新社会人のための行動経済学 第10回 お金の相対性とは? その1万円は高いですか? 安いですか?


例えば皆さんが交通違反で罰金1万円を払うことになったとします。時給1,000円で仕事をしている人は「労働10時間分も払わなければならない」と重く負担を感じることになるでしょう。

ただし、先日両親に進学や就職のお祝い金として9万円をもらっていたと思えば、少しは傷が癒えるかもしれません。これを「お金の相対性」といいます。

○お金の価値を冷静に見極める

同じように5万円の商品が4万9,700円と300円引きで販売されていても、それほど安くなっている印象を持ちませんが、500円の商品が398円で販売されていると非常にお得だと感じるでしょう。相対的に判断している典型的な例です。

お金を貯めたり節約したり、やりくり上手への近道は、私達はこのように相対的に判断しがちであることを理解し、できるだけお金の価値を冷静に見極めることです。

人生で最も大きな買い物といわれるのが住宅です。エリアにもよりますが、住宅購入額は一般的に3,000万円や4,000万円といった金額となります。そして、多くの場合、その金額に登記などの費用、税金や火災保険料などが含まれています。火災保険は一般的な補償プランで提案されていることがほとんどです。

よって、補償プラン内容を見直す、または違う保険会社の見積もりを取ってみるなど、少しの手間をかけることで、数万円単位で保険料を下げることができる場合がありますが、多くの人が「それほど大きな違いはない。面倒くさい」といった具合です。

その後、いざ引っ越しとなると引っ越し業者の見積もりを3,000円でも5,000円でも下げようと必死になったりもします。お分かりのように引っ越し業者の見積額を下げるより、明らかに火災保険の保険料を下げた方が効率的ですよね。

火災保険が住宅購入額の3,000万円に含まれていたため、「相対的に」数万円の節約が「たいした違いはない」と判断したためです。相対的に捉えず保険料を下げた金額で何が購入できるか? 何時間分の労働に匹敵するか? 別の判断基準を用いてお金に関する意思決定ができれば、どんどんムダが減り、お金も貯まりそうですよね。
○お金の払い方の落とし穴

「1つの基準点で相対的に判断せず冷静に」これが上手なお金の管理につながりそうですが、それを妨げるものの1つに「お金の払い方」があります。

現金で一括払いをすると、その分、お財布からお金が出ていくため、お金の価値をより感じやすいのですが、近年普及している電子マネーやキャッシュレスなどで支払うといかがでしょうか? なかには、その場でお金を払っている感覚がないので、どんどん買い物をしてしまうという人もいるかもしれません。

高速料金もその典型例の1つです。実際に現金で支払っていた時に比べETCを搭載した車が増えていますよね。その場で払う必要がないため、現金でその都度支払う方式に比べると高速道路を利用するという心理的なハードルが随分下がりました。

また、10枚購入すると1杯分サービス付きのコーヒーチケットなどを購入したことがありませんか? こういう場合もチケット購入後は、つい頻繁にコーヒーを飲みにお店に足を運んだり、その逆にチケットの有効期限が切れてしまったり、1杯分サービスに惹かれてまとめて購入した結果、ムダ遣いにつながってしまうことも考えられます。

クレジットカード決済やキャッシュレス決済など使い方によっては大変便利ですが、支出を見直し節約に注力するということであれば、その都度お金を払った方がよさそうです。
○授業が毎回現金払いの場合

こういった心理を逆手にとれば、通常一括で払うものをあえて毎回現金払いにする、または毎回支払っているという感覚を重視するのはどうでしょうか? 例えば学校の授業料などがそれに該当します。

義務教育が終わり、高校、大学と進学するにつれ、授業中の居眠りや授業をサボるということを覚えた人も多いのでは。筆者にとっても耳の痛い話ですが、それぞれ1回の授業にも一定の授業料が生じています。とはいえ、例えば大学の入学金や授業料は年度や半期ごとに前払いをしますので、まさに上記のコーヒーチケットのような心理が働いてしまい、つい1回の授業を疎かにしてしまうことも。

ある私立大学の4年間の学費を、必要単位数などを用いて1コマあたりの授業料を算出したことがありますが、1コマ5,000円を超えました。毎回授業を受けるために5,000円を払うことはできませんが、教室に入る際に5,000円分のチケットを購入して入室する感覚を持てば、きっと居眠りなどせず、集中して授業を受けることができそうですね。そして1コマあたりの単価を下げるためにはより多くの授業を受けて勉強しようということにつながります。

今回は相対的な評価でお金の価値も変わり、払い方次第で支出への痛みも変わるという話でした。なにやら、つい嫌なことを先送りにしたり、他の人と比較をして優越感や劣等感を抱いたり。私達の生き方にも通じるような話です。ぜひ他人と比較することなく自分自身を大切にしたいですね。

○著者プロフィール: 内山 貴博(うちやま・たかひろ)

内山FP総合事務所代表取締役ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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