中居正広、上田晋也…敏腕TVマンが見た、一流芸能人の圧倒的な準備力

日刊SPA!

2019/5/16 15:50

 SNSの発達により、アウトプット過多になっている現代。その恩恵を受けることも多いが、すぐに答えを求めたり、すぐにアウトプットしてしまう体質になってしまってはいないか? その体質は、すなわち「準備不足」を誘発し、仕事も恋愛も失敗してしまう要因となる。

前回、自身の「準備術」を語ってくれたTVプロデューサーの栗原甚さん。今回は、華やかに見える芸能人の想像を超える「準備」について話を聞いた。

◆できないをできるに変えた、くりぃむしちゅー上田晋也のすごい準備

――栗原さんが演出・プロデューサーをされているスペシャルドラマ『天才バカボン』の主演は、くりぃむしちゅーの上田晋也さん。上田さんの「準備力」がすごいとのことですが…

栗原:『天才バカボン2』では、なにか新しいことに挑戦したいと思い、上田さんに「フィギュアスケート」を提案したんです。バカボンのパパがスケートをする姿は、おもしろいじゃないですか(笑)。熊本出身の上田さんに「スケートできますよね?」と聞いたら、「できるわけないでしょ!」って言われて…でも、どうしてもスケートシーンを撮りたくて、すぐにプロットを作ってお願いしたんですよ。

――ははは(笑)

栗原:もちろん撮影では、プロによる吹き替えもできるんですけど、バレますし冷めますよね?

――たしかに視聴者は、冷めるかもしれないですね。

栗原:だから、フィギュアスケートを教えている先生を探してきたんです。上田さんにスケートの練習に行ってもらいたかったので。ちょっとでも滑れるようになれば良いかなって気持ちだったんですけど…上田さん、めちゃめちゃ滑れるようになったんですよ!

――それは、すごいですね!

栗原:上田さんは、かなりお忙しい方で、毎日レギュラー番組の収録があるんです。そんな中、仕事の前とか後にスケート場に行って、コツコツ練習をしてくれたんですよ。3ヵ月以上、ほぼ毎日だと思います。

――それもまた「すごい準備」ですね。

◆可能性を広げる、一流の準備とは?

栗原:実は毎回、上田さんには脚本の第1稿から渡しているんです。そのあと準備稿から決定稿になって脚本がブラッシュアップされていくので、だいたい役者さんは決定稿で、セリフを覚えるんですよ。でも上田さんの準備は、すごいんです。第1稿から脚本を読み込んで、すぐにセリフを覚えてしまうんです。だから決定稿を渡したとき、「このページにあったセリフ、どうしてカットしたの?」と質問してくるんですよ。その結果、「じゃあ、このセリフは復活させましょうか?」みたいな議論になったりします(笑)

――上田さんのように意見を言ってくれると、作品の可能性が広がりますよね。

栗原:断然面白くなりますし、作品のクオリティーも上がります。実は、バラエティ番組のロケ台本って、ドラマとは違って全部が全部は書いてないんですよ。芸人さんがロケ台本を超えようとした時、おもしろくなるんです。そういうバラエティ番組と同じスタンスで、ドラマにも取り組んでいるんだと思います。

◆多忙の中でも欠かさない、中居正広のすごい準備

――政治や経済には全く無頓着で、学生時代からほとんど勉強をしていないと公言する中居正広さんですが、彼が政治や経済を解説する番組『ザ・大年表』は大きな反響を呼びました。そこに隠された中居さんの「準備」も凄かったそうですね。

栗原:普通だと、専門家を呼んで解説する番組をつくるんですが、僕は「中居くんが1人で全部説明したら、面白いんじゃないか?」と思ったんですよ。中居くんって、難しいことを簡単に説明するのがとても上手で、日本一の司会者だと思うんです。だから彼が解説したら、あの池上彰さんを超えるんじゃないかと思って(笑)。それで本人に『ザ・大年表』の企画を打診したら、「やってみようか」となったんですよ。

――でも、相当お忙しい方ですよね?

栗原:そうですね。なので、本を読んで勉強してもらおうと思い、30冊くらい専門書を渡しました。すると、本人から「本を読んでいると、わからない言葉がたくさん出てくるので、それを教えてほしい」と言われました。それで今度は、いろいろな予備校の先生をリサーチして、一番良い先生を選んで、中居くんに家庭教師をつけたんですよ。疑問が出てきたら、いつでも教えてもらえるように。そしたら、どんどん勉強がはかどって、中居くんの口から「リーマンショック」とか「サブプライムローン」という言葉が自然に出てくるようになったんです(笑)

――すごいですね!

