雨のパレード「第2章」 ーー様々な変化を経たバンドの現在地を福永浩平に問う

SPICE

2019/6/13 12:00

今年初めに福永浩平(Vo.)、山﨑康介(Gt./Syn.)、大澤実音穂(Dr.)の3人体制となった雨のパレードだが、彼らの第2章は体制の変化だけに留まらなかった。今年3月、約1年の沈黙を破り世に送り出した「Ahead Ahead」では、蔦谷好位置、小林うてなといった各シーンで話題のクリエイターたちとの華麗な共演をみせている。雨のパレードらしさをそのままに、楽曲制作の過程や、ライブに向けた取り組みに力強いアップグレードを施した彼らは、今まさに「向かうところ敵なし」である。「今、曲を作るのが楽しくてしょうがないんですよ」 そう言って瞳を輝かせる福永に、バンドの現在地を問う1年ぶりのインタビューを敢行した。


—— 2018年のアルバム『Reason of Black Color』以降、バンドの体制など様々な変化を経た雨のパレードですが、1年ぶりの新作「Ahead Ahead」を聴いて、解き放たれたような軽やかさを感じました。共同プロデューサー・蔦谷好位置さんとの制作はいかがでしたか?

今までも名義上、プロデューサーという立ち位置だった方は何人かいたんですが、実質的にはメンバーですべてやってきたところがありました。僕らの担当ディレクターから「このタイミングでヒットを経験したプロデューサーと一緒にやってみるのはどうか」という提案があったので、インディーズの頃からやってみたいと思っていた蔦谷好位置さんとご一緒させていただくことになったんです。蔦谷さんのスタジオで僕らメンバーが制作合宿で作ったデモを聴いていただいて、「Ahead Ahead」が選ばれたという流れですね。メンバーで行った制作合宿で作っていた段階ではアレンジがまったく違ったんですが、僕たちの視野を広げてもらうためにも蔦谷さんにガラっと変えてもらいました。

—— 具体的には、メンバーが作り上げたデモからどのように変わったのでしょうか?

デモではトラックがもっとモードな雰囲気だったんですが、蔦谷さんから「4つ打ちにするのはどう?」と言われたので「アフリカンビートが好きなので、その方向性で作ってみたいです」と提案して、4つ打ちとアフリカンビートを合わせてみたら全然違うものになりました。シンセがかなりEDM寄りなんですけど、僕は普段EDMをあまり聴かないし、こういうギターリフも自分じゃ書かないんですよね。そんな僕でも「いい曲だなぁ」と思えるのは、さすが蔦谷さんの手腕です。

雨のパレード 撮影=日吉“JP”純平
雨のパレード 撮影=日吉“JP”純平

—— これまで雨のパレードはメンバー全員でスタジオに入って楽曲を作っていらっしゃいましたが、蔦谷さんとの制作を経て、曲作りの方法に変化はありましたか?

今までの僕らにとってはセッションしながら曲を作るのが一番早くて、「Ahead Ahead」の原型ができた合宿では3泊4日で20曲近くのデモをワンコーラスずつ作ったんですけど、3人体制になって物理的にセッションでは作れなくなったんです。以前から僕はパソコン上で曲を作るDTMにも興味があって、少しずつ機材を揃えていたので、そのタイミングで蔦谷さんと作業をさせてもらっていろんなコツを勉強させてもらいました。セッションだと僕らの手の本数で鳴らせるだけの楽器しか使えないけど、DTMで作れば必要な音を自由に重ねることができるのは大きな利点です。

—— この曲の歌詞はどのタイミングで書かれたのですか?

3人体制になるときに書いたので、「第2章に向けてギアを切り替えて走っていくぞ」という僕たちの心情が反映されています。蔦谷さんから「歌詞の言葉尻を合わせると、全体にグルーブが生まれて覚えやすくなるよ」と言われたんですけど、韻を踏むことってきっと誰もが曲を作り始める頃にはやっていることなんですよね。僕は最近それを忘れていて、歌詞じゃなく文章になっていたかもしれないと気づいて、この曲の歌詞は珍しく3回くらい書き直しました。



—— これまで雨のパレードに持っていた、どこかダークで深みのある「陰」のイメージと「Ahead Ahead」は少し違っていましたが、ここまで「陽」に振り切った曲でも雨のパレードらしさが健在なのは、バンドとしてさまざまな曲調や制作方法を試してきたがゆえなのでしょうね。

