離婚した妻の「復縁」の迫り方がホラーすぎる。ポストに婚姻届け、深夜の待ち伏せ...

女子SPA!

2019/6/13 15:45

【ぼくたちの離婚 Vol.12 完璧なあなた、勝ち組のわたし #3】

東大出のITベンチャーCEO・森岡賢太郎さん(仮名/現在38歳)と真希さん(仮名/現在36歳)は2012年に出会い、2年間交際して2014年に結婚した。しかし2017年5月、専業主婦になった真希さんが3人の医療関係者と不倫していることが発覚する。ストレスで7kgも痩せてしまった森岡さんだったが、探偵に依頼して不倫の証拠をつかみ、何食わぬ顔をして家を出た。2017年6月23日、金曜日の朝である。

◆自分の家宛てに内容証明郵便

「その日のうちに内容証明郵便が真希の手元、つまり僕のマンションに届くよう、弁護士に手配しておきました。こちらは不貞行為をすべて把握している、ついては離婚および慰謝料を請求するとともに、6月30日までに自宅からの退去を求める。そんな内容です」

決行日をこの日に決めたのには、理由があった。

「まず、この日が会社の給料日だったこと。もうこれ以上1円たりとも真希に金を渡したくなかったんです。そして、この日は真希のパートの日で、13時から20時まで真希は動けなかったこと。内容証明郵便を受け取って事態を把握しても、取れる行動を制限することできたんです。彼女がどこかに相談するにしても土日を挟みますから、月曜までは時間が稼げます」

出社した森岡さんは、社員数名を呼び出した。

「真希から僕に電話がかかってくることに備えて、僕宛ての電話を取り次ぐ可能性のある社員に事情を説明しました。もし真希が電凸したり、会社に押しかけたりしてきても、僕は会社にいないと言うようにと」

◆不倫した妻の驚くべき要求

森岡さんはその日のうちに携帯を解約し、真希さんからの直接連絡を完全にブロック。しばらくの間、会社から100メートルほどの距離にあるウイークリーマンションに拠点を構えることにした。真希さんがコンタクトを取れるのは、内容証明に連絡先が書かれた森岡さんの担当弁護士だけとなる。

「予想どおり、真希は弁護士のもとに電話をかけ、大量のメールを送ってきました。その内容は全部転送してもらいましたよ」

メールにはどんなことが書いてあったのか。

「最初のうちは『あなた(弁護士)とは交渉しない。本人としか話さない』といった強硬な内容でした。しかし次第に、わりと事務的なカネの話、財産分与の話を持ちかけてきましたね。うちの会社の株をよこせとか。僕のカネを散々使っておいて、よく言えるなと呆れましたよ」

しかし月曜には文面のトーンが変わってきたという。

「何千字にも及ぶ直筆の手紙と超長文のメールが弁護士さんの事務所に届いたんです。情に訴えかける泣き落としの内容で、昔は良かったね、出会った頃に戻りたい、後悔しています、帰ってきてほしい、ひとこと言葉を交わしたい、って。もちろん、こちらは直接会う気も話す気もありません。それから1週間もかからず離婚届に署名をもらい、離婚が成立しました」

◆猫と金目のものが持ち去られていた

ただ、迷いがゼロだったわけではないという。

「やっぱり情はありましたから。向こうのお父さんとは仲良くしていたし、彼女がさびしがっていたことは事実なので。だから内容証明を出してからの1週間ほど、僕の精神状態はかなり荒れていました。会社で打ち合わせをしていても、突然涙が出てくるんです。打ち合わせ相手には『季節外れの花粉症で』とごまかしていました」

しかし、真希さんの退去期限である6月30日の2日後である7月2日、退去が済んだかどうかを確認するためにドアを開けた森岡さんは、離婚が正解だったと確信する。

「まるで……山賊が襲撃したあとのようでした。飼っていた猫と金目のものが綺麗さっぱり持ち去られていたんです。僕の私物も含めて。昔は良かったねとか、出会った頃に戻りたいとか、そんなの全部ウソですよ。ああ、この人はこの先の人生、ずっと同じことを繰り返すんだろうなと思いました」

