HY、テナー、真心らがハートフルな名演――今年の『Rocks ForChile』が残した確かな足跡

SPICE

2019/6/20 18:00

Rocks ForChile 2019 2019.5.11-12 服部緑地野外音楽堂


たっぷりと陽光が降り注ぎ、周りを木々に囲まれた野外の会場。集まったお客さんのうちかなりの割合が子ども連れや家族連れ。生の音楽に身をゆだねながら、ステージ直下でピョンピョンと飛び跳ねたり踊ったりと前のめりに楽しむ人、後方にレジャーシートを敷いてのんびり過ごす人。大人はビールを飲んだり、子供は駄菓子やかき氷に夢中だったり。ライブを観ているとどこからか風に乗ってシャボン玉が飛んでくる。なんだこの空間は。最高じゃないか。

5月11日と12日の2日間にわたって大阪・服部緑地野外音楽堂で行われた『Rocks ForChile 2019』。今回で3回目となるこのフェス、筆者はその全てを観る機会に恵まれている。その上で言えることとして、今年は間違いなく、これまでで最も同フェスの理念や開催意義が出演者にも来場者にも伝わり、共有され、ここでしか味わえない独自の空気として目に見える形で現れていた。本稿では、ライブステージのライブアクトのレポートを中心に、今年の『Rocks ForChile』が何を成し遂げ、何を残したのかについて書いていきたい。

DJダイノジ
DJダイノジ

1日目、快晴。というか2日間通してずっと快晴で気温は30℃に迫る勢いだった。一ヶ月早い時期に開催した昨年はかなり肌寒く、途中で雨が降ったりもしていたから、まずこの開催時期の変更は大きい。開場時間になると、オープニングDJを務めたDJダイノジが音を出す中を参加者たちが続々と入場。大谷ノブ彦が新旧洋邦を行き来するプレイで畳み掛ければ、大地洋輔とダンサーたちは全力で盛り上げにかかる。「Are You Gonna Be My Girl」(ジェット)ではもちろん、世界一を獲得した大地のエアギターも飛び出した。DJプレイを終えた後もステージに残りMCを務めた彼らがはじめに呼び込んだのは、オープニングアクトのshellfish。神戸発の4人組バンドであり、この日はアコギとアップライトベース、ドラムパッドという編成での出演となったが、ハイトーンボイスで丁寧に歌うグッドメロディといい具合に洗練されたサウンドで、朝の会場を爽やかな空気で満たしていった。

D.W.ニコルズ
D.W.ニコルズ

本編はD.W.ニコルズのライブからスタート。昨年も、対象年齢のレンジが異様に広い音楽性とフリーダムなステージ捌き(とキャラクター)で大いに盛り上げていた彼ら。今年はギターの鈴木健太が渡米中とのことで3人編成での出演となったが、無謀なコール&レスポンスも楽しい「フランスパンのうた」や、「僕たちが音楽を通して伝えたいことは大体この曲の中に入ってます」(わたなべだいすけ)と届けた「スマイル」、リリースされたばかりの「はじまりのうた」など、観て聴くうちにいつの間にか心を開かせてしまう人懐っこさは健在。むしろ音がよりシンプルになったことで、この環境にはよく似合っていたように思う。

福原美穂
福原美穂

続いて登場した福原美穂もまた、世代不問に惹きつけるパフォーマンスを繰り広げた。ニコルズのそれがポップな曲調とキャラ、ステージングなどの合わせ技によるものであるとすれば、福原のそれはもっとシンプルで、身も蓋もない言い方をすれば、とにかく歌が上手い。ゴスペルやソウル、ジャズのテイストが前面に出ている点だけ見れば大人向けでも、それ以前に万人を魅了できる歌そのものの力がある。デビュー曲にして大名曲の「CHANGE」や「Amazing Grace」のカバーなどを披露したあとは、思い思いの楽器を持った子どもたちを呼び込んで「JOY」をセッション。自身が母でもある彼女ならではのあたたかな包容力を随所に感じた。

