高齢の母に運転免許証を返納してもらいたい。正しい説得方法は?

日刊SPA!

2019/6/1 15:54

― 連載「佐藤優のインテリジェンス人生相談」―

“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!

◆古希の母に運転免許を返納してもらいたい

★相談者★親不孝者(ペンネーム) 会社員 男性 43歳

母が今年、古希を迎えましたが、明らかに運転が荒くなっています。アクセルとブレーキの踏み間違えは今のところないようですが、体の反応が鈍くなっているのか、ブレーキが急で助手席に同乗しているとつんのめってしまうことが多々あります。

私が一緒のときは私が運転すればいいだけの話ですが、母一人で車を運転して買い物に出かけることも多いため、不安です。高齢者が起こした痛ましい交通事故が話題になっていることもあって、母が免許を自主返納するよう説得したいと思っています。

昨年、一度説得を試みたのですが、「何言ってんのよ。別に危なっかしい運転もしてないから大丈夫よ」と、かなり不満をあらわにしていました。うまく説得する方法はないでしょうか? アドバイスいただけたら幸いです。

◆佐藤優の回答

あなたの懸念は十分に根拠のあることです。以下の記述を読んでみてください。

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2017(平成29年)の日本人の平均寿命は、女性が87.26歳、男性が81.09歳で、いずれも過去最高を更新しました。(中略)しかし、子どものいない世帯や単独世帯が注目すべき数字が、実は他にもあります。

それは、健康寿命です。健康寿命とは、介護や支援を受けずに日常生活を送れる期間を指しています。

同じく厚生労働省の発表では、’16年(’18年発表)の健康寿命は、女性が74.79歳、男性が72.14歳とされています。この健康寿命は、平均寿命とは別物として認識しないといけません。なぜなら、平均寿命が延びることは喜ばしいですが、だからといってその平均寿命まで身体や頭がいつまでもしっかりしているという保証はないからです

(『子どもなくても老後安心読本』22~23頁)

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70歳でも心身ともにしっかりしている人もいれば、腰痛や膝痛などで運動に制約のある人もいます。あるいは、認知症の傾向が出ている人もいます。人の健康年齢はまちまちです。もっとも人間は、自分が衰えているということをなかなか認識できません。

あなたは、「高齢者が起こした痛ましい交通事故が話題になっていることもあって、母が免許を自主返納するよう説得したいと思っています」と言っていますが、これは正しいアプローチです。高齢者が起こした事故の話をするとともに、「万一、お母さんが起こしてしまうと、一生、責任と苦悩を背負うことになるのが、僕としては嫌なんだ」とお母さんに対する愛情から、免許の返納を勧めているのだということを丁寧に説明しましょう。

そのために、お母さんの運転で、危ないと思ったことについて、具体的に何年何月何日の何時頃にこういうことがあったというメモを作っておき、指摘するといいと思います。同時に、お母さんがどういう状況で車を使う必要があるのかについて調べます。買い物や病院に関しては、バスや電車が利用できるかについて調べてみましょう。お母さんが移動する際に、いつもあなたが車で送るという態勢を最初にとってしまうと、あなた自身が過重負担でストレスを溜め込む可能性があります。ですから、今後はお母さんが公共交通機関を利用するという前提で考えることをお勧めします。

私の周辺でも高齢のために免許を返納した人が何人かいます。最初はバスや電車を利用することが面倒だと言いますが、2~3か月で新しいスタイルに慣れます。

さらにバスや電車を利用することによって、歩く機会が増えるので健康にもいいです。

「僕はこれくらいお母さんのことを心配しているんだ」と伝えれば、お母さんもあなたの真意を理解すると思います。どうぞ頑張ってください。

★今週の教訓……知人は2、3か月で車のない生活に慣れました

【佐藤優】

’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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