「どろろ」愛はエネルギーになる。しかし必ずしもプラスに働くわけではない。原作リスペクトミックス20話

エキレビ!

2019/6/3 09:45

アニメ『どろろ』(→公式サイト)。今日6月3日(月)22:00より、TOKYO MXほかで、第二十一話「逆流の巻」が放映される。
Amazon Prime Videoで毎話24:00頃から配信予定。


■大切な人を救う残酷
どろろ「秋んなると山ん中が真っ赤に染まるんだよ! 真っ赤って言っても、鬼神の色とは全然違うと思うぜ? 見てるとなんとも言えずいい気分になるんだ。そういうのをキレイっていうんだよ」

百鬼丸はまだ目が見えない。でもどろろの語る、美しい世界の話に聞き入っている。彼の顔は笑顔だ。
百鬼丸はどろろのためにあけびを取って、彼女に与えた。
長い旅の中はじめてのこと。どろろは目をうるませる。

初期はどろろを「なんかついてくる無害なもの」としてとらえていた百鬼丸。
一度はぐれたことで、どろろは自分のそばに居てくれる大切な人間だ、と認識するようになった。
そして今、百鬼丸はどろろをかけがえのない人ととして、向き合うようになった。
母親的立ち位置のどろろからしてみれば、幼子のようだった百鬼丸のこの成長には、泣けてしまうというもの。

だが、愛する人ができたことで、今回の惨劇が起きてしまったのがやりきれない。
今まで百鬼丸は、自分の身体を取り戻す、という目的で鬼神を斬ってきた。
とはいえそれは前に進むため設定した目的程度のもので、取り戻せなかったからと言って(狐の時戻ってきていない)そこまで執着してはいなかった。
ところが今回は違う。
百鬼丸には腕がない。どろろが腕を岩に挟まれた時、彼は必死に救おうとした。でもからくりの手なんかで助けられるわけがない。

大切な人を救いたい。
こうなると「自分のため」よりはるかに身体は動くようになるし、残酷にもなれる。
今回の百鬼丸は、どろろのために腕を取り戻したいと願い、そのために鵺をめちゃくちゃに、バラバラに切り刻み、挙げ句取り込まれた人間(?)すら惨殺してしまった。

ここしばらくずっと温厚だった百鬼丸からは信じられないような凶行だ。
一度取り込まれた人間はすでに人間ではないかもしれない。問題はそれを殺すことに躊躇していないことだ。身体が戻らなかった時は、妖怪の死体をさらに切り刻むというやけくそな行動まで取っている。

人は大切な人のためなら、なんでもできてしまう。
どろろのおっかちゃんは、飢えたどろろのために手に煮えたおかゆを入れて食べさせようとした。
多宝丸は愛する民衆のため、間違っていると知りながらも兄を討とうと決めた。
しらぬいは愛するサメの兄弟を守るため、数多くの人々を襲っていた。
少女ミオは孤児の子どもたちを守るため、内緒で武士たちの元に通い、身体を売っていた。

愛はエネルギーになる。しかし必ずしもプラスに働くわけではない。
途中三郎太に詰め寄られた時、間違いなく人間である彼の両手を、百鬼丸は迷うこと無く刀で串刺しにしている。人間を斬ると鬼神になっちまうと、どろろに言われたのにもかかわらずだ。

■腕をなくす
今回は「腕」へのこだわった演出がなされていた。
どろろが岩の間に左腕を挟まれ、抜けなくなって溺死しかけたとき、Twitterでは「百鬼丸がどろろの腕を斬るのでは」という声がちらほらあがっていた。
途中三郎太の母親の、切断された腕のカットが入るからだ。これ自体はミスリードを誘うもので、結果としては琵琶丸に助けられるている。
その一方で、がむしゃらにどろろを救おうとしたため、百鬼丸はからくりの腕を壊している。砕けた腕を持って歩くどろろの憂い顔が印象に残る。

琵琶丸が来なかったら、百鬼丸に残された選択肢は「どろろの左腕を斬る」しかなかった。
もっとも身体を失い、取り戻すのがテーマの作品で、大切な人の身体を自分のように失わせるなんて、彼にできたとは思えない。
やりきれない彼のもやもやはすべて、身体を奪った鵺への怒りに変換されてしまった。

初期の百鬼丸は漠然と、おもちゃを取り戻す子供のように、身体を取り戻したがっていた。途中、耳が聞こえた時などは、それで苦しんで不便に感じていたほどだ。
どろろと共に旅をする中で、身体が戻る喜びを二人で分かち合った。
今は、あらゆるものに対する怒りや憤りや悲しみの感情がめちゃくちゃになってしまい、彼の身体への乱暴な執着に変わってしまった。

彼の中の魂は、鬼神の赤に染まってしまったように見えた。
でも夕日と重なっていたため、正確な色は見えない。

■原作リスペクトのミックス回
今回は原作のあらゆるパーツをバラバラに持ち寄ってくっつけた、まさに鵺のような脚本になっている。

まず「鵺」は、原作の最終回に登場するあやかし。百鬼丸が父母と対峙した時に、あやかしの集合体として登場。ラスボスっぽいけど、今回のアニメほどは強くない。
鵺と共に百鬼丸たちを襲った賽の目の三郎太は、原作では要所要所で出てきて百鬼丸の邪魔をする。特に馬の妖怪「ミドロ号」に乗って村人を踏み殺す、あやかしと手を組む人物だった(ここは似ている)。ミドロ号らしき馬は二十一話の予告で出ていたが、今回三郎太は死んでいるので、おそらくかかわらないはず。
どろろが腕を挟まれるのは、「四化入道の巻」で起きた出来事。川で魚をとる罠に引っかかって抜けなくなった様子が描かれている。こちらは危機が迫るほどでもないので、比較的のんびりしたもの。

テーマも設定も原作から大きく異なるアニメ版「どろろ」。特に原作ではラストがかなり半端な終わり方をしているので、アニメ版は独自のエンディングに向かってどんどん話が変わっていくはず。
そんな中でも原作リスペクトの要素を、うまい具合に調理して破綻なく詰め込んでいるのはとても頼もしい。
ぜひ最後までそのスタイルを貫きつつ、独自の着地点を描いてほしいところ。できれば、心理面での再現の難しそうなヒロインキャラクター「お米さん」も出してほしいところだが、話数的に難しいかな……。

(たまごまご)

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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