「ヒジャブを着けたら、女性らしくなれた」――ラハマリア・アウファ・ヤジッド

TABILABO

2019/6/15 19:00


ラハマリア・アウファ・ヤジッドさんはファッションを通して日本におけるイスラム教やムスリムへのイメージを変えようしているクリエイターだ。世界中でモデストファッションへの注目が高まっているけど、日本ではまだまだ。そもそも発信する人が少ない。東京生まれ東京育ちのアウファさんがヒジャブを着けてInstagramにセルフィーを投稿をすることは、大きな意味があるはずである……。

なんてインタビューの趣旨は彼女と話しているうちに忘れてしまいました。だって「お気に入りのファッション」と「イスラムへの信仰」を同じテンションで話すんだから。

それにしても、ヒジャブにベレー帽、オーバーサイズのカットソーというアウファさんのコーディネートは最高にイケてます。

「日本の風景にマッチするヒジャブを知って
着けるのが楽しくなっていった」



──今、ラマダン中ですよね?

はい、日中は水も飲めないんですよ。ただツラいのは承知の上。貧しい人の気持ちを知るだとか、めぐみが日々当たり前のように溢れていることに感謝をするといった意味が、ラマダンにはちゃんとあるんです。

それに日没後には近くに住んでいるムスリムの友人たちが私の家に集まって、一緒にご飯を食べて、とにかく駄弁るっていう楽しみもあるし。食べないという制限があることで生まれるコミュニケーションですね。

多い時には50人ぐらい集まるんですよ(笑)。

──ホームパーティーにしては人数が多すぎますね(笑)。

正直キャパオーバーですね。みんなで床に座って楽しくワイワイしています(笑)。

ラマダン明けには日本のお正月みたいにお祝いをして、挨拶回りもするんですよ。その時はだいたい150人ぐらいが、私の家に出入りするんです。

──田舎に親戚大集合!みたいで楽しそうですね。ところで、周囲のムスリムの方々は、アウファさんの活動についてどう思っているんでしょう?

みんなクリエイティブなことをしているよねと言ってくれます。否定的な意見はほとんどありませんね。

私のファッションをきっかけに、イスラムの世界に興味を持ってくれている人も実際にいます。


──ヒジャブは子どもの頃からずっと着けてるんですか?

イスラム教の女性は、思春期を迎えたらヒジャブを着けるのが義務で。本当は中学校や高校でも着けていなければいけなかったけど、制服の問題があったり、あとはまだ自分自身がヒジャブを着ける勇気がなかったりしたので、身につけていませんでした。

両親が自分のタイミングでいいよと言ってくれて、環境がガラッと変わる大学に入る時にヒジャブを着けはじめました。

最初はお母さんや親戚のお下がりの布を使って巻いてました。ただ、講義を受けている時に浮いてしまうんですよね(笑)。布の配色がオレンジとか派手なものだったんで。

──黒いのが普通かと思ってたら、違うんですね。

もちろん黒もあります。私のルーツであるインドネシアは暖かい国なので、ビビッドな色が多いんです。いわゆるエスニック柄もあるし。

だから、自分の中では「ヒジャブ=宗教着」でした。日本人の中にポツンと外国人がいるだけでも目立つのに、そこにヒジャブを着けていたら、そりゃ見られますよね。今だから笑えますけど、当時は落ち着きませんでした。

私が抱えていたモヤモヤは、ハナ・タジマさんのおかげで解消することができました。

──ハナタジマ……?

日本とイギリスにルーツを持つデザイナーの方なんですが、彼女が手がけるヒジャブコーディネートは、配色が日本らしくて、東京の街にいても違和感がないというか。黒やネイビー、ベージュなど、落ち着いた色が多くて、私の中ですごく可能性を感じたんです。

ヒジャブを着けるのが楽しくなっていったのは、彼女のデザインに出会った頃から。自分でどんどんと巻き方もアレンジするようになりました。


──お気に入りのデザイナーか~。ファッションアイテムという側面もあるんですね、ヒジャブって。

私はヒジャブを着けるようになって、より女性らしくなった気がします。

自分の立ち振舞や言葉使いも意識するようになって、相手も丁寧に扱われるようになった。ファッションアイテムというだけでなく、ムスリムのシンボルでもあるので、食事の場面では「お酒や豚はダメなんですよね?」と配慮されるようにもなりましたし。

──その“女性らしさ”が、性差別につながっているという意見もありますよね?

