政治家の失言の背景に?「メディアによる発言の切り取り」は仕方ないのか

AbemaTIMES

2019/5/17 15:10




 日本維新の会所属の丸山穂高衆議院議員が「戦争による領土の奪還」に言及した問題。

本人は13日に「今回の私の極めて不適切な発言につきまして撤回を申し上げたいと思う。本当に申し訳ございませんでした」と発言を撤回・謝罪したが、日本維新の会は除名処分を決定。さらに立憲民主党と共同で、辞職勧告決議案の国会提出を検討している。

この動きに対し丸山議員は「議会案件で言われたまま黙り込むことはしない。その機に国内、国外へ向けて様々発信で申し述べるし、可決されようがされまいが任期を全うする」とTweet、議員辞職するつもりはないことを明言。松井一郎代表は「早くね、潔くけじめをつけた方がいい。まずけじめをつけて、彼の人生はこれからまだ先あるわけだから出直してもらいたい」と苦言を呈した。

丸山発言のみならず、塚田前国土交通副大臣、桜田義孝前オリンピック・パラリンピック担当大臣と、政権中枢でも失言が相次いでいる。自民党では所属議員向けの失言防止マニュアルを配布。内容は報道を意識したもので、新聞やニュースには字数や時間に限りがあるとして、発言が切り取られて使われることを意識することや、歴史認識、政治信条、ジェンダー、LGBT、事故や災害に対する配慮にかける発言など、"タイトルに使われる強めのワード"に注意しするよう呼びかけている。

16日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、この「政治家の"失言"」と「メディアによる"切り取り"」の問題について議論した。

■佐々木俊尚氏「切り取りはやめるべきだ」




 メディアによる発言切り取りの問題について、ふかわりょうは「私は、政治家は言葉が全てだと思っている。この問題を対岸の火事だと思っている政治家は、現代社会の政治家としては向いていないと思う。ただ、私も批判していないのにタイトルに"批判"と付けられたり、何度もやられた。それでも発信側にいる表現者である以上、勝手に角度や色をつけられることを覚悟すべきだと思っている。先日も俳優さんのインタビューの一部がまたたく間に広がった。そういう世の中だし、昔はこうだったと言って抗ってもしょうがない。有権者もそのことを理解していると思う」と主張。

「我々はこれまで、切り取られていないものを見たことがあるだろうか。悪い切り取りと、良い切り取りの境目はどこにあるのか。切り取られることを恐れて何も言えなくなる、という意見こそ乱暴だと私は思う。規制が増えて、バラエティで何もできなくなくなった、という人はすぐさまテレビ界から去ってほしいとさえ思っている。全員に高い政治のリテラシーがあるわけではないし、言葉狩りや読み間違いのような部分でしか判断されない部分も出てくると思う。切り取りと言っても、全体にそういう考えがあるから出てくるとも言える。石橋を叩きながら渡ればいいだけだし、小泉純一郎元首相は極力短いセンテンスで伝えていた」。



 ふかわの意見に対し、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「丸山議員は安全保障に関して元々積極的な意見をお持ちの議員で、選挙の前の調査では核武装も検討すべきだと答えている。安全保障の世界では、北方領土を取り戻すのに戦争以外の方があるのかどうか、という議論は成立する。アメリカ政府も、絶対にあり得ないという前提の上で、カナダと戦争になったらどうなるか、というシミュレーションはしている。だから丸山議員に対して"軍国主義だ"と批判するのは少し的外れではないか。ただ、アメリカがカナダの国民に対してそういうことを言わないように、公の場で、しかも北方領土に行った時に島民の前で言うべきではない。しかもロシアからも反発があり、日ロ交渉に影響を及ぼしている。この点は徹底的に批判されるべきだ」と話す。

