孤高の詩人、清春の原点!! 黒夢のデビュー作、その妖しい魅力

UtaTen

2019/6/16 16:01

「メジャーという地獄に僕らは堕ちます」



1991年に清春(Vo)、臣(Gt)、人時(B)、鋭葵(Dr)の4人で結成(臣と鋭葵は後に脱退)された黒夢は、インディーズ時代から凄まじい人気を誇っておりました。

英語やアルファベットが主流であった当時の流行りに背を向け、バンド名もメンバーの名前にも漢字を使用。

80年代の日本のパンクやハードコア、アングラなロック、イギリスのポジパンから影響を受けた、徹底的にダークで攻撃的なサウンドは、

後にヴィジュアル系と呼ばれることになるバンド達の中でも、関東圏のバンドとは違う「名古屋系」と呼ばれ、黒夢はその代表格でもありました。

非商業的な楽曲は勿論のこと、ライブ中に首吊りパフォーマンスを敢行するなど、過激でアンダーグラウンドな香りを放ち、圧倒的な支持を集めながら、

1994年の2月、黒夢は東芝EMIからシングル曲『for dear』をリリース、メジャー・デビューを果たします。

当時、拠点としていた名古屋での「地獄の三夜」と銘打った公演で、清春が言い放った伝説的なMC、「メジャーという地獄に僕らは堕ちます」という言葉は、世間に迎合しない彼の本質を見事に表現したものと言えましょう。

話は脱線しますが、1994年という年は、ヴィジュアル系の歴史において非常に重要な、運命的な年と言えるのです。X JAPANのhideがソロ・デビュー・アルバムをリリースした年でもあり、黒夢とは同期のL'Arc~en~Cielがメジャー・デビューした年でもあり、

既に確固たる地位を築いていたLUNA SEAが、傑作『MOTHER』をリリースした年と説明すれば、その凄さが伝わるのではないでしょうか。

名匠、佐久間正英との出会い



画像引用元 (Amazon)


1994年3月9日、黒夢にとっては通算2枚目のアルバムとなるメジャー・デビュー作『迷える百合達~Romance of Scarlet~』がリリースされました。

プロデューサーには、四人囃子やプラスチックスのメンバーとして活動し、BOWY、ザ・ブルーハーツといった錚々たるバンドのプロデュースを手掛けた、佐久間正英氏を起用。

後に、GLAYやJUDY AND MARYといった、90年代J-POPの黄金期を代表するバンドをプロデュースし、J-POP史を語る上で欠かせない存在となる佐久間氏とのタッグは、黒夢にとって大きな影響を与えるものとなりました。

特に人時は、佐久間氏の事を尊敬するベーシスト、師匠と公言しております。

そんな佐久間氏や、サポート・ドラムとして参加したそうる透氏といった、卓越した一流のミュージシャンとの出会いが、黒夢のサウンド・クオリティの飛躍的な向上に一役買ったということは、疑いようのない事実でありましょう。

ヴィジュアル系サウンドの基本形にして王道!!



佐久間正英氏が作曲を手掛けた、静謐なピアノのインスト曲『開化の響』から一転、ソリッドなギターと共に始まる『棘』は、当時のライブ定番曲でもありました。

インディーズ時代の曲と比べると、圧倒的にメロディアスな仕上がりとなっておりますが、これぞヴィジュアル系と言わんばかりの要素が詰まった楽曲です。

清春独特の詩情から織り成す、単なるラブソングとは一線を画す歌詞、あえてマイナー・コードを使ったサビの展開、前面に押し出されたベース・ライン――。

この楽曲が持つ構造自体を流用した後続のバンドは数知れず、と言っても過言ではありません。

特に、引用しました歌詞にある、"繰り返す瞬きを"という、"を"で止める曖昧な言い回しは、後のヴィジュアル系バンドのヴォーカリスト達に、大いなる影響を与えたのです。