◆ポストに入った婚姻届、深夜の待ち伏せに戦慄

その後の数日間はまさにホラーでした、と森岡さん。

「まずは7月3日の夜です。真希からマンションのカードキーを返却してもらうためにポストに入れておいてほしいと弁護士を通じて伝えていたんですが、ポストの中にはカードキーと一緒に長い手紙と……婚姻届が入っていました。既に離婚は成立していましたから、離婚届じゃありません。婚姻届です。証人欄には真希の両親の名前。僕ともう一度やり直したいということです。背筋が凍りましたね」

翌日の7月4日には、さらなる恐怖が待ち受けていた。

「離婚した僕を励まそうと、友人が飲み会を開いてくれたんですが、深夜の12時半頃にマンションのエントランスに入ると、ロビーに真希が待ち構えていたんです。住民しか入れないスペースですから、住人の後ろにピッタリくっついて入ったんでしょう。深夜までずっと待ち続けていたわけです。通報されたっておかしくない」

真希さんが退去前に弁護士立会いのもとサインした契約書によれば、真希さんが森岡さんに直接接触するのは明確な契約違反だった。

「真希の姿が視界に入った僕は、反射的に“刺される!”と思いました。とにかく人のいる場所に逃げなきゃと、一目散にマンションの外に逃げ出しましたね」

「待ってー!」と追いかけてくる真希さん。逃げながら、話に応じる気はないと冷徹に言い放つ森岡さん。森岡さんは弁護士に電話を入れるが、刑事事件ではないので警察は介入できない。やむをえず、森岡さんはマンション前で真希さんと30メートルほどの距離を空け、そこから近づかないようにと真希さんに告げる。

「マンション住民は奇異の目で見ていましたよ。深夜に変な距離を空けて男女が大声で話してるんですから。『やり直せないのー?』『嫌ですー!』って。彼女は自分の不倫を認めていて、僕に落ち度がないのも了解しています。だから『さびしかった』の一点張り」

しかし金目のものを洗いざらい持ち去っている手前、森岡さんは真希さんの言葉に何の説得力も感じられない。

「直接接触は契約違反だとはっきり言ったんですが、真希は『契約なんてどうだっていい、法律なんてどうだっていい!』と言い放ちました。あれは白けましたね。トレンディドラマじゃないんだから……」

◆ちょっとでも気になることがあるとダメ

結局、森岡さんは慰謝料満額の500万円を取ることができた。が、探偵代と弁護士費用ですべて飛び、マンションを引き払って一人暮らしするための引っ越し代分は足が出てしまったという。

「真希との離婚以来、誰と交際しても、ちょっとでも気になるところがあると、すぐダメだと思ってしまうんです。特にお金のことは。直近の彼女からも、誕生日に何が食べたい? と聞かれたので、うなぎと答えたら、露骨に嫌な顔をされました。理由ははっきり言わなかったけど、値段が高いからですよ。その瞬間に別れようと思いました」

仕事以外に女性とふたりで会うのが怖い、という森岡さん。再婚の可能性を聞いてみた。

「再婚ですか。授かり婚以外には、ないでしょうね」

◆「私は勝ち組」と言っていた妻

離婚の顛末を一通り話し終えた森岡さんは、改めて真希さんの人柄に言及した。

「結婚後は、ことあるごとに私は勝ち組だと言っていました。自分と他人とを比較して、私のほうが勝っていると」

真希さんはある時森岡さんに、知り合いの女性が夫とチェーンの安居酒屋で割り勘飲みをしていると話してきた。

「真希はその夫婦をバカにしながら、私はそんな店に絶対行かないし、あなたとは一度もそんなことをしなかったし、そもそも割り勘なんてありえないよね、と僕に同意を求めてきたんです。僕は、なんてさもしい人間だろう、そんなこと言わなくていいじゃないかと思ったんですが、言うと怒るので言いませんでした。意見すれば必ず荒れるし、黙っていればとりあえず丸く収まるので」

東大卒でITベンチャー企業のCEO、聡明で仕事ができ、平均的なサラリーマンよりはずっと高い収入を得ている男と結婚した自分。ある価値観に照らし合わせれば、たしかに「勝ち組」だ。

