敬語、正しく使えていますか?


●美しい言葉づかいは第一印象を高める
世の中の大半の仕事は、人がいることによって成り立つ。そもそも取引先がいなければ仕事の受注がないわけだし、上司や先輩のサポートもなくいきなりバリバリと業務はこなせない。

多くの他人が関係してくる以上、相手に対する敬意やマナーが必要となってくる。だが、職場で使用するツールの使い方や業務上必要なタスクを先輩社員からレクチャーされることはあっても、ビジネスマナーをイチから教えてもらった機会がある社会人は少ないはずだ。そのような人は、無自覚のうちに礼節を欠いた態度をとってしまい、ビジネスチャンスを逸してしまう恐れがある。

そこで本連載では、筑波大学および札幌国際大学の客員教授を務めながら、大学や官公庁などで「職場に活かすおもてなしの心」をテーマとした講演や研修を手掛ける江上いずみ氏に、社会人として知っておくべきビジネスマナーを解説してもらう。

○人の第一印象は15秒以内に決まる!?

就活生を厳しくチェックする人事担当者や、新社会人を迎える上司・先輩方は、人柄や性格、能力をみるのはもちろんですが、それ以上に「第一印象」を重要視していることをお伝えしてきました。それは「一緒に働きたい仲間かどうか」を見極めるわけですから、当然のことといえます。

その第一印象を高めるための5原則(「身だしなみ」「表情」「態度」「挨拶」「言葉づかい」)があります。就活の面談においても、新入社員として職場に行く際にも、初対面の方々に良い印象を与えるための「身だしなみ」は、少し気を配るだけで大きく評価が違ってきますから、スーツの選び方や着こなしのマナーはぜひ知っておいていただきたいポイントです。

しかし、身だしなみが完璧だったとしても、面接のとき、あるいは新社会人として配属された部署に行ったときに、「話をしたらガッカリ!」などという印象を与えては、一気にその人の評価は下がってしまいます。

人の第一印象のうち、「見た目」、つまり視覚による印象は3~5秒で決まりますが、さらにその次のステップとして、会話をしたときの聴覚からくる印象は10~15秒で決まってしまいます。つまり、相手の前に立ち、交わした最初の言葉と挨拶だけで、その人の印象がほぼ決まってしまうということです。

そのように考えると、初対面の人や上司、お客様にきちんとした敬語でお話することができるか、尊敬語・謙譲語・丁寧語の使い方が正しくできるかは、社会人として大変重要なポイントといえます。

●ビジネスシーンにおける敬語とは?
新入社員教育の一環として、「言葉づかい」の指導をしている企業もあると思います。しかし、社員教育の中のたった数十分の「敬語の教育」がそのまま社会人としての生活の中で維持されているかというと、疑問を感じざるをえません。あるいは、そうした教育すら行っていない企業も多いのではないでしょうか。
○正しく使いたい敬語動詞

私も多くの企業や官公庁で新任研修の講師を担当していますが、「敬語動詞」について受講生に尋ねてみると、「そもそも知らない」「分かっていない」「間違って使っている」という新社会人が本当に多くいます。

「敬語動詞」とは、「尊敬語や謙譲語になることによって、元の言葉が変わる(原型を留めない)動詞」をいいます。たとえば、「聞く」の尊敬語は「お聞きになる」で、元の言葉が残っていますから敬語動詞ではありません。それに対し、「見る」の尊敬語は「ご覧になる」、謙譲語は「拝見する」となり、いずれも「見る」の原形を留めていません。こういったものを敬語動詞といいます。

敬語動詞を正しく尊敬語に変換する際は「お客様が」「上司が」を主語にすると作りやすくなります。

「その件は部長も知っています」→「その件は部長もご存じです」
「そのようにお客様が言った」→「そのようにお客様がおっしゃった」

などが敬語動詞を尊敬語にする際の例です。

敬語動詞を謙譲語にする際は「私が」を主語にすると作りやすくなります。「その仕事はそちらに行ってからやります」→「その仕事はそちらに伺ってからいたします」といった具合です。頻出する敬語動詞を以下にまとめてみました。

答えがわかれば、すぐに「そうそう!」と思うものばかりだと思いますが、急に使おうと思うとなかなか出てこないこともあります。そしてその使い方が曖昧なために、最近は敬語のニュアンスを理解せず、間違った使い方をしている人が見受けられます。

例えば、お客様をお迎えして社長室に通したときに「お客様をお連れしました」と言ったら、そのお客様はどのように感じるでしょうか。

「お連れしました」の「お~する」は上司に対してへりくだる謙譲語であって、お客様に対して尊敬語が使われていることにはなりません。また「連れてくる」は同僚もしくは目下の者に対して用いる表現です。接頭語の「お」を付けて丁寧な敬語にしたつもりなのかもしれませんが、お客様を「お連れする」のは失礼な言い方なのです。正しくは「お客様をご案内しました」と表現すべきです。

このように尊敬語と謙譲語が曖昧なため、混同して以下のように誤用する人がいます。

A:「伊藤課長が申されました」
B:「お客様は応接室におられます」
C:「山田様でございますね」
D:「課長はどちらにいたしますか?」

いかがでしょうか。それぞれ正しい言い方は以下になります。

A:「伊藤課長がおっしゃいました」
B:「お客様は応接室にいらっしゃいます」
C:「山田様でいらっしゃいますね」
D:「課長はどちらになさいますか?」

また、敬意を表そうと丁寧さを心がけるあまりに、つい敬語を不必要に重ねてしまう「二重敬語」も誤った表現です。過剰に敬語を使うと、かえって内容がわかりにくくなり、相手は不快に感じるものです。

例えば次の敬語表現はすべて誤った使い方です。

A:「佐藤部長がおっしゃられました」
B:「お客様はお帰りになられました」
C:「社長がご出社されました」
D:「書類はご覧いただきましたか」

いかがでしょうか。それぞれどこが間違いかおわかりになるでしょうか。

A:「佐藤部長がおっしゃいました」
B:「お客様はお帰りになりました」
C:「社長が出社されました(出社になりました)」
D:「書類はご覧になりましたか」

が正しい敬語表現です。

敬語動詞は普段から使い慣れていれば、上司や面接官に相対したときにも容易にでてきます。大切な場に出て慌てることのないよう、普段から意識して使っていくことが大切です。

今回は言葉づかいの中でも難しいとされる「敬語動詞」についてお話してきました。正しく言葉をつかうことは社会人としてとても重要なポイントになりますので、複数回に分けて社会人として身に付けておきたい言葉のビジネスマナーについてお伝えしたいと思います。

○著者プロフィール: 江上いずみ(えがみ・いずみ)

筑波大学客員教授・札幌国際大学客員教授・Global Manner Springs代表。東京生まれ。筑波大学附属高等学校から慶應義塾大学法学部法律学科卒業。1984年日本航空入社。客室乗務員として30年間で約19,000時間を乗務。オリンピック・パラリンピック教育担当講師として全国の小中高校で「おもてなしの心」をテーマに講演。国内外での年間講演数は250回に及び、「おもてなし学」の構築に取り組む。主な著書は「幸せマナーとおもてなしの基本」(海竜社)、「"心づかい"の極意」(ディスカバートゥエンティワン)

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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