Northern Boys
Northern Boys

今年は「大型新人」「オールドルーキー」的な枠が両日共に存在していたのだが、1日目のそれは林幸治(TRICERATOPS)とアーティスト/コンポーザーの菅原龍平によるユニット・Northern Boysだろう。まずはアコギ2本のみで「Music on the Radio」を届けてから、シークエンスの4つ打ちドラムに合わせ、R&Rテイストで空耳が楽しい「Oh Silly Love Song」をノリノリで。同フェスの“子ども記者”による彼らの紹介が「優しい感じ」であったことを受けて優しい曲=「Sofa」を演ったり、途中で泣き出した子どもに気づくとその方角へガッツポーズをしてみせたり、終始やわらかな空気で場を満たし、このユニットとしては初だというフェス出演を終えた。

新里英之
新里英之

昼下がりの時間帯は、弾き語りでの出演者が続いた。転換時間がほとんどなく、次々に人が入れ替わっていくのがフェス全体の中で良いアクセントとなっている。はじめにHYの新里英之。「ハイサーイ」とにこやかに現れたこの男には、やはりこの晴天がよく似合う。家族など自分の好きな存在を、世界中がもっともっと大好きになればいいと思う、として届けた「世界」、HYの名曲「AM11:00」などをアコギを抱えてステージ上を歩き回りながら、会場の隅々まで巻き込むように演奏。客席から選んだ男の子との“セッション”やさらに大勢を呼び込んでの“玉入れ”まで飛び出すなど、大いに沸かせた。

村松拓
村松拓

新里と入れ替わりでNothing’s Carved In Stoneの村松拓がステージへ。“子供達の未来へ”というフェスのテーマに触れ、「子どものためになる曲を、僕は一曲も持ってなかったです(笑)」と自虐しながら「Silent Wheel」や「シナプスの砂浜」などを披露。普段は凄腕プレイヤーがぶつけあうキレキレのフレーズを背負って雄々しく歌う彼だが、アコギ一本で聴くリラックスした歌声はちょっとライアン・アダムスみたいな味がある。最後に佐々木亮介(a flood of circle)を呼び込んで佐々木のリクエストだという「Adventures」をセッションしたあと、そのまま佐々木のライブが始まった。「Blanket Song」の曲中では、ソロ出演のほかNO GENERATION GAPSでの出演に加え、ワークショップまで担当するという自身のフル回転ぶりを<俺働きすぎ でも多分ギャラは一人>と即興で愚痴って笑わせ、HIP-HOPナンバー「夜のパパ」(KM feat.田我流)のカバーという意外性も忍ばせる。全体的に“弾き語り”の“語り”の部分、歌の中にある言葉を強く訴えかけてきた印象だった。

佐々木亮介
佐々木亮介

佐々木亮介
佐々木亮介

弾き語りタイムはまだ続く。佐々木がステージに残り、うじきつよしが登場してのNO GENERATION GAPSのライブには、パーカッショニストの辻コースケが急遽参加。挨拶代わりの「NGGのテーマ」、ちょっとスモーキーな歌われ方が味わい深かった「チェリー」(スピッツ)や忌野清志郎の名曲「パパの歌」を経て、最後はマーク・ロンソン「Uptown Funk」を。すると頭にタンバリンを乗っけた村松拓が登場し、トリプル・ボーカルでの共演か?と思いきや、センターに立ちながら一切歌わず、タンバリンとハンドクラップ、そしてブルーノ・マーズ風のダンスで沸かせるという流れに。なお、動画を見て研究したというその動きはバックステージでも大人気でした。

NO GENERATION GAPS
NO GENERATION GAPS

NO GENERATION GAPS / 村松拓
NO GENERATION GAPS / 村松拓

日が傾くにつれ徐々に日陰の出来てきた会場だが、逆にステージには西日が直撃。登場するや「日が……(笑)」とツッコみつつ、YO-KINGと桜井秀俊によるゆるやかなテンションの掛け合いと、随所の熟練のワザが光る演奏と歌で楽しませていった真心ブラザース。YO-KINGが客席を見渡しながら「そこかしこで盛り上がってる。最高ですよ、こういうのが良いんだよね」と言っていたが、そんな風に自由に過ごせる空間が自然と生まれているのは、彼らのライブ運びによるところも大きいだろう。後半に「どか~ん」「サマーヌード」と時代を超越する大名曲を並べれば、客席はおろかステージ袖にいる他出演者も大喜び。ピースフルな空気も極まってきたところで、1日目のトリへとバトンがつながる。

