アベノミクスの「成果」を示すデータ集(モノシリンの3分でまとめるモノシリ話)

ガジェット通信

2019/7/12 13:00



今回はモノシリンさんのブログ『モノシリンの3分でまとめるモノシリ話』からご寄稿いただきました。

アベノミクスの「成果」を示すデータ集(モノシリンの3分でまとめるモノシリ話)



さて,選挙も近づいてきたということで,アベノミクスの成果を示すデータを貼り付けていこうと思う。

選挙のたびに「経済」が強調されてきたのだから,有権者にとってアベノミクスの成果を確認することは必要不可欠である。

まずはツイッターで盛大にバズったこのグラフから。アベノミクス前の2012年を100とした賃金と物価と消費の推移である。



データ元:厚労省,総務省

消費税増税と円安により,物価が6年間で6.6%も上がった(赤)。

その一方,名目賃金は2.8%しか伸びなかった(青)。

だから実質賃金は,アベノミクス前と比べて3.6%も落ちた(緑)。

そして,実質世帯消費動向指数は9.3%も落ちた(黄色)。

日銀によると消費税増税による物価上昇効果は2%だそうだ。

残りの4.6%はアベノミクスがもたらした円安が最も影響しているだろう。

(なお,2015年に原油の暴落があったおかげで円安による物価上昇の勢いが抑えられていたが,2017年頃から原油価格がもとに戻り始めたので,その抑圧効果が薄れて物価が上がった。原油価格がアベノミクス前の水準のままだったら,円安による物価上昇はもっと凄まじいものになっている。)

つまり,増税に円安を被せたことにより,物価が急上昇し,賃金が全然追い付かなかったので,我々はビンボーになったのである。

以上。

と,ここで終わりにするとアベ応援団の方々がギャーギャーうるさいのでもっとデータを貼っていく。

実質賃金のことを言うと必ず新規雇用者が増えて平均値が下がっただけ,と言い出すバカがいるが,名目賃金を見ろ。下がってないだろう。

単に名目賃金の伸びを物価が上回ったから実質賃金が下がっただけ。

これだけだとまだギャーギャー言いそうだ。そこで,サンプル数が決まっており,「新規雇用者増による影響」が無い,可処分所得の推移について見てみよう。



データ元:総務省

可処分所得で見ても,2017年の実質値はアベノミクス前を3%も下回る。

こういうと「税金や社会保険料で下がったんだ」と言い出す輩がいるので,税金や社会保険料が引かれる前の実収入で見てみよう。



さっきよりはマシだが,やはり実質実収入で見ても,2017年はアベノミクス前より下。

さて,賃金の話に戻る。2018年の名目賃金は,あれでも思いっきりかさ上げしているのである。2018年から賃金の算出方法が変更された。サンプルを一部入替えて,ベンチマーク(賃金算出に使い係数みたいなもの)を更新した。

