ACIDMANの歴史とその真髄に触れる“ANTHOLOGY 2”ツアー、セミファイナルを詳報

SPICE

2019/5/20 19:00

ACIDMAN LIVE TOUR “ANTHOLOGY 2” 2019.5.17 Zepp Tokyo


5月17日金曜日、Zepp TokyoでACIDMANを観た。ファン投票でセットリストが決まる『ANTHOLOGY 2』ツアー、そのセミファイナル。好評を得た4年前の第一弾から日程は倍増、モバイル会員に加え一般投票も可能になり、人気シリーズとしてこのまま定着する気配が濃厚だ。“過去の楽曲に陽が当たる場所を作りたい”というバンドの思いにファンが呼応する、実に幸福なコール&レスポンス。日替わりメニューも相当あるらしい。一体何が飛び出すか。開演前のワクワク感は通常のツアーより、ひょっとして多めかもしれない。

ACIDMAN  撮影=高田梓
ACIDMAN 撮影=高田梓

いつも通りの暗転、「最後の国」、盛大なクラップ、眩い逆光。一瞬の静寂後、スポットを浴びた大木がギターだけで歌い出した1曲目は「暁を残して」。一気にビートがはじけてソリッドなダンス・ロックへと展開する、アルバム『equal』収録の懐かしいナンバーに“そう来たか!”と胸が騒ぐ。続く「REMIND」「ストロマトライト」はアルバム『LIFE』の曲順そのままだが、特に「ストロマトライト」はEDMばりの佐藤雅俊の超重低音ベースと浦山一悟の精密な四つ打ちキックが圧巻で、2019年の耳で聴くととてもフレッシュに感じるヘヴィなダンス・チューン。このライブ、ただ懐かしいリクエスト大会にはなりそうもない。

ACIDMAN  撮影=高田梓
ACIDMAN 撮影=高田梓

「全然知らない曲ばかりでも、とりあえず“フー!”とか言ってくれれば(笑)。それぞれの楽しみ方で、最終的には一つになれればと思います」

マニアックになりそうなセットリストを踏まえ、大木がユーモラスな最初の挨拶でフロアを和ませる。「オールドサンセット」も『LIFE』からの曲で、「River」は『and world』、そして「千年歩行」は『green chord』。この時期のACIDMANは初期衝動のエネルギーを一度使い切り、新たなモチベーションを得て音楽的冒険に挑んだ発展期に当たり、混沌とクールネスが交錯する魅力的な楽曲が多い。端正な四つ打ち、抑えたグルーヴでじわじわ上げてゆく「River」「千年歩行」で、踊らず騒がずゆらゆら揺れるフロア。ロックのライブと言うよりも、クラブ・ミュージック的なグルーヴがなんとも心地よい。「アルケミスト」は近年のライブ定番曲だが、柔らかい白と黄のライト、エフェクトをかけたベースの幻想的な響き、余裕を持って歌いあげる歌のおかげで、ずいぶんと明るい曲に聴こえる。セトリの妙と言うべきだろう。

ACIDMAN  撮影=高田梓
ACIDMAN 撮影=高田梓

「ここからバラードが続きます。ちょっとでもみんなの心の奥の奥の、ボロボロのところに手を添えて、触れられるような楽曲を歌えたらと思います」

「プリズムの夜」は美しいブルーのバックライトに照らされぐっとエモーショナルに、「UNFOLD」は白く輝く光の元で静寂から轟音へと反転する感情と共に。これも『green chord』『LIFE』期の、スピリチュアルな純度の高さが増してゆく時期の名ロック・バラード。フロアのオーディエンスは立ちすくむのみだが、全感覚で音楽に集中しているのが2階席から見てもわかる。大木の十八番、星と宇宙の話からの「ベガの呼応」は、9分以上に及ぶ大作インストゆえライブではなかなか演奏できない、だからこそのリクエスト上位だろう。組曲のような構成を白、赤、青のライトでそれぞれ浮かび上がらせ、轟音の中でストロボが激しく明滅するクライマックス、フィードバック・ノイズ、カットアウトからの「水写」のイントロと、ドラマチックな繋がりもばっちり決まった。そして久々に聴いた気がする「水写」は、美しいメロディと儚い抒情性がACIDMAN全レパートリーの中でも出色の、本物の名曲であることを再確認した。