イスラムの本質を知らない人からしてみれば、女性はヒジャブの着用を強制されていると思われがちなので、抑圧的なものとして捉えられているのが現実です。

信仰している人の中には国のルールや社会的立場により強制されて、やむを得ずヒジャブを着けている人もいます。ですが、自らの意思でヒジャブを選択し、その行為に真の価値を見出せたムスリムの方が多いと思います。

私もそのひとりです。

──すごくアホな質問で恐縮なんですが、暑くないですか?

着けはじめて7年経つんですけど、はじめのうちは夏でも長袖を着なければいけないなんて、生きていけるのかな?と思ってました。やってみたら意外と大丈夫でしたよ(笑)。

まあ、日差しが強い地域ではヒジャブがあった方が涼しいというメリットもありますし。言ってしまえば、耐え凌ぐことも信仰としては重要ですからね。

──やっぱりちょっと耐えてる!

耐える、と言っても、ただ盲目的に耐えている訳ではありませんよ。

もし何もないところで「我慢しなさい」と言われても、それは苦しいだけ。ただイスラム教では全ての物事には理由があると教えらています。

例えば、ヒジャブを着けるのは男性を無闇に誘惑しないため、とか。慎み深くあることの美しさを教えてくれています。ヒジャブをはじめ、宗教の教えを深く守ることこそ、人生を豊かで価値のあるものにすると信じているのです。

だから、意味のある忍耐は、むしろ美徳だなと思います。

──なるほど、です。

「喜んでヒジャブを着けて
私は自信を持っている」



──コーディネートにヒジャブを取り込む秘訣ってありますか?

日本のファッションって、可愛いなと思うんです。服の雰囲気もですけど、アクセサリーや小物の使い方も好きで。その可愛さになんとかヒジャブをあわせたい!とかは考えていますね。

例えば、日本のアパレルショップに行ったら、当然マネキンはヒジャブを着けていません。この洋服にどうやってヒジャブを巻いたらマッチするのかな?と頭の中でイメージするんです。

あとは、自分の骨格や顔立ちにあわせて、着る洋服と巻くヒジャブを決めています。そういうことを考えるのは楽しいですよ。

──あらためてなんですが、アウファさんにとってヒジャブって制限じゃなくて、楽しみなんですね。

パズルみたいな感覚ですね。組み合わせることを楽しむという感じかな。

ヒジャブを髪の毛みたいに捉えてるんですよ。その日の気分でヘアスタイルを変えるように、色や長さ、巻き方もアレンジする。

私はどちらかと言うと丸顔なので縦長に印象づけるためにトップを尖らせることが多くて今日は分け目を真ん中からズラして意識的にアシメントリーにすることで髪の毛をなびかせるようなイメージで巻いてるんですがメイクではアンニュイな雰囲気を演出するために黄色のマスカラとあとはそばかすも付け足してみたんですけど、どうでしょう?そばかす、気づいてくれてました?

──メイクにまで注目してなかった。スミマセン……。

いえいえ、ぜんぶ自分が好きでやってることなので。今みたいに勢いに乗っちゃうと話が止まらなくて、よくファッションのことしか考えてないとか言われます(笑)。

ただ、あくまで宗教の教えを守ることが大前提です。私にとっては、やはり信仰が一番大切なことなので、ファッションだけが独り歩きしないように、誠実に日々を過ごしています。


──ファッションと言えば、世界中でモデストファッションが注目を浴びています。

日本ではまだ浸透していませんが……実は日本人のファッションって、モデストファッションとも捉えられるんです。

──!?