今までなら遡って改定して変な段差が出ないようにしたが,それを止めてしまった。

だから,2018年だけ急に伸びた。



見てのとおり,2013年~2017年の5年間で1.4%しか伸びなかったのに,2018年の1年間で1.4%伸びた。

でも,物価がこの年1.2%伸びたので,結局実質賃金の伸びはほぼ横ばい。

かさ上げしてもショボいのがミソ。

我々がビンボーになった結果,GDPの6割を占める実質消費は異常な停滞を引き起こした。



2014年~2016年にかけて3年連続で下がった。戦後初。

2017年は前年よりは上がったが,4年も前の2013年を下回った。これも戦後初。

戦後最悪の消費停滞を引き起こしたのがアベノミクス。

そして,これすらもかさ上げされた結果なのである。

2016年12月に,「国際的GDP算出基準である2008SNAへの対応」を強調して,GDPが1994年まで遡って改定された。

しかし,肝心なのは,その2008SNAと全然関係ない「その他」

この部分でアベノミクス以降のみかさ上げし,90年代を大きくかさ下げするという「ソノタノミクス」という現象が起きた。



データ元:内閣府

おかしいだろ。これ。

で,改定前後の名目民間最終消費出の差額と,「その他」を重ねてみると,アベノミクス以降のみ3年度連続で一致する。



データ元:内閣府

アベノミクスで最も失敗した消費をかさ上げしたということだ。

消費のかさ上げはこれ以降も続いている。

世帯消費動向指数(総務省)に世帯数(厚労省)を乗じた数字と,持家の帰属家賃を除く家計最終消費支出(内閣府)を比較すると異常さが良く分かる。



2014年まではほぼ一致。

しかし,2015年から急に差がワニの口のように開いている。

差額を抜き出したのが下記のグラフ。



2015年以降だけ昇竜拳みたいに増えている。

おそらく,供給側(売る側)の統計のウェイトを増やしたものと思われる。

売る側の統計には,事業所の消費や訪日外国人の消費も入ってしまう。

つまり,売る側の統計のウェイトを増やすと,「家計の」消費の実態から外れてしまう。

家計消費が落ちすぎてしゃれにならない状況なので,ウェイトを変えてごまかしたのだろう。このインチキをしていなければ,GDPがマイナス成長になっていてもおかしくない。

なお,改めて強調するがこの消費のかさ上げは2008SNAとは全く関係ない。

賃金と消費がかさ上げされているということだが,これは氷山の一角に過ぎない。

2019年2月18日衆議院予算委員会における小川淳也議員の指摘によれば,安倍政権以降,53件の統計手法を見直し,そのうち38件がGDPに影響しているという。ちなみに民主党時代は16件で,そのうちGDPに影響するのは9件だけ。

