『きのう何食べた?』年上のカップルが伝える、ゲイとして生きる苦しみ

日刊サイゾー

2019/5/31 17:00


 5月24日深夜に『きのう何食べた?』(テレビ東京系)の第8話が放送された。

矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)に誘われ、筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)はレストランに来ていた。そこでケンジの友だちと会う約束になっており、現れたのは、長島義之(正名僕蔵、以下「ヨシくん」)と本田鉄郎(菅原大吉、以下「テツさん」)の同性カップルだった。男女カップルばかりの周囲の目を気にするシロさんは、2人に愛想のない態度を取ってしまう。シロさんのいら立ちを察したケンジは、帰り道で謝罪。シロさんはケンジに「なんで謝るんだよ、お前は!」と怒鳴ってしまう。

後日、料理仲間・富永佳代子(田中美佐子)の家でケンジの大好物である桃を分け合ったシロさん。「ケンジのこと大事にしてるのね」と佳代子さんに言われたシロさんは「俺はあいつとは絶対に別れたくないんです!」と返答した。

その日の夜、ヨシくんとテツさんが突然家へ来ることになった。いつもの料理でもてなしたシロさんに、「相談がある」とテツさんが切り出す。

「自分の財産はすべてヨシくんに渡したいと思ってる。でも、遺言書を書いても、3分の1は両親に渡ってしまう。僕が歯を食いしばって稼いだ金を、田舎の両親にビタ一文渡したくはないんです。ヨシくんと養子縁組をしようと思ってます」

そこでシロさんの力を借りるべく、ヨシくん&テツさんは「事務所に伺ってもよろしいですか」と頭を下げ、シロさんは依頼を快諾した。

2人が帰宅した後、シロさんが「そういう目的だったって最初から言えよ」と言うと、ケンジは「いつも言われてるのに学習しないとダメだよね」と肩を落とした。シロさんは「俺がいら立っているのはケンジのせいじゃない。器の小さい俺自身に腹を立ててるんだよ」と心の中で叫んだが、それすら正直に口に出せないでいた。

翌朝、出勤するシロさんに寝起きのケンジが「今日の夕飯は、シロさんのハンバーグが食べたいなあ。あれ、おいしいんだよねえ」と話しかけた。「わかったよ」と笑顔で返答したシロさんは「ああいう何気ない仲直りの仕方、俺に教えてくれたのはあいつなんだよ」と感謝する。一方、ケンジは冷蔵庫の中に大好物の桃があるのを発見。シロさんの愛情をかみ締めた。

今回の内容は、原作でも人気の高いエピソードだ。シロさんがもてなした自宅での食事会で、テツさんはシロさんに相談した。

「僕が……歯を食いしばって貯めた金を、田舎の両親に……ビタ一文渡したくないんです」

原作で、テツさんはこの言葉をサラッと口にしていた。漫画版テツさんから感じたのは静かな怒りだったが、ドラマでのあのシーンからは苦しみがうかがえた。何があったか、詳細は語られない。しかし、両親からセクシャリティを理解されていないこと、つらい思いをしてきたこと、親と深い確執があることを伝えるには十分だった。短い言葉の中から背景を察することができた。テツさんが葛藤しながら言葉を発する間、ヨシくんはずっとテツさんの手を握っている。テツさんは居場所を見つけることができたのだと、2人を見て救われた気持ちになる。

彼らはシロさん&ケンジよりも年上のゲイカップルだ。この年齢差は大きい。親の意識がまるで違うはずである。かつて、ケンジは「シロさんは贅沢だよね。理解しようとしてくれる親に感謝してもいいんじゃない」と言っていた。ゲイの世界にはテツさんのような思いをした人がたくさんいるのだろう。同性愛への理解がほとんどなかった時代から生きるテツさんの苦しみが、「ビタ一文」という言葉に込められていた。

そんな2人から依頼を受けて、「事務所にいらしてください」と返答したシロさん。ゲイ同士、多くを語らずともわかり合える部分があったのだと思う。

シロさん→ケンジへの愛が伝わる第8話


 養子縁組を結ぼうとしているヨシくん&テツさん。では、シロさん&ケンジの2人はどうか? 彼らは、法で守られる安定の立場にはいない。だからこそ、別れないために努力を惜しまないことが重要なのだ。

ケンジと仲直りしたくても、思いを伝えられなかったシロさん。ゴミを捨てに行くケンジを見て「このまま帰ってこないってことも、なくはないんだよな……」と立ち尽くすばかりだった。

一方、翌朝のケンジはシロさんに「ハンバーグが食べたい」と甘えた。リクエストに笑顔で応えたシロさんは「俺もいつか、あいつみたいになれる日が来るんだろうか」と自問する。冷たいイメージのあるシロさんだが、愛情表現が下手なだけなのだ。ケンジからすれば、「お前みたいになりたい」なんて、最高にうれしい言葉だ。

8話はシロさんからケンジへの愛が伝わる回だった。このカップルは、精神的に大人なケンジがシロさんのことを包んでいる。一瞬で崩れてもおかしくない関係性だからこそ、一瞬を大切に生きていく。「たまにはうまいの食わせてやりたい」とシロさんが冷蔵庫に入れておいた桃は、その表れではないか?

「あんまぁ~い! はぁ~。俺、すっごく愛されてる」

桃はケンジの大好物だ。

(文=寺西ジャジューカ)

当記事は日刊サイゾーの提供記事です。

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