「『私は理想的な男を手に入れた』といった意味のことを、よく口にしていました。多分、外でも言っていたでしょうね。夫、つまり僕はわがままも聞いてくれるし、怒ったりしないし、借金もギャンブルもない、変な酒の飲み方もしないと。彼女にとって僕は完璧な夫に見えたのかもしれません。もちろん、僕自身は自分が完璧だなんて、一度も思ったことはありませんが」

そういえば、真希さんは森岡さんとのセックスに点数をつけ、毎度厳しく“評価”を下していた。

「セックスについては、彼女にとっての“理想”があるように感じました。その“理想”がなんだったかは、最後までわかりませんでしたが……」

理想的な男、点数、評価――。なるほど、「60点」には「達成度6割」以外にもうひとつの意味がある。「あと40点あれば100点、すなわち完璧(理想的)」だ。足りない40点分を埋めるのは何だったのか。誰だったのか。

◆孤独で完璧な走者

一連の離婚プロセスを聞いていると、森岡さんの精神力にはつくづく恐れ入る。稼ぎを搾取され、セックスを強要され、激しいモラハラ被害に苦しめられて疲弊を極めていたにもかかわらず、相手に悟られることなく秘密裏に不倫の証拠を集め、その間は何食わぬ顔で生活を共にし、一気に畳みかけて、相手を詰めたのだ。証拠集め中に7kgも体重が減った事実が、当時の森岡さんのひどい精神状態を物語る。しかし、森岡さんは折れなかった。弱音を吐くことも音を上げることもなく、独力で耐え抜いた。

「官僚だったうちの親父は、どこにも寄り道しないでまっすぐ家に帰り、家で酒を飲みながら職場の愚痴を吐きまくる人間でした。僕はそれがすごく嫌で、何度も家出したんです。僕は親父を反面教師にしていました。社会人になって結婚し家庭を持っても、仕事の愚痴を家庭に持ち込むのだけは絶対にやめよう。そう心に決めていたんです」

そう話す森岡さんは、過酷が極まる水泳・自転車・長距離走を孤独に、黙々とこなすトライアスリートそのものだ。38歳という年齢、かつ経営者と二足のわらじで、完走するだけでなく好成績を叩き出すには、どれほど自分を律し、追い込み、努力すればいいのだろう。不言実行、鉄の精神力。常人には計り知れない所業である。

「この会社に参加した頃、大変な修羅場をいくつも乗り越えたんです。最初の2、3年は毎日が綱渡りでしたね。それで鍛えられたのかもしれません。君は粘り強い、我慢強いと、うちの幹部からもよく言われます。物理的な痛みにも異常に強いみたいで、爪を割った時に麻酔なしで処置した時は、医者からも『信じられない』って驚かれました」

◆「私がいらないくらい、あなたは強い」

最後に、森岡さんは思い出したように付け加えた。

「ああ、そうだ。真希にも言われましたよ。結婚2年目くらいかな。『あなたは、私がいらないくらい強い。強すぎる』って」

真希さんが「さびしい」と幾度も意思表示をしたのは、森岡さんの帰りが遅かったからではなく、森岡さんが辛さや痛みを自分だけで抱え込み、家庭に持ち込んでくれなかったからなのだろうか。今となっては、それを確認する術もない。

内容証明郵便を受け取った真希さんが森岡さんに宛てた手紙には、「昔は良かったね」と書かれていた。その“昔”とは、いつのことだろう。低体温症で命の危険に晒されていた森岡さんを、真希さんが救った時のことだろうか。森岡さんはその一件で、真希さんとの結婚を決意した。真希さんもまた、そこに運命を感じていたのかもしれない。

――私がいなければ、“完璧”なあなたはそこで終わっていた。あなたに足りない40点分を埋めて“完璧”に仕上げるのは、いったい誰の仕事かしら?

洗濯物がうまく畳めなくて錯乱した真希さんの発した言葉が、ふたたび思い出される。

「あなたにとって、私はなんなの?」

<文/稲田豊史 イラスト/大橋裕之 取材協力/バツイチ会>

【稲田豊史】

編集者/ライター。1974年生まれ。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。著書に『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)。「SPA!」「サイゾー」などで執筆。

【WEB】inadatoyoshi.com

当記事は女子SPA!の提供記事です。

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