コミュニケーション苦手ママ「どう付き合う?」トラブル回避4つの対処法【もしかして? 大人の女性の発達障害 第2回】



イラスト:クリタミノリ

時に、コミュニケーション障害と言われることもある、発達障害。「空気が読めない」「相手の気持ちがわかりにくい」などの特性は、人づきあいでのトラブルを招きやすく、「愛想が悪い」「気が利かない」など、性格の問題にされてしまうことも少なくありません。

特に、女性のコミュニティは、男性より「空気を読みあう」「共感し合う」ことで成り立っていることが多いため、子どもの頃から友だちづきあいがうまくいかず、ずっと悩んできたという女性も多いそうです。

周囲にそういった「コミュニケーション苦手」ママがいる場合、自分自身はどう対応するのがベストなのでしょうか?

第2回は、当事者と周囲それぞれ、お互いを尊重する対応策について、言語聴覚士で発達障害当事者でもある村上由美さんにおうかがいします。

お話をうかがったのは…
村上由美(むらかみ・ゆみ)さん

言語聴覚士。上智大学文学部心理学科、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院(現・国立障害者リハビリテーションセンター学院)聴能言語専門職員養成課卒業。重症心身障害児施設や自治体などで発達障害児、肢体不自由児の言語聴覚療法や発達相談業務に従事。著書に『アスペルガーの館』(講談社)、『声と話し方のトレーニング』(平凡社新書)、『ことばの発達が気になる子どもの相談室』(明石書店)、『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本』(翔泳社)などがある。


今回、「大人の女性の発達障害」というテーマで周囲に話を聞いてみたところ、「より良いコミュニケーション方法を知りたい」から「空気が読めないママの対応に困っている」といった本音までさまざまな声が集まりました。

そこで、具体的な事例をもとに、当事者はもちろん周囲はどう対応したらベストかをご紹介します。

■ケース1:「父母会費はスマホ決算で!」空気を読むのが苦手なママ

「保育園で初めての保護者会。父母会費を集めようとしたら、「スマホ決済で払いたいんですけど」というママがいて…。いきなり言われて、役員一同、対応に困ってしまったことがあります」(35歳 M子さん)

村上さんの回答:相手のママは、おそらく、「スマホ決済だと支払いが便利だし、ポイントも貯まるし、おつりのやり取りもないし、良いことづくし!」と思ったことをそのままポンと言っただけだと思いますよ。

でも、ある意味、合理的な方法ですよね。むしろ今後は、さまざまなシーンで、こうしたキャッシュレスな支払い方法に変わっていくのかもしれませんよね。

ですが今回、なぜこのアイディアが「いいね!」という雰囲気にならなかったかというと、その理由はお互いにそこまでの関係性ができていなかったからだと思います。

逆に、ある程度関係性ができていて、「欠席者から会費を回収するのは大変だよね」という話になったりした時に、「じゃあ、いっそのことスマホ決済でやってみる?」と提案してみたら、「いいかも! やってみる?」という雰囲気になったかもしれません。

周囲はまず、どうしてスマホ決済で支払いたいと思ったのか、相手に理由を聞いてみましょう。そのうえで、「あなたの希望はわかったのだけど、こちらにはまだそういう受け入れ態勢ができていないから今は難しい」ということを伝えて、違う形で払ってもらえるよう交渉してみましょう。

また、スマホ決済を提案したママは、払う側は楽かもしれませんが、払われる側のことをもう少しだけ考えてみましょう。その場にいる全員がそのサービスを利用しているとは限りませんし、お金を集める側はどうやって現金化するのかなどのフォローも考えて提案したら、全然印象が変わると思いますよ。

■ケース2:「日焼け止めはこのメーカーで!」主張が強く、妥協ができないママ

「保育園の日焼けや虫よけ対策に満足できず、「娘には外遊びの前に、毎回必ずこれを塗ってください!」とメーカーまで指定して訴えるママがいました。保育士さんも対応に困っていましたが…」(38歳 K子)

村上さんの回答:まず、相手のママは、できるだけ子どもに良いことをしてあげたいと思っていて、それがこういう形に表れているだけなので、その気持ちは尊重してあげましょう。そのうえで、なぜそのメーカーではないとダメなのかなど、理由を聞いてみましょう。

アレルギーがある場合などは、個別の対応が必要になります。指定された日焼け止めや虫よけを、園で購入することが難しい場合は、その理由をきちんと説明して、各自で用意してもらうなど対応してもらいましょう。ただし、場合によっては、園ができること、できないことをの境界線を明確にすることも必要です。