真心ブラザーズ
真心ブラザーズ

1日目のヘッドライナーとなったのはストレイテナーだ。「ほんわかしたイベントになっていて、その一端を担えてたら嬉しいです」と語ったホリエアツシ(Vo/Gt/Key)はソロ出演を含めると同フェスで唯一の皆勤賞。「Toneless Twilight」で始まったライブは、普段のライブと一線を画したセットリストとなっており、2012年にリリースしたアコースティック・アルバム『SOFT』の収録曲から「TOWER」「SIX DAY WOMDER」などが同作に近いアレンジで演奏されたほか、ミニマムなビートにのせたエレアコベースのスラップが極上のノリを生んだ「YOU and I」や、ファンキーな平歌部分と大らかなメロディを持つサビの対比が鮮やかな「クラムボン・インザエアー」などファン垂涎のチョイスも。カバー曲として披露された「YELLOW」(コールドプレイ)も素晴らしく、大仰な起承転結はなくとも、美しいメロディと淡々とした中に熱を内包した音像がストレイテナーによく似合っていた。
また、アンプを通しているとはいえ、各楽器がボリュームを抑え、かつあまり歪ませていないため、大山純(Gt)のタメが効いたプレイをはじめ「各楽器が何をやっているか」とそのニュアンスが伝わりやすいのも嬉しい。後半にかけては「彩雲」「シーグラス」と人気曲を続け、アンコールでは「TENDER」を披露。曲の後半に4声のハーモニーを響かせると、客席にもシンガロングの波が広がっていく。幸福感いっぱいの幕切れとなった。

ストレイテナー
ストレイテナー

一夜明けた翌12日も文句無しの好天に恵まれた。前日同様、開場して間もなくDJダイノジがプレイし始めると、そこでの盛り上がり方が明らかに前日とは違う。ステージ前の立ち見エリアへと多くのお客さんが向かい、思い思いに体を揺らしたり踊ったり。一昨年よりも昨年、昨年よりも今年と、イベントが回を重ねるごとにそのカラーや楽しみ方が浸透していっているのは肌で感じたが、この2日間だけに目を向けてもそれは同様のようだ。DJダイノジはといえば、1日目とはレパートリーをガラッと入れ替え、より幅広い年代やジャンルのナンバーで大いに沸かせていた。続いて、2日目のオープニング・アクトとしてinstant caravansが登場。結成わずか2ヶ月にして『高校生バンドフェス』でグランプリを獲得した地元・大阪のバンドとのことで、切れ味鋭いセッションから「キラヴ」を披露。さすがに多少の硬さは見受けられたものの、骨っぽいボーカルとスリリングなギターロックがその片鱗を窺わせた。

SHE'S
SHE'S

大阪が地元のSHE’Sがこの日の1番手。ちなみに彼らが登場する直前に流れていたBGMがトラヴィスだった(多分たまたま)のだが、その流れが美しい。井上竜馬(Vo/Pf/Gt)の歌はじまりから疾走を開始する「The Everglow」でライブをスタートさせ、人気曲「Un-science」も前半のうちに惜しみなく投下。爽やかさや親しみやすさと同時に普段はエモーショナルな側面も多分に含んだ彼らだが、イベントの趣旨を理解してのことだろう、この日はエモ成分控えめ。楽しさを前面に押し出しており、メンバーの表情や振る舞いもとても明るく和やかだ。「日曜日の観覧車」というこの日にピッタリの選曲も織り交ぜて、最後は「Dance With Me」でチアフルな空気を会場いっぱいに広げていった。

WEAVER
WEAVER

2番手はWEAVERで、ピアノロックバンドという、絶対数は決して多くないバンド形態が二組続く。ファン/リスナーもある程度共通しているようで、ステージ前にはSHE’Sのグッズを身に付けた人も結構いる。「一緒に最高の1日にしましょう」と杉本雄治(Vo/Pf)が一言告げ、始まったのは「トキドキセカイ」。ジャズや現代音楽を思わせるフレーズや変拍子を取り入れているものの、難解さは感じさせず、むしろその美声と確かな演奏でしっかり観客を引き込んでいく。途中、HYの仲宗根泉を迎えた曲「栞」では本人が登場し、ライブでは初となる共演も実現。パワフルながら繊細な仲宗根の稀有な歌声に杉本の歌が優しく寄り添う名デュエットに、会場からは感嘆の声が上がっていた。