その上で「丸山議員の件は明らかに失言だし、ひどい発言だが、マスコミが発言を切り取っているケースも多いと思う。明石市長の暴言事件の時も切り取りがあったが、前後・全体を見れば、そんなにひどい発言ではなかった、ということがネットで検証されたというケースが多過ぎる。政治家が世界観を提示するためには長い文章が必要で、バラエティ番組でタレントが発言するのとはだいぶ違う。小泉純一郎さんみたいに一言で表そうというのは、究極的にはポピュリズムにつながりかねない。だからテレビ局は全てを録画し、前後の文脈を検証するためのバックアップとしてYouTubeなどで映像を公開してもいいと思う。平成の30年間は政権がころころ変わったが、閣僚も含め、失言で辞任した人が山ほどいた。有権者はもう飽き飽きしているが、一方でいい政策をやってもらうために政治家を選んでいるのに、失言した瞬間にクビになるのはおかしいんじゃないの、そればかり報じているマスコミは何なんだよ、最近は言い間違いまで追及している、というようなモヤモヤ感もあるのではないか」と指摘した。

■メディアで正しく発信することが政治家の仕事なのか?




 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「良心的なメディアは、切り取るのではなくまとめる。それでも、ふかわさんがおっしゃっていたように、切り取られる社会だからメディアはクソだ、と言うのではなく、それを逆手に取ってやれる人こそがプロフェッショナルだと思う。ただ、主戦場がメディアだという人にとっては当然かもしれないが、政治家にとってメディアで発言することがどれくらい重要な仕事なのだろうかとも思う。議員という制度が生まれた時にはマスメディアはなかったし、テレビのない時代、議員のコミュニケーションは全て生だった。桜田元大臣と親しい知人は、"あの人は大臣になってテレビにさえ出なければ、最後の最後まで最高の政治家だったのに"と言っていた。本当は丁寧に謝ってくれるし、話せば分かる"いいおじちゃん"なのに、マスコミの報じる枠の中で生きなかった、という人もいる」と指摘。

「丸山議員の発言は外交問題に発展するレベルであり、失言を超えた問題発言だったと思うが、政治家が失言すること自体、そんなに問題なのだろうか。自民党のマニュアルについても、歴史問題、ジェンダー、事故、病気など、真剣に向き合うべきテーマだし、専門領域でやっている人が政策の話に踏み込んでいけば熱くなって言ってしまうことがあると思う。そこに踏み込まないようにしろと言う。こんなことをしていたら、若い人が政治家を目指したくなくなる」。



 テレビ朝日政治部デスクの足立直紀氏は「テレビ討論が活発に行われる時代になると、政治家がその中で発信することに重きを置くようになり、それが得意な人に人気が出て、どんどん出世していくようになった。今も国会での発言力、水面下での実行力も必要だが、やはりネットも含めたメディアでの発信力が相当高いウエイトを占めていると思う。ただ、日頃から政治のニュースを短い尺の中に収める作業をやっている立場から言わせて頂くと、今日も3時間の本会議を数十秒の原稿にまとめなければならなかった。多くの発言からエキスを抽出することになるが、絶対に発言の趣旨をねじ曲げるようなことのないように細心の注意を払いながらやっていることは理解して頂きたい」と話した。

■上西小百合元議員「有権者をなめている」




 元衆議院議員で、維新の党(当時)から除名処分を受けたこともある上西小百合氏は「私の場合はデマを流されたということなので、丸山議員の問題とは質が違うということをはっきりさせて頂く」とした上で、「私も議員をやっていた頃は報道の中で発言を切り取られることも多々あったが、自民党のマニュアルにも書いてある通り、放送の尺や原稿の文字数があるので、仕方のないものだと自分の中で消化していた。逆に、給付型奨学金のことを伝えたいと思い、強い言葉を使ったことがある。そうすると報道は取り上げてくれる。そうやって、自分の政策を発信していく方に誘導していく技術を持つ努力をしなければいけないとも思う」と話す。

その上で「それでも、丸山議員に限らず、失言を繰り返す議員には"僕は自民党だから当選する"とか、"僕は維新だから当選する"というような、有権者をなめた気持ちが少なからずあるはずだ。残念なのは、有権者側にも"あの党の候補者だから投票する"という人が多いこと。政治家には主権者教育をしっかりと打ち出してほしいし、有権者の皆さんもお忙しいとは思うが、自分の住んでいる地域の議員が誰で、どんな仕事をしているのか、ということをチラッとでも見て頂ければ、意識も変わってくると思う」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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