■ケース3:「突然だけど来ちゃった!」事前連絡ができないママ

「事前に出欠確認をお願いしている園のイベント。まったくレスがないから、当然欠席だと思っていたら、いきなりイベント当日に何の連絡もなくやって来るママがいます。毎回、突然来られても困るのですが…」(32歳 Y美)

村上さんの回答:3つの原因が考えられます。1つは、体調が不安定な場合。鬱(うつ)など精神疾患のある方は、体調の波が激しいので、本当に直前までわからないことが多々あります。

そういうことを繰り返すママには、こちら側も「当日厳しかったらパスしていいからね」「行けそうだったら連絡してね」くらいの気持ちで接することも大切です。

当事者ママも、「体調が不安定だから、直前の返事になってしまっても良い?」と事前に断っておいたり、「何日くらいまでに返事すればいい?」と確認したりするなど、ある程度は自分の状況を伝える必要があることを覚えておくと良いですね。

また、自分の中で行きたい気持ちがどれくらいあるのか? 例えば、10段階のうちいくつ以上だったら、とりあえず申し込んでおいて無理なら直前に連絡する、などと基準を作っておくことをおすすめします。

2つ目の原因は、イベント告知のプリントの文章をきちんと読めていない場合。イベントの日程だけ頭に入って、そのための手続きが抜けてしまっている場合もあります。これに対しては、連絡が来ないようだったらリマインドメールを打つなどして対処すると良いでしょう。

3つ目の原因は、本人が「行けばなんとかなる」と思っている場合。なんとかなるのではなく、周りの人たちが何とかしてくれていることに、本人は気づいていないのでしょう。でも、周囲はそれなりに対応が必要になるわけですから、一度、そこをやんわり説明しておく必要はあるかもしれません。

■ケース4:「役員なんてできません!」急にキレるママ

「保護者会で役員のクジが当たった瞬間、「こんな忙しいのに役員なんてできません!」と突然キレたママ。私にというより、その状況にキレている感じでしたが、どう対応したら…?」(40歳 H香)

村上さんの回答:私たちの社会には、「あまり親しくない間柄の人の前で、感情的に取り乱すのはよくない」という暗黙のルールがあります。

でも、その暗黙のルールというのは、誰かに教わったわけではなく、明文化されているでもなく、「なんとなくそういうもの」ということになっていますよね。でも、中には、それがピンとこない人もいて、それよりも自分の感情の方が大事ということもあるのです。

また、キレてしまったママにしたら、きっと、今までずっと我慢してがんばってきて、まさにコップの水がいっぱいになって一気にあふれてしまった瞬間なのだと思います。

でも、コップに水がたまっていく過程は、こっちは全然知りませんから、「え? なに? 突然?」みたいな受け取り方になってしまう。ですから、相手には相手の事情がある、ということを認識することも大切です。

まずは、キレているママが落ち着くまで待ちましょう。その後で、相手の事情を聞いたり、「どういう仕事ならできるのか」「ここまではできるけど、これ以上はできない」など妥協点を探りましょう。


「自分の常識や価値観が通じない相手を前にすると、最初は戸惑ったり、時には激しい抵抗感を覚えることもあるでしょう。ですが、自分が感じている世界は大切だけど、それはあくまでその人個人のものであること。

そして、関わっている相手にも、同様に大切な世界があること、尊重することが、円滑な人間関係には欠かせません。そして、これからむしろ大切なのは、意見が合わない時に、お互い協力し合って相手との新しい“世界”を作ることだと思います」と村上さん。

発達障害当事者でもあり、その支援者でもある村上さんのお話からヒントをもらって、少し想像力を働かせば、理解できなかったあの人とも心の壁を築くことなく、「なるほど。それならこうすればいいのでは?」という解決法が見えてくるかもしれません。

それは、お互いにとって心地よい環境づくりの、大切な第一歩になるでしょう。

参考図書:
『発達障害の女性のための人づきあいの「困った!」を解消できる本』
(PHP研究所)

発達障害当事者である著者が、発達障害を持つ女性特有のコミュニケーションにおける苦労や悩み、問題の原因を解説し、周囲とうまくつきあっていくためのポイントを場面別に紹介。著者が医療や福祉、発達相談の現場などで相談を受けた中で、特に多かった日常の場面を取り上げ、うまくいかない原因と上手な伝え方や切り抜け方のポイントを掲載し、発達障害を持つ方の支援者や家族に知っておいてほしいことについて解説。


取材・文/まちとこ出版社N
(まちとこ出版社)

当記事はウーマンエキサイトの提供記事です。

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