WEAVER / 仲宗根泉
WEAVER / 仲宗根泉

林青空
林青空

2年連続の出場となる林青空は、今年はバンドセットのライブだ。で、見違えた。弾き語りでの出演だった前年は、ナイーヴさと芯の強さが同居したような佇まいに惹きつけられたのだが、今年は冒頭の「スパイスマジック」から元気いっぱい。トーン高めで可愛らしい響きの歌声は、リズミカルかつ実に表情豊かで、場内いたるところへと手拍子を誘発していく。その一方でバラードの「サヨウナラ」ではじっと聴き入りたくなる丁寧な歌い回しをみせるなど、「バンドでしか見られない林青空をみんなに知ってもらえたら」との言葉通りの表現だ。出演する先輩アーティストについてMCで触れたあとの「光」、<走り続ける ずっと>という決意のフレーズも瑞々しかった。

林青空 / 宮田和弥
林青空 / 宮田和弥

バンドセットのライブを終えた林が一人ステージに残り、宮田和弥を呼び込む。親子の年齢差だとMCで語っていた2人による忌野清志郎「スローバラード」のカバーは見事で、宮田が高音パート、林が中音域を歌うことで深みのあるハーモニーが生まれていた。そこからの宮田の弾き語りは、ソロ曲と「全部このままで」「さらば愛しき危険たちよ」というジュンスカ曲をミックスさせたライブに。曲の合間には柔和で飄々とした佇まいと語り口で和ませる宮田だが、その歌は高音まで伸びやかで迫力十分だった。

宮田和弥
宮田和弥

こどもSKY WALKER(S)
こどもSKY WALKER(S)

林から宮田への後輩→先輩リレーの流れから、ここでさらに先輩にあたるうじきつよしが呼び込まれる。うじきが自分には妙に強く当たってくる——とセッティングしながらボヤく宮田、確かに前日の佐々木との共演よりもツッコミが強めのうじき。そんな二人の掛け合いが実に微笑ましい。息が合うのは歌の方も同様で、こどもSKY WALKER(S)として「歩いていこう」「サマータイムブルース」などを披露すると、会場の至る所から手も歌声も上がった。そして出演者の中でも年長にあたる二人が、下手すると一番少年のように楽しげな姿には、このイベントの大前提たるメッセージが込められていたように映った。「音楽は楽しいぞ」と。

Bravo
Bravo

1日目のNorthern Boysと同様、オールドルーキー的な立ち位置といえるのがBravo。何しろ正式にユニットとなったのは今年からで、音源もまだ世に出ていない彼らだが、元々PESのソロ活動で共演していたメンバーだけあって、ライブパフォーマンスは盤石だ。PESのソロ曲「素敵なこと」「シーサイドラバーズ」のほか、RIP SLYMEを、いや日本を代表するサマーチューン「楽園ベイべー」まで飛び出したもんだから、歌い出しでステージに向けて突進開始する人も多数。音楽性としてはわりとジャンルレスでミディアムチューンが中心と、とりわけアッパーな志向ではないのだが、耳馴染みのいいメロディをナチュラルなトーンで歌うPESのボーカルは、ラップ由来なのか不思議なグルーヴを有しており、自然と身体に訴えてくる。制作中だという初音源にも期待させるライブだった。

和田唱
和田唱

TRICERATOPSのフロントマン・和田唱は、いい具合に肩の力が抜けた雰囲気で、小気味よくアコギを鳴らしながらソロ曲「地球 東京 僕の部屋」からライブをスタートさせ、途中、「jewel」「Shout!!」とトライセラ曲も交えていく。中盤に設けられた子供たちを呼び込んでのセッション・コーナーでは、子供も楽しめてロックシンガーとしてもアリな内容を考えた結果、としてディズニーソングのメドレーをチョイス。「It's a Small World」で子供たちが登場すると、弾むリズムに乗って合唱と合奏を繰り広げ、微笑ましい光景が広がる。普段から観客のノセ方が上手い和田だけあって、緊張気味の子供たちの後押しもお手のもの。ラストはピアノ弾き語りの「Home」でじっくりと、ささやかながら大きな愛を歌い、ステージを後にした。

