『梅垣義明60還暦記念リサイタル!』ワハハ本舗の歌姫・梅ちゃんインタビュー「豆の前にシャンソンがあった」

SPICE

2019/6/14 19:00


WAHAHA本舗の歌姫「梅ちゃん」こと梅垣義明。鼻息で豆を飛ばしながら、シャンソンの名曲「ろくでなし」を歌い上げるパフォーマンスで知る方も多いだろう。そんな梅垣が7月より大阪、東京、仙台、名古屋の4都市で『梅垣義明 還暦記念リサイタル!~本物のシャンソンが歌える年になりました~』を行う。

リサイタルでは、オリジナル楽曲を含む名曲が、「鼻から豆」どころではないエンターテインメントとともに歌い上げられる。客席は(爆笑とともに)阿鼻叫喚と定評の公演に向け、意気込みを聞いた。


シャンソンを歌える年になりました


——サブタイトル「本物のシャンソンが歌える年になりました」に込める思いを、お聞かせください。

たしかにサブタイトルは「本物のシャンソンが歌える年になりました」です。でも、歌えるかどうかは分かりませんよ?っていう話です。

——‥‥‥といいますと?

分かってないでしょ?(笑)

——はい。

シャンソンって、間口の広い音楽なんです。誰にでも歌えそうに聞こえるので、趣味ではじめる方も多いですし、女優さんや元宝塚の方もよく歌います。でもシャンソン界の中では、「あなたがこの歌を歌うのはまだ早いわよ」みたいなやりとりが結構ある。個人的には20代、30代、40代と歌い手の年齢によって、歌から感じることも歌い方も変わる。だから年齢は気にせず、自由に歌えばいいと思っています。でも実際に「まだ早い」という人がいる世界で、私は「歌える年齢になりました」ってこと。還暦がどうとか気にしていないけれど、世間的にキリもいいし宣伝にもいい(笑)

——そう思います(笑)。では世間的にみると節目の公演、どのような構成になるのでしょうか?

ベスト盤プラスアルファ、新しいネタですね。過去のネタも、そのままやることはありませんし、条件を整えるのが難しく再演できなかったネタを掘り起こして、いまの僕がやって面白いと思えるものにしたりします。これまで喰始(たべ・はじめ。WAHAHA本舗代表。脚本・演出家)の演出でしたが、今回はすずまさ(放送作家、WAHAHA本舗メンバー)になるので、これまでとは色々違ったものになるでしょうね。

面白いの定義、下ネタの美学


——濃厚な接触の客いじりや下ネタなど、何でもありのステージに見えます。梅垣さんの中で「面白いの定義」はありますか?

難しいですね。「面白い」の答えを出すのはお客さんだから。10年くらい前『La Vie En Rose』を歌いながら、おしっこをするというネタがありました。僕はおむつを履いておき、お客さんには「歌のどこかで、おしっこをします。すると、おむつの前が黄色くなるはずです。もし黄色くすることに成功したら、スタンディングオベーションをお願いします」とアナウンスをする。これを考えたのは、喰でした。おしっこをしたら、スタンディングオベーション。それだけを考えるとありえないことですよね。でも実際にやってみたら、これがウケた。だから「面白い」の定義は難しい。



——では「やるやらない」の判断軸はありますか?

喰は「面白ければ何でもいいじゃないの? それがギャグになっていれば面白ければ」という人です。じゃあ思いついたことを、好き勝手にやるかと言えばそうではない。ノートにアイデアを100個書きとめて、残るのは2つか3つ。

僕は下ネタが好きで、よくやりますが、下品なものにはしたくありません。下ネタの時は、特に考えて考えてやります。酔った学生がパンツを脱ぐのは下品なだけで面白くないでしょう? 品のないことも品よく見せ、下品ではなく面白くできるかどうか。それは演じる人間の(胸に手を当て)ここの問題でもありますね。

「おむつにおしっこをする」というアイデアも、はじめ僕は、面白いか疑問だったし下品だと思った。でも皆は面白いという。皆と意見がずれることが時々あるので、なぜか考えてみて分かったんですよ。やるのは僕。自分のことだから皆よりもっと考えているんです。

おむつのアイデアを聞いた時点で、その歌のあの歌詞のタイミングにちゃんと出せるか、ちゃんと黄色くみえるか、段取りまで我慢できるかとか考えてしまう。結局おむつの中にポリマーを仕込み、ビタミン剤とかを飲んでおしっこが黄色くなるようにして、利尿作用があるようにコーヒーも飲んだりして。歌いながらおしっこした人間に、大勢のお客さんが拍手を贈るって、ありえない状況ですよ。



——ライブだからこそできる、テレビだと難しいパフォーマンスですね。

「テレビでは絶対放送できない」とか「体をはった」と記事に書かれることは多いのですが、あまり好きじゃありません。結果としてそうなっただけ。実際、若手の中には「放送禁止」や「出入り禁止」を始めから狙うやつもいますね。「これは絶対SNSには書かないでください!」とか言うのを聞くと、「じゃあやるなよ!」って思いませんか?