続く『for dear』も、シングル曲に相応しい分かりやすい展開とキャッチーさがありながら、何処を切り取っても黒夢らしさに満ちた名曲となっております。

臣が作曲した曲でもあるので、ギタリストとしての彼の色が大いに感じ取れることもポイントです。

この曲のMV映像で見ることのできる、金髪で白塗り(X JAPANやLUNA SEAとは全く違う)に中性的なファッション、という清春の見た目も含めて、中学生だった私にとっても、彼らとの出会いは、とにかく衝撃的でありました。

濃厚なデカダンスの中に揺らめく、歌謡曲の香り



タイトルからして強烈なインパクトを放つ『masochist organ』は、5年前に黒夢が20周年記念として行われたシリーズ公演「地獄ノ三夜」の中で披露され、やたらと盛り上がったことを思い出します。

オーディエンスにシンガロングを促すような曲ではなく、初期黒夢が持っていた退廃的なムードたっぷりの世界観で、スタッカート気味に4ビートで鳴らされるベースが印象深い楽曲です。

ピアノではなくオルガンにマゾヒズムを見出す清春、さすがです。

アルバムの中でも、際立った叙情性と落ち着いた大人の雰囲気に耳を奪われる、『aimed blade at you』は、個人的に大好きな曲です。

積極的にキーボードのサウンドも導入し、休符を活かしたベース、アコギによる、洒落た雰囲気のギター・ソロ、どれもが高い完成度を誇っております。

単に見た目重視のキワモノ的なバンドであったなら、このようなタイプの曲を完成させることなど不可能でありましょう。

「私」という主語で綴られる歌詞は、やはり黒夢流のデカダンスに満ちておりますが、同時に歌謡曲的なメロディで成立していることに注目して頂きたいです。

元々は西城秀樹や沢田研二に憧れていた清春氏ならではのメロディは、後にリリースされる『feminism』(1995年)へと繋がることになります。

決してポピュラリティの高いメロディというわけではありませんが、『百合の花束』や『寡黙をくれた君と苦悩に満ちた僕』についても同様で、ねっとりとしたサウンドと退廃的な耽美さに満ちた世界観の中で揺らめく、濃厚な歌謡曲的メロディは限りなく美しいのです。

ライブにおける定番のラスト曲、「romancia」



『romancia』は、アルバムではラストの曲ではないのですが、当時のライブのアンコールやラスト曲として、頻繁に披露された楽曲です。

上述した、2014年に開催された「地獄ノ三夜」の第三夜「奈落」でも、アンコール・ラストの曲として披露されておりました。

決して派手なタイプの楽曲ではありませんが、単なる個人の関係性を超えた、ある種の死生観のようなテーマを内包した歌詞を、じっくりとドラマチックに歌い上げております。

妖艶で攻撃的な黒夢、といったパブリックなイメージだけでは窺い知ることはできない、彼らの音楽性が持つ様々な可能性を秘めた名曲と言えましょう。

常に変化を求めた黒夢の、偉大なる第一歩



よく知られているように、黒夢はアルバムをリリースするごとに、そのサウンドを激変させていったバンドです。

私の世代は、幸運にもその音楽的な変化を全てリアルタイムで味わうことができましたが、インディーズ期の黒夢しか認めないファンもおりますし、

パンク期の黒夢が初めての出会いで、大いに衝撃を受けたというファンもいるといったところに、黒夢という特異な存在の面白さを感じるのです。

とはいえ、本作を聴けば、攻撃的でハードな黒夢も、歌謡曲的なメロディを歌う黒夢も、全て彼らを構成する要素の1つでしかないことが分かるはずです。

冒頭で触れた、清春が初めて挑戦したカバー・アルバムの収録曲を眺めてみても、桑田佳祐や井上陽水、UAにいきものがかり、といったように、時代もジャンルも超えて歌い継がれる名曲の数々が選ばれております。

誰にも媚びず、己を貫き通し続ける清春氏の姿は今も昔も変わりません。

そんな清春の、メジャーという大舞台における偉大なる第一歩となった本作を、リリース25周年という節目に、改めて聴いてみてはいかがでしょうか。

TEXT KOH-1

当記事はUtaTenの提供記事です。

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