これまでも「陰」と「陽」どちらにも振り切ってきたつもりですけど、今回の「Ahead Ahead」が飛び抜けた「陽」なら、カップリングの「/eɔː/」が「陰」ですね。「/eɔː/」は僕が初めてDTMでデモを作ったんですが、これもまたすごく悩んだ曲です。「Ahead Ahead」は方向性が明確だったけど、「/eɔː/」は僕の中で「鏡花水月」をテーマにしていて、聴いた人が「この感情はなんだろう?」と思うような曲にしたくて。言葉にできない感覚を音にすることを突き詰めたので、意味のない「/eɔː/」(エオー)というタイトルにしました。オーストラリアのエレクトロユニットHVOBや、Four Tet、アイスランドの音楽など僕が気になっていることを参考に、これまでやりたかったことをいろいろ試しました。作り方や使っている音は今までと全然違うんですけど、結果的に雨のパレードらしい曲になったのが不思議です。



—— 今作には「Ahead Ahead」「/eɔː/」に加え、既出曲のリミックスが3曲収録されました。それぞれを個性的な面々がアレンジされていますね。特に4曲目「Reason of Black Color [Remixed by Utena Kobayashi]」の、オリジナルからの変貌ぶりに驚きました。

小林うてなさんはBINDIVIDUALというレーベルをやっているんですが、僕はそのもう一人のレーベルヘッドのKult Cutzさんの美容室に行っていて、彼とよく音楽の話をしていたんですね。Kult CutzさんはFlumeなどが所属するレーベルFuture Classicが好きなかたで、そういうレーベルを始めるにあたって第1弾として小林うてなさん率いるユニットBlack Boboiが誕生したんです。渋谷WOMBでBlack Boboiのライブを観たときに衝撃を受けて、その後うてなさんにお会いした時に「僕らの曲リミックスしてもらえないですか?」とお願いしたら快諾してくれました。うてなさん的にこれは「ZEDDみたいなポップな感じ」のリミックスらしいんですが、めちゃくちゃかっこいいですよね。



—— 5曲目の「Hometown feat. TABU ZOMBIE (from SOIL&”PIMP”SESSIONS)」 [Remixed by 荘子it feat. Dos Monos]もまた、良い意味でDos Monosの楽曲かのような仕上がりです。

Dos Monosの荘子itはMONJOE(yahyel/DATS)の繋がりでよく遊んでいたので、お願いしたら完全にDos Monosの曲にしてくれました。1回目聴いた時は「めっちゃいい!」と感激して、2回目でやっと「あ、イントロに俺の声入ってるのか」って(笑)。リリックについて僕らからは何もオーダーしていないんですけど、「雨のパレード」を入れてくれたのも嬉しいです。



—— 今回収録された5曲だけでも、蔦谷好位置さんから小林うてなさんまで世代とジャンルを超えた敏腕クリエイターたちが雨のパレードのもとに集結したわけですが、今後コラボレーションしてみたいかたはいらっしゃいますか。

次にリミックスを作るなら親友のLicaxxxにお願いしてみたいですし、レコードを作ったときに参加してくれたMONJOEとも改めて一緒にやりたいです。国内外問わなければMura Masaにもやってほしいし、僕らがライブのSEに使っているマンチェスターのプロデューサーOceanとか、挙げだしたらキリがないですね。





—— バンドが多岐に渡るコネクションと新しい制作方法を手にした今、楽しみにしていることはありますか?

これまでももちろんずっと楽しみながら曲を作っていましたけど、今まで抑制されていたほしい音もDTMを取り入れることによって使えるようになってきているので、今曲を作るのが楽しくてしょうがないんです。アルバムに向けて書き溜めた曲たちを、今のスキルとイマジネーションで組み立て直す作業が楽しみですね。自分たちの楽曲だけでなく、ゆくゆくは映画とか何らかの作品のサウンドトラックを担当させてもらえたりしたらいいなと思います。

雨のパレード 撮影=日吉“JP”純平
雨のパレード 撮影=日吉“JP”純平

—— お話を聞いているだけでもワクワクします。最後に、まだ新体制でのライブを観たことのない方たちも多いと思いますが、第2章の雨のパレードのライブの見どころはどこでしょうか。

いずれサポートメンバーを入れる可能性はありますが、現状は3人でライブをしようと思っています。ライブの準備をしながら気づくことがたくさんありますね。今まで音源には入っていたけどライブで出せなかった表現方法やコーラスなどがあったんですが、それがライブで使えるようになると印象や再現度が違うんだなとか。ライブで演奏すると、どうしても音源よりテンポが重くなってしまう曲もありましたし。いろんな発見をしながら確実に良い方向に向かっていると思うので、観に来る人たちを驚かせたいです。僕たちはよく自分たちの曲をライブでリアレンジするんですけど、中にはオリジナルの倍くらいの長さになる曲もあります(笑)。「Ahead Ahead」は特にライブで盛り上がる曲だと思うので、楽しみにしていてほしいです。

雨のパレード 撮影=日吉“JP”純平
雨のパレード 撮影=日吉“JP”純平

取材・文=Natsumi.K 撮影=森好弘

当記事はSPICEの提供記事です。

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