僕もWAHAHAも大人です。プロとしてエンターテインメントをやっています。過去に怒られて出禁になった劇場もありますが、基本はスタッフが完璧に原状復帰しますし、真面目だからこそやれている。大事なのは、「怒られること」ではなくお客さんが笑って楽しんでいるかでしょう。この仕事をやっている人間にとって、お客さんが笑ってる顔ほどの正解もご褒美もありませんから。

鼻ピーの前に、シャンソンがあった


——歌い手としての梅垣さんに、影響を与えたアーティストはどなたですか?

女装してシャンソンを歌うようになったのは、美輪明宏さんのことがすごく好きだったからです。美輪さんの存在自体は小さい頃から知っていましたが、美輪さんのシャンソンを真剣に聞き始めたのは今から30年以上前、25才頃のことです。当時、銀座にはシャンソニエ「銀巴里」(1951年–1990年)がまだあり、「渋谷ジァン・ジァン」でも歌われていました。そこに通い詰めて、美輪さんがすぐ目の前で歌ってらっしゃるのをジッとみて。

——美輪明宏さんの、どのようなところに魅力を感じますか?

まず美輪さんの歌には、男だから歌える力強さがあります。失礼な言い方に聞こえるかもしれませんが、美輪さんは女ではありません。でも男性でもありません。セックスはもう関係ない。コンサートで美輪さんがステージに登場すると、それは男でもなく女でもなく、美輪明宏なんです。けれど歌には男性だからこその力強さがあり、彼女が生きてきたバックグラウンドがあり、歌に説得力がある。NHKの紅白歌合戦で若い世代にも知られるようになった「ヨイトマケの歌」(1966年発表のヒット曲)。親父かお袋が口ずさんでいて変な歌だと思いながら聞いていましたが、子ども心にも強く残りました。本当にいい歌を歌っておられますね。



——美輪明宏さんに魅了され、どのような経緯でいまの梅垣さんのスタイルに至ったのでしょうか。

最初は、女装をして普通にシャンソンを歌っていました。でも「誰も聞いてくれんねえ!」ってことで、鼻から豆を飛ばしたりしながら歌うようになったんです。

——「豆飛ばしたい」の前に、シャンソンがあったのですね!

そうですよ! シャンソンありきですよ!(笑)

——たしかに生歌だと知った時は大変感動しましたが、てっきり……。

女装して歌うスタイルだと、ドラァグクイーンの方々のショーのように口パクを想像する方も多いかもしれません。ゲイバーだと下品な下ネタも多い。あれはお酒を飲んでいるお客さんの前にやる、愛すべきスタイルです。でも僕の場合、劇場やホールでみせる別物です。下ネタは多いですが下品にはしたくないし、歌はきちんと歌いたい。「これだけ歌えて、こんな無茶苦茶なことをするのか!」というギャップが面白いんです。



——7月のリサイタルも楽しみにしています。最後に、還暦を迎えて思うことはありますか?

還暦になったから人間が変わる、というものではないんですよね。それでも学生時代の同級生は、リタイヤして悠々自適な暮らしをはじめたり、嘱託で偉くなったり、天下りしたり。いよいよ好きなことをやろうとしている人がたくさんいます。どの生き方も素晴らしいけれど、僕はずっと好きなことをやってきて、60なっても好きなことができています。60の男が裸になって笑ってもらえるなんて、なかなかないですよ?

WAHAHAでは、久本も柴田も60歳。これからもバカなこと、面白いことをやりたいと話しています。いつまで裸になって笑ってもらえるかわかりませんが、大人になったらやらなくなることを、やってるのってカッコいいじゃないですか。ですからまずは、これからも続けていくことが今の目標です。

『梅垣義明 還暦記念リサイタル!~本物のシャンソンが歌える年になりました~』は、7月13日(土)大阪・森ノ宮ピロティホールを皮切りに全国4都市で開催される。



当記事はSPICEの提供記事です。

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