「勝ったら1000万円企画」を辞退、渦中の青木真也を直撃!「物事をすべてオープンにするのはつまらない」

日刊SPA!

2019/5/16 15:49

ONE Championship初の防衛戦を今週末に控えた青木真也選手を直撃した。青木といえば「那須川天心にボクシングで勝ったら1000万円」への参戦を電撃表明するも、突然の辞退を表明。熱心な格闘技ファンだけでなく、大きく世間を巻き込み話題になったばかりだ。近年は執筆活動にも意欲的に取り組むなど、「発信すること」に全力を注ぐ理由とは?

◆勝った、負けただけじゃ世間に届かない

──ONE王者である青木選手は言うまでもなく世界的なトップアスリートであり知名度が高いですが、今なぜ話題作りに着目されているんでしょうか?

青木:やっぱりそこは自分のやっていることを世間に問いかけたいという気持ちが大きいんです。競技の中でチャンピオンになるというのは、要するに「勝った」「負けた」だけのものさしで測られるんですね。だけど、それでは面白くない。というか、これが野球やサッカーなら話は違うと思うんです。だけど、結局は格闘技だから……。まだジャンルとして、そこまでの域には達していないんですよ。「勝った」「負けた」だけじゃ世間に届かない。

僕の場合、PRIDEとDREAMって団体を2つ潰しているじゃないですか。勉強せざるをえなかったんですよね。今の子たちは勉強しなくてもいいと思うんです。ある程度、業界が安定しているから。僕らのときはAbemaもなかったし、地上波放送もない時代があったので、生き残るために自分で話題を作るしかなかったんですよ。

──その恐怖があったから、今も必死で話題作りをするということですか?

青木:うん、でも単純に経済的な怖さという話ではないんです。団体や環境は、ふとしたきっかけで平気で壊れてしまう。そのことに対する恐怖があるんでしょうね。

──青木選手は格闘技だけじゃなくプロレスのマットにも上がっていますが、これも金銭的な理由からとは思えません。

青木:たしかによく言われるんですよ。「そんなことやらなくてもメシ食えるでしょ?」とか。でも、そういうことじゃないんだよな。そういうふうに言われるってことは、「格闘家=カネに困っている」みたいなイメージがあるのかって萎えるしね。僕は好きでやっているだけだから。なぜプロレスに上がるのかって聞かれたら、自分の可能性をすべて使い切りたいから。それだけですよ。僕ももう36歳だし、やり切って終わりたいという気持ちは年齢的な部分で大きい。

◆勝ったら1000万企画、辞退の理由は?

──そうなると、5月17日に行われるONEの初防衛戦も重要な意味を持ってきますね。

青木:そうですね。残された時間を考えると、ここからは一つひとつの試合がすべて重要になってきますから。とにかく後悔はしたくないし、目の前のことを全力でこなしていくだけです。

──「那須川天心にボクシングで勝ったら1000万円」を辞退したことが世間で騒がれましたが、その理由は?

青木:「物事をすべてオープンにするのはつまらない」というのが僕の基本的な考え方としてあるんです。世の中にはフィクションだからこそ面白かったり、モザイクがかかっているからこそ興味をひかれることがたくさんあるわけで。そこで全部を公開しちゃうのは違う気がする。これは格闘技とかプロレスだけじゃなく、芸事すべてに共通して言えるんじゃないですかね。

それでも“全部分け隔てなく情報開示しろ!”っていうことなら、受け取る側の裁量の問題としてどうなのかなって話になると思う。たとえばプロレスを観ながらみんなが楽しんでいるときに、「これ、真剣勝負なの?」っていう話が出たら萎えるじゃないですか。たしかにプロレスは事前にケツ(勝敗)が決まっているかもだけど、それを言い出したら会話が成立しないですよ。

──ヤオガチ論では語れない要素がプロレスにはありますからね。企業の不祥事じゃないですから、エンタメには説明責任もないし。

青木:そうそう。世の中全体が「白か黒か、どっちかはっきりしろ!」という方向に傾きすぎているように感じるな。でも、それってつまらないですよ。発想が野暮。

──これまでも廣田瑞人選手と対戦したときの腕折り事件とか、山本元気選手に勝ったあとの挑発行為などで意見が飛び交う中での青木選手自身のメンタルの強さはどこから?

青木:最初のうちは嫌だなって思いました。でも、どれだけ世の中から叩かれようとも、その世の中の声っていうのは簡単にひっくり返るものなんですよ。そのひっくり返る成功体験を一度でもしたら、いちいち叩かれることを気にしなくなる。僕もここまで来るのにいろんなことがありました。そのたびに、いろんな人からいろんなことを言われてきました。

だけど人々の声って、すごく流動的ですから。僕の場合、去年くらいから「調子がいいじゃん。復活した?」とか言われることも多いんです。でも、それはたまたま格闘技の試合で成績を残しているからであってね。負けている時期も調子自体はずっと変わらなかったし、自分の中では強かった。

僕自身は16年同じことを続けているんだけど、周りの評価だけはクルクル変わる。だから、あまりそこを気にしていてもしょうがないと思うんです。最近は「ベビーターンしたよね」とか言われることもあるけど、僕自身は前から何も変わらないですよ(笑)。

──外野からの声に一喜一憂しないということですか。

青木:勝負事だから、勝つこともあれば負けることもある。今は勝っているから寄ってくる人も多いけど、その状況も簡単に覆ることを僕は知っていますからね。ファンっていうのは自由な立場であるべきなんですよ。チケットを買って観戦して、選手に対してああだこうだ好き勝手に言う。彼らファンにはその権利があるんです。それはテレビの視聴者だって同じことでね。好きになる自由もあれば、文句を言う自由もある。

僕のファンの中にも「もっと仲よく、友達みたいな関係になりたいです」って言う人はいるんですけど、自分は「お前、それはやめておけよ」って応えるんです。「俺の状態が悪くなったとき、お前は本当につき合い続ける覚悟があるの?」ってことですよね。演者と仲よくなるってことは、ファンである自由がなくなるってことだから。その距離感は大事にしたほうがいいと思う。

5月18日のONEシンガポール大会ライト級チャンピオンシップで青木と対戦するのは、弱冠20歳にして、多くの日本人の強豪選手をなぎ倒してきたクリスチャン・リー。世界最高峰の技術が交錯する一戦となることは間違いない。〈取材・文/小野田 衛 撮影/丸山剛史〉

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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