「ちびまる子ちゃん」の「原作祭り」に「いつもと違う」の声。30年でどう変わったか

エキレビ!

2019/6/12 09:45

2020年1月でアニメ化30周年の『ちびまる子ちゃん』。2019年4月から1年間続く「ありがとう!アニメ化30周年 みんなとちびまる子ちゃんイヤー」と題した企画が始まった。4月からの新オープニング映像には、歴代のオープニング・エンディング映像のオマージュがたくさん散りばめられており、原作ファン・古参ファンには嬉しい演出となっている。


最初の企画「10週連続さくらももこ原作祭り」では、原作の中からアニメ放送する作品が選ばれ、新規作画・演出で毎週放送された。

映像内にひっそりと潜む見どころは、小道具にもあった。お姉ちゃんが持ってた雑誌『りぼん』の表紙が、本当にまる子が暮らしてる頃に出てた1974年4月号と同じデザインだったのだ。これまでもまる子の愛読書として『りぼん』は度々登場したが、いつもはデザインまでは似せられていない。記念企画だからこその遊び心なのだろう。

「違和感」の声から「変化」を考える
選ばれた10話は以下の通りだ。

【放送タイトル(コミック掲載巻/アニメ初回放送日)】
●まる子、かみしばい屋で浪費する(10巻/1995年3月5日)
●まる子、偏食をする(9巻/1995年6月18日)
●おねえちゃん、ついにまる子にあいそをつかす(9巻/1995年2月26日)
●まる子、お寿司屋さんに行く(11巻/1995年5月7日)
●まる子、ローラースルーゴーゴーがどうしてもほしいっ!!(11巻/1995年5月14日)
●おかあさんの日(6巻/1990年5月13日)
●まる子、忘れ物をする(12巻/1995年4月30日)
●納豆を食べよう(14巻/1996年10月13日)
●まる子は盆栽好き(10巻/1995年8月20日)
●まる子、花輪クンに英会話を習う(9巻/1992年9月6日)

ストーリーは、原作や90年代にアニメ放送されたときの内容にほぼ沿っているが、ちょっとしたセリフや構成が変わってもいる。ドリフや欽ちゃんなど、当時人気だったお笑い芸人がまる子たちの会話中に登場していた箇所がなくなったりもした。

「原作祭り」が放送されると、ネット上には「いつもと雰囲気が違う」「毒が強い」などの違和感を覚える声が多く挙がった。初期を知らない比較的若い世代なのだろう。逆に、初期を知る世代による「違和感を覚える声が挙がることへの驚き」の声も挙がった。……となると、見ていた年代によってまったく違う印象を持つアニメなのだということだ。初期と比べると作画自体もかなり変わっているが、なぜこんなにも作中に流れる空気感が違ってきたのだろう。

登場人物の変化
アニメ化当初の『ちびまる子ちゃん』は、まだ主要人物も出揃ってはいなかった。永沢、小杉、山田、野口さんなど、近年活躍の多いクラスメイトもいなかった。
逆に女子に人気で、丸尾君と一緒に学級委員候補にもなってた「えびす君」。たまちゃんの次ぐらいに親しい友人だった「ゆみこちゃん」など、今や一切見なくなった登場人物もいる。また、クラスメイトの多くは名前も付いてない特徴の薄い子供で構成されていた。
「原作祭り」の10話は、原作コミック全16巻の中でもほぼ後半から選ばれた。原作の最初のころは、作風が2019年現在のアニメ設定とあまりにかけ離れていて、再現しづらいシーンが多いからだろうか。

登場人物の性格も随分変わった。初期の花輪君は嫌味なナルシストでみんなからちょっと引かれていたし、丸尾君も今よりエキセントリックだった。中でも別人のような変化を遂げたのは永沢君だろう。コミック中盤あたりから「地味で冴えない、大人しく気弱な男子」として登場し始めた。その後、家が火事になった設定がくわわり、卑屈さや嫌味っぽく強気な言動が追加される。更に、93~95年に『ビッグコミックスピリッツ』、『ビッグコミックスピリッツ21』で中学生になった永沢君が主人公のスピンオフ作品『永沢君』が連載された。その作中の設定に引っ張られるように、小学生の永沢君も強気で嫌味な性格へと変化していった。

今回選ばれた10話のうち、その「嫌味な永沢君への変化後」に該当するのは「納豆を食べよう」の巻のみ。それ以外の話は「変化前」の頃の話だ。
特に「まる子、花輪クンに英会話を習う」の巻では、「簡単な英語の聞き取りが極端にできず、足手まといだと言われて落ち込んでめそめそ泣く」という今の性格だと考えられないようなシーンがある。現在の設定に合わせた改変がされるか注目したが、気弱な性格のまま放送された。

テンポの変化
「お姉ちゃんのものをこっそりクラスメイトに売りつけるまる子」や「姉妹喧嘩が怖すぎる」という具体的なシーンへの戸惑いの声も多かった。該当箇所について90年代と2019年バージョンのアニメを見比べてみると、作画と演出が異なってるからか、かなり別物に見える。
たとえば旧バージョンの喧嘩のシーンは、会話・動作が今と比べてテンポが早い。喧嘩中にいきなりお母さんがお笑い番組を見て爆笑するシーンも入るので、雰囲気も緩む。

また「まる子、ローラースルーゴーゴーがどうしてもほしいっ!!」の巻では、新旧比べてみるとBGMも演出の雰囲気も真逆だった。「はまじに30円払って借りたローラースルーゴーゴーをまる子が壊す⇒その件を親と謝りに行って弁償⇒友達から金をとって貸してたはまじも酷く親に叱られる」という一連のシーンも、旧バージョンでは陽気なBGMとギャグ風の演出で乗り切っていた。だが、2019年バージョンでは深刻な雰囲気の演出になっている。同じシーンでも、空気感の重さが違いすぎる。20数年のあいだに「ここで陽気なのはちょっと不謹慎では」と判断されるようになってしまった、ということなのだろうか。


表情の変化
初期の頃、ずるい方法で小遣いを稼ごうとしたり、家族を困らせるシーンでまる子は「ケーッケッケッケッケッ」という高笑いがぴったりはまるような悪どい顔になっていた。その顔を視聴者も見慣れていた。だが最近のまる子の表情は、以前と比べると角が取れてやわらかい雰囲気になっており「ケーッケッケッケッケッ」の顔になることがないのだ。
その「角が取れたまる子」に突然その「ケーッケッケッケッケッ」の悪だくみをはめようとすると、顔と人格の組み合わせが見慣れたものと異なり「いつものまる子じゃない!」という違和感になる。アニメじゃなく生身の人間でもよく知ってるはずの人に、急に別人格が入ってきたら絶対びっくりするだろう。単純にそれと同じような話かもしれない。

今後もきっと変わっていくはず
世代による「原作祭り」への感想の違いから、この30年間の変化について少し整理することができた。『ちびまる子ちゃん』に限らず、長い年月をかけて緩やかに変わり、ずっと見てるとあまり気づかないけど、いざ比較するとまるで別物になってる作品はきっと多い。もし更に30年続いたとなると60年だ。一体どんなまる子になっているんだろう。

「ありがとう!アニメ化30周年 みんなとちびまる子ちゃんイヤー」の企画は2020年春まで続く。今後どんな企画が来るか期待しつつ、あと10カ月間楽しませてもらいたい。
(イラストと文/さくらいみか)

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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