和田唱
和田唱

圧倒的ギタープレイで沸かせた10代のギタリスト・西村ケントと、児童虐待撲滅を目指すネットワーク“ゼロ会議”テーマソングを歌うワタナベフラワーのライブを間に挟み、夕刻のステージにCaravanが登場する。「ハミングバード」「I’m a Believer」といったフォークやカントリー、ラテン音楽など、どこかオーガニックな香りのする音像を、ペダルスチールギターとアコギ、たまに本人がバスドラムを踏み鳴らしながら歌うという、とてもシンプルな構成で挑んだライブ。とにかく音の奥行きや隙間、余韻、隅々に至るまで抜群に心地いい。そこに彼の低音ボーカルが紡ぐグッドメロディが乗ることで、相反するはずの安らぎと高揚が一挙に押し寄せてくる。この感覚は唯一無二だ。ラストの「Trippin’ Life」のアウトロ、「今日は暑い中、本当にどうもありがとう。最後まで気をつけて」と言い残し、ニカっと笑うCaravan。ああ本当、カッコいいなぁ。

Caravan
Caravan

HY
HY

2日間の大トリとして会場全体から歓喜の出迎えを受けたのはHYだ。三線の音をバックに駆け出してきたメンバーがまず最前列でラインナップ。前日に新里がソロ出演した際にはラップパートと仲宗根パートを割愛し、「続きは明日」と約束していた「AM11:00」をいきなり1曲目持ってくると、場内は爆発的な盛り上がりをみせた。名嘉俊(Dr)と新里のラップ後に客席にマイクを向ければ、<でも君が好き>のフレーズを会場全体が叫ぶ。宮里悠平(Gt)の体調不良・休養を受けた4人でのライブに物足りなさは感じられないし、何よりこの懐の深さ、親しみやすさは尋常じゃない。MCでの“新里は子供のあやし方がうまく、許田信介(Ba)は下手である”という話題から仲宗根の無茶振りで2人が実演。なんとも言えない空気が会場を満たしたところで、すぐさま「それでは聞いてください」と仲宗根が屈指の名バラード「366日」を歌い出す一幕も。スイッチの切り替えも尋常じゃない。

HY
HY

新曲の「no rain no rainbow」と初期からの人気曲「ホワイトビーチ」を経て、最後は「君の歌」。HYは昼間のワークショップで子供たちと楽器作りをしており、その子供たちがお手製の楽器を手にステージに現れたあと、さらに客席から選ばれた3名の大人をステージに上げてパネルを手渡し、サビの歌詞に合わせて掲げるようレクチャー。どういうことか?と思っていたら、パネルが掲げられたらとりあえずそこに書かれた一文字をみんなで叫ぼう、という仕組みらしい。なるほど、これなら曲を知らなくても参加できるし、サビが繰り返されるうちに自然と頭に入ってきて、いつの間にか歌えてしまう。お目当てのアーティストも様々な不特定多数が集まるフェスの場で、これほど無理も嫌味なく一体感を生み出せるのは、長く一線で活躍する彼らのキャリア、そして人柄があってこそだろう。ラストは会場全体でジャンプして締め。名嘉の誕生日を祝う一幕もあり、大団円で『Rocks ForChile 2019』を締めくくったのだった。

HY
HY

2日間過ごしてみて、『Rocks ForChile』は「子供たちのためのフェス」であり、「子供が楽しめるフェス」であることは間違いなかった。が、それは決して「子供向けのフェス」ということではないと思う。同フェスが実現しつつある理想形において、そこは大きなポイントに違いない。対象年齢を広げることはあっても下げることはなく、まず大人が楽しめること、次代に伝えたい良質で多様な音楽が鳴っていること、周囲に気兼ねなく思い思いに過ごせること等々……まあ、文字にすると野暮ではあるが、一度足を運んでもらえたら、きっとわかるはずだ。

何より、こうやって幼少期から音楽と触れる機会があること自体、得難い経験となる。本物の音楽とのファースト・コンタクトの場として、たとえば家族揃ってフジロックに行くような音楽好きファミリーの形成・成長の場として、あるいはシンプルに親子のコミュニケーションの場として。このフェスの存在感は年々大きくなっていきそうだ。この日会場にいた親子が、いつかライブハウスで肩を並べる日が来たら、それも素晴らしいなぁ。

取材・文=風間大洋


『Rocks ForChile 2019』アフタームービー

当記事はSPICEの提供記事です。

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