆アイラ島巡りに大きめのトランクを持って行くべき理由とは?

アイラ島2泊3日の蒸留所巡り、最高でした。準備不足すぎて、お金をすべてドブに流すところでしたが、奇跡的な出会いにより思い出に残る旅になりました。もし、アイラウイスキーが好きなら、ぜひ行くことをオススメします。20年以上も行く行くと言って行かなかった筆者が言っても説得力がないかもしれませんが、現地は本当に感動しました。

最後にもう2つだけアドバイス。まずは、トランクはできるだけ大きいものをチョイスして、ほとんど空の状態で行くこと。筆者はお土産を想定して半分空けて行ったのですが、それでももう1つ大きなトランクを現地で買う羽目になりました。そして、日程が許すのであれば、もう少し時間に余裕を持つことをオススメします。2泊3日は本当に強行軍です。3泊4日、もしくはツアーを入れまくって4泊5日でちょうど良いかも知れません。来年も行こうと計画中で、その時はもちろん3~4泊するつもりです。

【柳谷智宣】

お酒を毎晩飲むため、20年前にIT・ビジネスライターとしてデビュー。酒好きが高じて、2011年に原価BARをオープン。2年前に海底熟成ウイスキーを扱う「トゥールビヨン」を立ち上げ、現在販売中

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

もっとよむ

注目ニュース

もっとよむ

あなたにおすすめ