安倍外交はアメリカとイランを仲介できる?求められる日本の役割とは

AbemaTIMES

2019/6/13 17:25




 「中東地域では緊張の高まりが懸念されている。国際社会の注目が集まる中において、この地域の平和と安定に向けて日本としてできる限りの役割を果たしていきたいと考えている」。そう述べてイランに出発した安倍総理。 日本の現職総理がイランを訪れるのは1978年の福田赳夫総理(当時)以来、41年ぶりとなる。

背景にあるのは核開発を巡るイランとアメリカの対立だ。先月、制裁を強めるアメリカがイラン近海へ空母部隊を派遣すると、イランは核合意の履行の一部停止し、事実上の濃縮ウラン増産を通告した。さらにアメリカが爆撃機をペルシャ湾に面したカタールに送り込むなどしたため、緊張が一気に高まっている。



 40年ほど前までは親米国家だったイラン。しかし1979年、市民革命によって親米的な国王が追放、ホメイニ師が最高指導者になると、イスラム法に則った国家へと生まれ変わった。その後、首都テヘランのアメリカ大使館占拠事件が発生するなど、アメリカとの関係は急速に悪化。2002年1月にはブッシュ大統領がイラクと北朝鮮ともに、核開発問題を抱えるイランを名指し、「悪の枢軸」と批判した。

2015年に入ると、核開発を制限する代わりに制裁を解除することでアメリカ、イギリス、フランスなど6か国と合意(イラン核合意)。しかし去年5月、トランプ大統領は一方的に核合意を離脱。「もしイランの政権が核兵器への強い願望を持ち続けるなら、今までにないほどの問題を抱えることになるだろう」と強く牽制した。



 イラン情勢に詳しい慶應義塾大学の田中浩一郎教授は「トランプ大統領はもともとイランのことが嫌いだったのだろうし、オバマさんのことも大嫌い。だから合意そのものを毛嫌いしていることは間違いない。しかし金正恩委員長に対する評価が180度変わったように、イラン側から電話がかかってきて"ちょっと会いませんか"と言われればニコニコ顔で急に持ち上げるようなことになるかもしれない。もっともイランはそんなことしないが…」と話す。

「ただし、地上侵攻までして占領するようなことはトランプさんも考えていないと思う。ただ、イランが暴発するか、偶発的な衝突を拡大させ、何かしらの理由をつけて徹底的に叩くことは考えているだろう。その場合、空爆、巡航ミサイルの類が使われる。そうなれば、体制に嫌気がさしているから国民によって体制が転覆し、親米政権樹立、もしくはワシントンの覚えめでたい反体制派の連中を投入することで事態は収まるというのがボルトン辺りの考えだ。ただ、それではイラク戦争の時と変わっていない。トランプ大統領は寝ぼけているとしか思えない」。

■アメリカとイランに挟まれた日本の役割とは




 他方、石油の多くを中東に頼ってきた日本とイランは、古くからの友好関係にある。国交樹立は1929年にさかのぼり、1953年には経済制裁下のイランから出光興産が石油を輸入した「日章丸事件」が発生。1978年の福田総理に続いて、1983年には安倍晋太郎外務大臣も訪問している。実は、このとき息子である安倍総理が秘書として同行していた。

また、1980年代にはNHKの連続ドラマ『おしん』がイランで大流行。1990年代に入ると出稼ぎで来日するイラン人が急増、偽造テレホンカードを販売する人が現れたことは社会問題にもなった。

田中氏は「イスラム教にはスンニ派とシーア派があり、イランは後者だ。1979年のイラン革命と、1980年代に中東に展開していたアメリカ軍に対する攻撃を行ったことで敵視されているが、その後の様々なテロ活動などは多数派のスンニ派の過激派が引き起こしている。誤解を招きがちなのは、最高指導者であるハメネイ師(イスラム法学の最高権威)が絶対君主のような力を持っているわけではなく、三権分立は日本よりもむしろしっかりしているといえる。確かハメネイ師は国軍の統帥権などを握ってはいるが、国内の政治闘争を続ける派閥間の調整役を担っている」と説明。

日本とイランの関係については「トルコもそうだが、この地域はロシアに散々いじめられてきたので、日露戦争でアジアの国である日本がロシアを負かしたことで関心が高まった。第2世界次大戦で敗北し焼け野原になったこと、広島と長崎に原爆を投下されたことも学校教育できちんと教えているし、戦後、世界第2位の経済大国になり、優秀な工業製品を安く作ってきたことが非常に尊敬されている。ちょうどイラン・イラク戦争の末期、戦災で一部焼け野原になったものの、国際社会はイラクを止めてくれず、むしろアメリカはイラクの後ろ盾になってイランを倒すために支援をしているのではないかと疑ったぐらいだ。そんな時、耐えて、耐えて、耐えてという自分たちの心情・状況と『おしん』を重ねていたようだ。引き続き日本に対してビジネスの期待が強いことは間違いない」と話した。



 そんな中での安倍総理の訪問。アメリカ国務省のオルタガス報道官は先月30日、「我々はイランが核兵器を手にし、世界中のテロ組織を助けることを望んでいない。日本がそのメッセージを強調してくれるのであれば大歓迎だ」と安倍外交に期待感を示してもいる。

北海道大学の鈴木一人教授(国際政治学)は、トランプ大統領の視点に立って「イランに"交渉しませんか"と持ちかけさせて、アメリカとの交渉を開始させる」を"最上"、「交渉開始には至らないが、橋渡し役として両国に認められ、今後も仲介を続ける」を"中"、「両国の緊張緩和を実現。具体的にはペルシャ湾の米軍を攻撃しないという約束をイランから取り付けること」を"合格"と予測する。

田中氏は「少なくともイラン側が電話をかけることはないだろうし、両国が交渉をしようという準備段階に入ることも遠い話だ。そうなると緊張緩和が考えられるが、アメリカ軍の動きなどを見ていると、むしろ口実に使っている感じがする。もともと空母は定期的に交代するものだが、ボルトンさんがあえて"今送らないといけない"という発表をしている。また、イラン側からすれば、アメリカに"悪かった。核合意に戻る。制裁も止める"と言わせることが成功だ。今の状況ではそれは起こり得ない。次に考えられるのは、アメリカに何を言われようと日本は石油を買うと言うこと。これもハードルが高いが、分量はともかくとして買うことは極めて重要だ」と説明。

「日本はサウジアラビアやアラブ首長国連邦などとも緊密な関係を築いている。イランとサウジアラビアをバランスさせるというよりも、ある意味で八方美人的に付き合っていくことが問われている。日本がアメリカとイランに交渉の席につくよう諭し、交渉を成立せるということは今の状況では難しい。しかしこの緊張状態はアメリカが人為的に作り出したものなので、少し正常な状態に戻すということであれば可能性はあると思う」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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