◆準備は言えないからツラい…でも、その先に見える完成形

栗原:たしか3ヶ月以上、勉強したと思います。

――まさに、すごい準備ですね。

栗原:1つの番組のために、そこまで頑張ってくれる人は、いないですよ!

――分かっていても準備を怠る理由の1つに、準備していることは「他人に言えない」ことだと思うんです。このアウトプット過多の世の中で、みんなそれがツラいんだと思うんですよね。

栗原:そうですよね。まさか中居くんが、本当にやってくれるとは思わなかったです。中居くんと雑談をしていたとき、「バカだから分かんないじゃなくて、そろそろ政治とか経済も分かったほうがいい年齢だよね」みたいなことを、たまたま話したのがきっかけなんです。『ザ・大年表』は、中居くんの一言からできた番組なんですよ。

最後に、栗原さん自身が「万全の準備」をした、思い入れのある番組について聞いた。

◆あの人気番組ができるまで

栗原:僕の代表作というか、個人的に大好きな番組は、『松本人志・中居正広VS日本テレビ』です。中居くんは、ドラマ『伝説の教師』で松本人志さんと共演して、それ以降、とても仲良くなって、よくプライベートでも遊んでいたんです。当時、中居くんと僕がはじめた番組に、松本さんが興味を持ってくれて、中居くんも「松本さんと、なにか一緒に番組をやりたい!」と言ってくれたそうなんです。その後、なんと松本さんと中居くんと、企画会議をすることに!

――すごい!!

栗原:土屋さん(当時、日本テレビの編成部長・土屋敏男氏)と高須さん(放送作家の高須光聖氏)も参加して、「どんな企画をやろうか?」とゼロから企画を考えることになって、松本さんも中居くんも忙しい中、毎週ホテルに集合して、企画会議を何ヶ月も繰り返したんです。たしか誰かがお茶をこぼした時に、みんなが「あっ!」と言ったんです。そしたら松本さんが、「人って、驚いたら『あっ』って言うよね…」と、ボソッと言ったんですよ。それで僕が「『あっ!』と言ったら、ギャラを減らしていくという企画は、どうですか?」と提案して、番組の企画が決まったんです。

――そんなところから、番組ってできるんですね。

栗原:生放送で2時間、2人にいろいろなドッキリを仕掛けて、「あっ!」と言ったらギャラを引いていきますという企画は、とてもシンプル。こんな企画、普通は企画書を提出しても通らないです。日テレからコンビニまでの道路を封鎖して、生中継で、松本さんに自転車で缶コーヒーを買いに行ってもらうとか。その途中で、いろいろな刺客が襲いかかってくるんですよ(笑)

――絶対おもしろい(笑)

栗原:K-1ファイターのボブ・サップが追いかけてきたり、デカくて黒い玉が転がってきたり…そのたびに松本さんが「あ~!」って悲鳴をあげるんです。当時、放送作家の高須光聖さんから「栗ちゃん、松本人志をこんなにいじめる人いないよ」と言われちゃいました(苦笑)。それが、大晦日恒例の大型特番『笑ってはいけない』シリーズの原型になったんです。

――あぁ、本当だ!

栗原:だからアレは、何ヶ月も企画会議をした「準備の賜物」だと思うんです。

誰もが認める超一流タレントたち。そんな彼らでさえ、裏では地道に企画会議=「準備」をして、仕事に臨んでいるのだ。まさに、華やかさの裏に「準備」あり。

【栗原甚】

日本テレビ/演出・プロデューサー

伝説の人気番組『¥マネーの虎』をはじめ、これまで『さんま&SMAP美女と野獣スペシャル』『伊東家の食卓』『ぐるナイ』『行列のできる法律相談所』『松本人志中居正広VS日本テレビ』『踊る! さんま御殿』『中居正広のザ・大年表』等、数多くの番組を手がける。その活躍はバラエティだけに留まらず、2016年には国民的ギャグ漫画『天才バカボン』を実写ドラマ化したことでも話題を集めた。

<取材・文/Mr.tsubaking>

Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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