トレンドのひとつとして、オーバーサイズがありますよね。イスラム教では、ヒジャブで髪を隠すだけでなく、体のラインを隠すように教えられます。だから、ムスリムの服装は基本的に大きいサイズが多いんです。

偶然の一致みたいな感じですね。今着ているシャツは「オーバーサイズTシャツ」という商品名でした。

──たしかに欧米に比べて、わりと体型をカバーしたり、隠したりする傾向はあるかも。そんな日本のファッション+ヒジャブっていうのが、アウファさんのスタイルなんですね。

簡単に言えば、そんなところです。

ファッションだけじゃなくて、発信も楽しんでます。

Instagramにアップしてるほとんどの作品は、メイクやスタイリング、空間づくりから撮影まで、すべて自分でやることにこだわっています。撮影の回数を重ねるごとに、作品の質は上がっていて、自分には何が足りないのか、どんなことに向いているのか、どんどん見えてくるんですよ。そこに感動とやりがいを感じます。自分自身を知るための「ものさし」として、自撮りは欠かせない。

客観的に見れば、街なかでカメラと三脚を持って自撮りをしているので、変な人ですよね(笑)。


──自分のファッションやスタイルを発信しはじめたのって、何かきっかけがあるんですか?

実は自撮りは小学校の時からやっていました。はじめの頃は、趣味の範囲だったのですが、「発信」を意識するようになったのは、大学生活後半あたりからですね。

大学の専攻が建築だった関係でイラストレーターやフォトショップの使い方や、基本的な写真の構図や色の仕組みを学ぶ機会がありました。本格的なカメラも買って、作品の表現の幅が一気に広がったんですよ。

作品をみんなに見て欲しいという気持ちはもともとあったのですが、私は言葉で何かを発信することに長けおらず……。

ちょうどその頃にInstagramが流行りはじめたんです。写真作品で自己表現をするInstagramの特性が私とマッチしていたので、それ以来はどんどん発信するようになりました。

ハッシュタグとかを使って、いろんな人に見てもらおうって考えましたね。たくさんのユーザーに楽しんでもらうために、自分のフィードの色調を統一したりして、世界観づくりにこだわりました。

多くの人がポジティブな反応をしてくれています。

──今ではInstagramの公式アカウントからもフォローされています。

ありがたい限りです。最初は何かの間違いだと思ったんですけどね。

チェックしてみるとフォロワーの数は多いし、間違いないなと確信できました。お褒めの言葉があったInstagramからのメッセージをスパムだと思っていたのは、本当に申し訳ないです(笑)。

──Instagramでは、どんなメッセージを伝えたいと考えていますか?

いろいろな気持ちがありますね。

「イスラム教は堅苦しい」や「ムスリムは時代遅れ」というネガティブなイメージを持たれてしまうことが多いし、ヒジャブなんて女性への抑圧だとかも言われるし。

ただ私たちは、自らの意思で喜んでヒジャブを着けているし、私の知る限り、ヒジャブを纏う女性って自信に満ち溢れているんですよね。それを知らずに、「その布ははずせますか?」とか言われたり、ムスリム女性の社会的地位がネガティブなものとして話題にされてしまうのは、あまり心地よくないです。

──ごちゃごちゃ言われたくない、と。

自分ではそう表現しないですけど、ニュアンスは合ってます。誰かの人生に首を突っ込んでくる人が必ずいますよね。とくにSNSは表面的なコミュニケーションになってしまいがちだし。

写真でその人がどんな表情をしていても、その人が心の中では何を考えているかなんて、結局その人になってみないと分からないものです。人間に限らず、この世に存在するありとあらゆる生命にも同じことが言えます。自分以外の何者になるかなんて、不可能ですよね。

みんな同じ人間で、それぞれがいろんな気持ちを抱えながら生きている。特別枠なんてないんです。

そして、Instagramを通して、もっとムスリムに対するイメージをフラットにしたいです。街中の本屋さんにいろんな本が並んでいる中で、ムスリムが表紙のファッション誌があったり、ごく一般のコーディネート紹介のコーナーで、ちゃっかりムスリムがいるのもいいですね。そのくらいナチュラルな感じが理想です。

様々な文化を受容できる日本にしたいし、それが実現できる可能性は十分にあるなと思っています。


ラハマリア・アウファ・ヤジッド

インドネシア人の両親をもつ、東京都出身のクリエイター。ヒジャブを使ったモデストファッションを提案し、東京らしいセンスを取り入れたメイクやファッションをInstagramを中心に発信している。スタイリングアドバイザーとしても活躍中。

【Instagram】https://www.instagram.com/aufatokyo/

Top image: (C) Takeyoshi Maruyama

当記事はTABILABOの提供記事です。

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