ディズニーR、混雑感増しても顧客満足度急上昇の理由…再値上げor変動価格制導入に注目


 東京ディズニーリゾート(TDR)の「顧客満足度」が急激に上昇している。日本生産性本部・サービス産業生産性協議会の「日本版顧客満足度指数(JCSI)」(2018年度)において、TDRの「顧客満足」が前年度の36位から一気に8位に急浮上したのだ。顧客満足スコアも前年度の77.1から81.1に大きく伸びている。

ここ数年、TDRは顧客満足度の低下が深刻化していた。14年度までは1~2位を維持していたが、15年度は11位に急落。16年度は27位に後退した。17年度はさらに後退したわけだが、18年度はV字を描くように急浮上した。

顧客満足度が低下していた背景のひとつに、入園者数の増加からくる激しい混雑に対する不満がある。

TDRの年間入園者数は増加傾向にある。13年度は開園30周年のイベントでにぎわったこともあり、前年度比14%増の3129.8万人と3000万人の大台を突破。その後は概ね横ばいが続いていたが、いずれも3000万人の大台は維持している。そうしたなか、入園者数の増加に伴い混雑を指摘する声が目立つようになり、それに合わせて顧客満足度の順位は低下していった。

チケット価格の値上げも背景のひとつだ。14年~16年まで3年連続で値上げを実施。東京ディズニーランド(TDL)か東京ディズニーシー(TDS)で使える大人の1日券「1デーパスポート」の価格は、この3年で6200円から7400円まで上がった。この価格の高さが嫌気された面もありそうだ。

TDRにおいて、混雑とチケット価格は顧客満足度に大きな影響を与える2大要因といえるだろう。そこで、この2つを18年度の状況に当てはめて考えてみたい。

まずはチケット価格について見てみる。1デーパスポートの価格は16年4月の改定から現在まで変わってない。一方で年間パスポートは18年3月に値下げしている。TDLとTDSの両方で使える年間パスポート(旧価格は6万~9万3000円)は一律4000円を値下げし、TDL、TDSのどちらかで使える年間パスポート(同4万1000円~6万3000円)は一律2000円値下げした。この値下げが好感されて顧客満足度が高まった可能性がある。ただ、3種類の年間パスポートの保有者は10万人程度にしかならないとみられ、顧客満足度への影響は限定的だろう。

混雑についてはどうか。18年度は混雑感が強まったと考えられる。同年度の入園者数は3255.8万人と、前年度から8%も増えたためだ。これは顧客満足度低下の大きな要因といえるだろう。だが、先述した通り18年度の顧客満足度は高まっている。入園者数が大きく増えて混雑感が増しているにもかかわらずだ。

もっとも、各種施策で混雑感が和らいだ可能性は捨てきれない。たとえば、昨年7月に導入した公式アプリでは、各アトラクションの待ち時間の目安がわかるようにしたり、待ち時間などにグッズを購入して帰り際に土産店に足を運んで商品を受け取れるようにするなど、快適さの向上を図っている。ただ、抜本的な解決策とはいいがたい。

先述した年間パスポートの値下げと合わせて、同パスポート利用の「除外日」を設けたことも混雑緩和策のひとつだ。入園者数が多くなるお盆休みや年末を中心に、年間パスポートが使えない日を設定し、混雑の緩和を図ったのだ。ただ、年間パスポートの保有者数が少ないため、これも効果は限定的だろう。

●顧客満足度が高まった理由

こうした混雑緩和策を実施してきたが、抜本的な解決策と呼べるものは見当たらない。そのため、18年度の混雑感は前年度より強まったと考えられる。良くて“前年度並み”がせいぜいだろう。

混雑とチケット価格の面で顧客満足度が高まった理由は見いだせない。そうなると、理由はほかにある。「開業35周年イベント」が特に大きいだろう。TDRでは、18年4月~19年3月まで特別イベント「ハピエスト・セレブレーション」を開催。開園35周年を記念した新たな昼パレード「ドリーミング・アップ!」を導入するなどした。また、人気アトラクション「イッツ・ア・スモールワールド」をリニューアルしている。

35周年イベントは、売り上げにも大きな影響を及ぼした。入園者数が増加したほか、入園者1人当たりの売上高が19年3月期は前期比1.7%増の1万1815円に高まり、過去最高を更新した。そのなかでも特に商品販売収入が大きく伸び、3.3%増の4122円となった。イベント関連商品が好調だったという。こうした状況から、35周年イベントに対する利用者の評価は高いことがうかがえる。顧客満足度の向上に大きく寄与したといえるだろう。

35周年イベント効果のためか、TDRの「感動させる力」は高まっている。日本生産性本部は顧客満足度指数とともに、利用した際にどの程度感動したかを示す「感動指数」を合わせて公表しているが、TDRの18年度の感動指数は77.8で、17年度(72.6)や16年度(72.1)と比べて大きく上昇しているのだ。35周年イベントに感動する人が続出したのではないか。

35周年イベントはオリエンタルランドの業績に大きく貢献した。19年3月期の連結決算は、売上高が前期比9.7%増の5256億円、営業利益は17.2%増の1292億円だった。大幅な増収増益で、35周年イベントさまさまだろう。

35周年イベントが業績と顧客満足度の向上につながった。しかし、その魔法も今期は解ける。オリエンタルランドは、今期の入園者数は前期比7.9%減の3000万人、入園者1人当たりの売上高は1.5%減の1万1640円と予想している。35周年イベントが終わった反動で大きく落ち込む可能性が高い。

オリエンタルランドの今期の業績予想は、売上高が前期比8.8%減の4792億円、営業利益は28.1%減の929億円とした。純利益は27.7%減の653億円を見込む。

今期は35周年イベントの効果がなくなるため、顧客満足度の低下も予想される。それに関連して焦点となるのが、消費増税への対応だ。主力の1日券の値上げは18年まで2年連続で見送っているが、今年10月に実施される消費税率引き上げと同時に値上げするとの見方がある。その際に単純な値上げを実施すれば、顧客満足度の低下は避けられない。

そこで注目されているのが「変動価格制」の導入だ。変動価格制を導入し、繁忙期の価格を高く、閑散期は低く設定することで需要変動を平準化することができる。

ライバルのユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、今年1月から変動価格制を導入した。導入後の大人1日券の価格を見てみると、閑散期は導入前より安く、連休などの繁忙期は高く設定していることがわかる。ただ、値下げ幅より値上げ幅のほうが大きく、全体では値上げの色が濃い。いずれにせよ、価格帯の引き上げと需要変動の平準化の2つを実現できる施策として関心が集まっている。

TDRでも変動価格制を導入することが十分考えられる。変動価格制は海外のテーマパークでは一般的となっている。変動価格制を導入した海外のテーマパークやUSJの動向を踏まえて、オリエンタルランドは導入の可否を判断することになりそうだ。

顧客満足度を向上させるには、変動価格制の導入以外では、やはりパークの魅力向上に尽きるだろう。そのことは35周年イベントが証明した。

オリエンタルランドはパークの魅力を向上させるため、まずは今年7月に約180億円かけて新アトラクション「ソアリン」をTDSに開設する。20年春には約750億円投じて「美女と野獣」をテーマとする新エリアをTDLに開業する予定だ。22年度には約2500億円投資しTDSの面積を約2割広げて「アナと雪の女王」などをテーマにした新エリアを開設する。こういった施策でパークの魅力を高め、顧客満足度も高めたい考えだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

当記事はビジネスジャーナルの提供記事です。

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