うまくいかないから統計をいじりまくっているのである。

もはやこの国の統計は原型をとどめていない。

さて,次にエンゲル係数を見てみよう。



食料価格指数(赤)は,アベノミクス前と比べると10%以上も上がっている。

そして,さっきも言ったとおり賃金は全然伸びていない。

だから,エンゲル係数(支出に占める食費の割合)が急上昇しているのだ(青)。

食料品が値上がりしたり,あるいは同じ値段でも量が少なくっていることを実感する人は多いだろう。あれは円安の影響だ。輸入物価が上がるからそういう現象が起きるのだ。

自国の通貨の価値を下げるというのは,そういうことである。

さて,こういうことを言うと雇用が改善しているだろうと言われそうだ。

たしかに雇用者数は増えているが,重要なのはその内訳。



ご覧のとおり,2018年と2012年を比較すると,医療・福祉が125万人も増えており,ぶっちぎりの1位。これは明らかに高齢化の影響。

それ以外でアベノミクスの引き起こした円安の恩恵を受けた業種は,宿泊業と製造業ぐらいだろう。後はなんの関係も無いか,むしろ原材料の高騰で苦しむ業種ばかりである。

この雇用者増にはフランチャイズ店舗の増加も影響している。下記はフランチャイズ店舗数について,2003年を100として指数化したもの。



ご覧のとおり,アベノミクス前からフランチャイズ店舗は増加傾向。

フランチャイズ店舗は業種を問わずパート・アルバイトを大量に雇用するので,雇用者数増に影響する。

特に,コンビニの伸びが凄いのが良く分かるだろう。

なんでこんなに伸びるかというと,凄まじい搾取システムのおかがで,店を出せば出すほどフランチャイザーが儲かるようになっているからである。

他方で,コンビニオーナーは地獄のような目に遭っている。

下記の本を読むと,実態が良く分かる。

「コンビニオーナーになってはいけない 便利さの裏側に隠された不都合な真実」2018年9月1日『amazon.co.jp』

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4845115573/hatena-blog-22/

こうやってコンビニが伸びていることも影響し,増えた業種の2位が「卸売・小売り」になっているのだろう。

これはフランチャイズという仕組みが生み出しているものであり,アベノミクスと全然関係ない。

なお,外食とサービス業は,近年むしろアベノミクス前よりも伸び悩んでいる。

「就業者数が増えた」というのもよく言われる。就業者とは,雇用者に自営業者等を足した数字。

たしかに年で見ると2013年あたりから増え始めたように見えるが,細かく分析するとこれも違う。



ご覧のとおり,全ての年齢階級において,一律に就業者が増えているわけではない。6つの階級のうち,半分は減少しているのである。

そこで,この減っている階級を一つにまとめたものを「減少群」とし,増えている階級を一つにまとめたものを「増加群」としてグラフにしてみると,面白いことが分かる。まずは減少群(25歳~34歳+35~44歳+55~64歳)から見てみよう。



見ての通り,減少群の減少傾向は,安倍政権以前から始まっており,その傾向がずっと継続している。傾きにも特に変化は見られない。なお,点線は,傾向を分かりやすく捉えられるよう,エクセルの機能を使ってつけた多項式近似曲線である。

次は増加群について見てみよう。



増加群の増加傾向は,安倍政権発足前から既に始まっており,その傾向がずっと続いているだけ。だいたい2012年の中頃から増加が始まっている。

就業者数が増加に転じたのは,この安倍政権以前から始まった増加群の増加ペースが,減少群の減少ペースを上回ったからである。

そのタイミングが年次データで見るとたまたま2013年だったので,あたかもアベノミクスのお陰で就業者数が増え始めたように「錯覚」してしまうのだ。

さっきも指摘したとおり,増えた雇用の内訳を見ればアベノミクスと関係ないことは一目瞭然。

以上のとおり,就業者数の増加は,ただ単にアベノミクス前から始まった傾向が,そのままずっと継続しているというだけの話。

あれほど異常な消費の停滞が無ければ,就業者数ももっと増えていたはず。

「アベノミクス前からの傾向がそのまま続いているだけ」というのは,安倍総理がよくもち出す有効求人倍率と失業率にもあてはまる。

このグラフを見れば分かるとおり,有効求人倍率の上昇も,失業率の低下も,共にアベノミクス前から始まっており,アベノミクス開始前後で傾きに全く変化は見られない。



アベノミクス以降もずっと改善傾向が継続しているのは,金融危機が発生していないからである。数字が悪化した時期を見ると,まず1991年のバブル崩壊以降だんだん悪くなっていき,1997年11月から発生した金融危機の影響でさらに悪化している。

そして,2003年あたりからだんだん良くなってきたが,2008年のリーマンショックでまた猛烈に悪化する,という経緯が見て取れる。

雇用を最も悪化させるのは金融危機。アベノミクス以降は幸運なことにそれが発生していない。だからずっと改善傾向が続いている。

次は賃上げ2%。

安倍総理は賃金のことを突っ込まれると必ずといっていいほど「賃上げ2%達成」を自慢する。

この賃上げ率は春闘における賃上げ率を使っている。問題は,春闘の賃上げ率のサンプルだ。当然のことながら,春闘に参加した組合員しか対象になっていない。そこで,賃上げ率の対象となった組合員数の,全体の雇用者(役員を除く)に対する割合を見てみよう。



データ元:総務省統計局「労働力調査」,連合ウェブサイト

見てのとおり,アベノミクス以降を見ると,安倍総理が盛んに自慢している賃上げ2%の対象となった労働者は全体の約5%程度しかいない。

5%にしか当てはまらない数字を大きな声で自慢し,あたかも国民全体の賃金が上がっているかのように錯覚させようとしている。

しかも,この賃上げ上昇率は名目値である。この上昇率から,消費者物価指数を差し引いた実質賃金上昇率を出すと,実にしょぼい結果になる。



データ元:連合ウェブサイト,総務省

なんと,民主党時代最も低かった2012年の実質賃上げ率1.72を上回った年は,アベノミクス以降だと,2016年のたった1回しかない。2014年なんか大幅なマイナスになっている。

