ジョイマン高木の「男はガマン、女はウーマン」 第9回 やりたい仕事じゃないので毎日が不安です


お笑いコンビ「ジョイマン」の高木晋哉が、ちょっぴりほろ苦く、そしてどこかほっこりする文章で綴るこの連載。読者のお悩みにジョイマン高木ならではの視点で答えてもらいます。
○今回のお悩み

「4月から第15希望くらいの就職先で働いています。やりたい仕事じゃないので毎日が不安です。元気づけてください」(20代会社員男性)

はじめまして。ジョイマンの高木晋哉です。これは多くの方が悩んでいる問題だと思います。20代の夢見る若者が、これからの長い人生でやりたくはない仕事をして生きていかないといけないとなったら、その不安の大きさは計り知れないと思います。

僕は21歳の時にジョイマンになりました。人前で「ありがとう オリゴ糖」や「ジンベイザメ 湯冷め」や「なななな なななな 7の次8」と言う仕事です。第1希望の仕事です。なので、はばかりながら第1希望の職に就職できた人間の意見を言わせていただくと、第1希望だろうが何であろうが、どんな職業に就いたとしても、純粋に自分が好きなことだけをやって生活できるだけのお金を稼げるようになれる人というのは、なかなかいないような気がします。いや、もしかしたら1人もいないかもしれません。

なにやら昨今、誰もが好きなことだけで稼げるようになれるという風潮が流れまくっていますし、逆に現実とのギャップに悩み落ち込んでしまう人も多いのではないでしょうか。

僕たちは2008~2009年のショートネタブームの時期に沢山の番組に出させていただききました。ショートネタブームが落ち着いてきてから、ネタしか武器がなかった僕たちは、急激に仕事が減っていきました。そんな折、以前に旬の芸人として出演させていただいていた番組に久しぶりに呼んでいただいて、現場に行ったら、本編の出演ではなく前説の仕事(観覧が入っている番組で、収録前に客席の空気を温める仕事。オンエアにはのらない)だったことがあります。

その時は、自分たちが一発屋だという現実を改めて目の前に突き付けられたような気がしました。前は本編に出ていたのに、今は前説をやっている。前説を経験してから本編に出られるようになるのは普通ですが、その逆。時計の針が逆にグルグル回り、何だか自分だけが退化していくようで、とても恥ずかしくなりました。情けなかったし、戸惑いました。どんな顔で前説をすればいいのだろう。お客さんに馬鹿にされるかもしれない。しかしそこで、ちっぽけなプライドを守るために「やりたいことと違う」と思ってふてくされていようものなら、今はもうこの仕事を続けていられなかったかも、と思います。

雑念を捨て、覚悟を決めてやってみた前説の仕事は、とても勉強になりました。ジョイマンは2008年、テレビはおろか劇場の前説もやったことのない状態から、急にテレビに出させていただけるようになったのですが、時が経ってから、テレビ番組や劇場が表に出ないどんな人たちに支えられて、どのように組み立てられているのかというのを、スタッフさんと演者さんのちょうど中間の立場で感じられたのは、本当に良い経験になりました。僕はこの経験があったから、改めて他の人の仕事を尊敬し、改めて自分の仕事も好きになりました。しかもテレビの観覧のお客さんというのは、とても反応が良くて温かいんです。よく笑ってくれるので効果的なリハビリにもなりました。

物事には順番というものが確かにあるようです。美しいダイヤモンドの本当の価値を知るには、その原石を探し出し、そして磨き、キラキラと輝かせる作業があることを身をもって感じることが大切。もちろんあえて遠回りをしろということではないですが、必ずしも最短距離を行くことが正解なわけではないようです。仕事でも何でも、何らかの理想にたどり着くには、それなりの過程や道順というものが意外に大切なような気がします。

20代会社員男性の就職先は、もしかしたらやりたい仕事と何の共通点もないのかもしれませんが、20代会社員男性がやりたい仕事をしっかり遠くに見据えていれば、何がどう役に立つかはわかりませんので、僕はその今やっている第15希望の仕事を本気で頑張ってみて損はないのかなと思います。あなたなりの道順で、素敵な景色を見ながら、いつの日か理想の仕事にたどり着けることをジョイマン高木は祈っています。

○筆者プロフィール: 高木晋哉

お笑い芸人。早稲田大学を中退後、2003年に相方の池谷と「ジョイマン」を結成。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。趣味は詩を書くことで、自身のTwitterでの詩的なツイートが話題となっている。

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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