ACIDMAN  撮影=高田梓
ACIDMAN 撮影=高田梓

一悟が張り切って「どうでもいいことをしゃべるコーナー」を箸休めに、ライブは後半のアクティブなセクションへ突入してゆく。「CARVE WITH THE SENSE」から「金色のカペラ」「懸命の銘」へと、超特急エイトビートをノンストップで畳みかけるスピード感が凄い。「Under the rain」も含め、これも『green chord』~『A beautiful greed』期の楽曲で、この時期のACIDMANに並みならぬ思い入れのある筆者は素直に嬉しい。一気に時代が飛んで『Λ』からの「MEMORIES」は、透明なせつなさと明るい広がりのバランスが絶妙なロック・チューン。一悟の豪快なスネアの連打が理屈抜きでかっこいい。

ACIDMAN  撮影=高田梓
ACIDMAN 撮影=高田梓

キラー・チューンの連発で一気に盛り上げたあとはいよいよ本日のクライマックスへ、曲は『LIFE』の実質的なラストを飾ったエモーショナルなロック・バラード「TO THE WORLD’S END」だ。強烈な白光のハレーションと轟音の中で<今は此処で、夢に染まれ>と大木が叫んでる。突き詰めれば“生”“死”“光”“夢”“愛”など、たぶん数個ほどのワードに凝縮されるだろう大木の思想の、最も重要なエッセンスの一つと言えるこの曲。あれから10年以上が過ぎたが、その価値と重みは何一つ変わってはいない。

ACIDMAN  撮影=高田梓
ACIDMAN 撮影=高田梓

「こんなにたくさんの人が“共鳴”してくれることに感謝します。この時間を一分一秒でも長く共有していきたいと思います」

本編ラストを締めくくる18曲目に選ばれたのは「OVER」だった。『A beautiful greed』のラストを飾ったこの曲もまた、大木の思想のエッセンスをたっぷり詰め込んだ、終わりある命を懸命に生きると誓う生命賛歌。原曲の壮麗なストリングスも素晴らしかったが、3人で奏でるライブ・バージョンの武骨な力強さは何にも勝る。ステージから強い光が溢れ、ぐるぐる回り、会場内を真っ白に染めてゆく。

ACIDMAN  撮影=高田梓
ACIDMAN 撮影=高田梓

「この3人になって22年間、その頃に作った初期の初期の曲がランク・インしました。知らなくても大丈夫、楽しんでください」

アンコール、なんと1曲目は「FREE WHITE」。インディーズ・アルバム『酸化空』に収録されていたメロディック・チューンで、ストップ&ゴーとテンポ・チェンジを繰り返す、若気の至りが先走ったような初々しい曲。いつだって先走る思いを音に変え、つんのめりながら走り続けてきたACIDMANの歩みを象徴するような、古くて新しい1曲が聴けたのは嬉しい驚きだった。そして最後の最後はこの曲を聴かねば終われない、リクエスト上位曲の中で「唯一(普段から)毎回やってる曲」(大木)という「ある証明」だ。ここまでストイックに演奏に没頭してきた佐藤がはじかれるようにステージ前に走り出て、この日初めてかぶっていた帽子を飛ばした。久しぶりの楽曲も多いため「いっぱい練習しました!」とMCしていた一悟も、心おきなくスネアを引っぱたく。今光の中溢れ出す意思の、その一滴が花咲かすのだろう――。蕩けるような爆音の中でも大木の歌が、言葉が、思想が、しっかり届いてくる。

ACIDMAN  撮影=高田梓
ACIDMAN 撮影=高田梓

翌日、ファイナル公演の終了と同時に発表された投票結果は、1位「金色のカペラ」2位「懸命の銘」3位「MEMORIES」という興味深いもの。ほかに10年以上前の曲が多いのを見ると、当時を知らない新しいファンが増えてきていることもありそうだ。それに応えるように、10~12月にかけてメジャー・デビュー・アルバム『創』のアナログ盤リリースに伴う『ACIDMAN LIVE TOUR“創、再現”』も発表された。当時を知る人も、未体験の人も、全ての人に音楽と共に生きる喜びを。ACIDMANは走り続ける。

取材・文=宮本英夫 撮影=高田梓

ACIDMAN  撮影=高田梓
ACIDMAN 撮影=高田梓

当記事はSPICEの提供記事です。

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