このように,実質賃上げ率でみると民主党時代よりもアベノミクス以降の方が圧倒的に低いのである。

さて,次によく言われるが株価の上昇。これは異次元の金融緩和に加え,年金資金の投入と日銀のETF購入で吊り上げているだけ。

まずは年金を運用しているGPIFの国内株式運用額と構成比の推移を見てみよう。



データ元:GPIF

2014年度に構成比を変えたので急に伸びているのが良く分かるだろう。

我々の年金が株に突っ込まれているのである。

次に日銀ETF。



データ元:日銀

こんなに爆買いしているのでもう後戻りできない。

株価が下がった日は「日銀 ETF」で検索してみよう。

ほぼ間違いなく日銀の買いが入っている。

これらの内容は拙著「国家の統計破壊」第7章から主に引用した。

「国家の統計破壊 (インターナショナル新書)」2019年6月7日『amazon.co.jp』

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797680385/hatena-blog-22/

こんなに書いちゃうと担当編集から怒られそうだが,これは広く国民に周知されるべき事実なので,別に怒られてもかまわない。

アベノミクスは国民をビンボーにしただけ。

それがバレるのが怖くて,統計はかさ上げし,株価もかさ上げし,アベノミクスと無関係の雇用改善を自分の手柄と喧伝している。

安倍総理にとって,国民は騙す対象でしかないのだろう。

賃金はほとんど伸びなかった。なのに物価は上がった。だから生活が苦しくなった。

順番が逆だった。まず先に賃金を上げるべきだった。

しかし,その失敗は無視し統計をかさ上げして賃金が上がったように見せかけ,増税を強行しようとしている。

増税すれば当然物価は上がる。

物価が上がれば実質賃金は下がる。

国民はよりビンボーになる。

こんな人間を支持する理由がどこにあるのだろう。

安倍総理は経団連の方しか見ていない。そして,経団連は労働者を低賃金で長時間働かせることばかり考えている。

だから今まで賃金が下がり続けてきたのだ。

賃金と物価のの長期的推移を見てみよう。こちらは年度データ。

なお,3分の1しか調査してなかったという統計不正のせいで,2004年度以降の賃金データは正確性を欠くが,代替するものが無い(2004年度~2011年度までは修正されたデータが無い)のでやむを得ずそのまま使う。



1997年11月に,バブルの後遺症が爆発して大手の金融機関が破綻し始め,金融危機が始まった。

日本の経営者達は,これを労働者の賃金を削りまくるという手段で乗り切ろうとした。

それがずーっと放置された結果,賃金がどんどん下がっていき,それに合わせて物価も下がったのである。デフレの原因は賃金の低下。上のグラフを見ると,賃金が下がるのに合わせて物価も下がっていったことが分かるだろう。

まずやることは賃金を上げること。

最低賃金の引き上げについては,急激にやりすぎると韓国のように失敗する。だから,デービット・アトキンソン氏が指摘するように,イギリスの最低賃金引き上げの成功例を模範として,引き上げていくべきだろう。下記参照。

「日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義」2019年1月11日『amazon.co.jp』

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492396462/hatena-blog-22/

そして,横行している残業代不払いの撲滅。これが低賃金だけでなく,長時間労働を招き,過労死,過労うつを発生させている。働いた分はきちんと払わせなければならない。そんな当たり前のことが,この国ではできていない。

さらに,有期雇用の無期雇用への転換をもっと促進させ,待遇も同等にしていくべきだ。

これは自民党にはできない。目先のことばかり追いかけ,賃金を下げることばかり考えている無能な経営者集団である経団連がスポンサーだから。

労働者を守る政策は,野党にしか実現できないだろう。

野党には労働者を守る政策を推進してほしい。

普通に働いて普通に生きていける社会を実現してほしい。

執筆: この記事はモノシリンさんのブログ『モノシリンの3分でまとめるモノシリ話』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2019年7月11日時点のものです。

―― やわらかニュースサイト 『ガジェット通信(GetNews)』

当記事はガジェット通信の提供記事です。

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