“無用の長物化”する旅行代理店、生き残りかけ開拓する“最後の砦”


 今般、航空機チケットや宿泊予約といった旅行関連の手配は、すべてインターネットで完結できるようになった。しかも、多くのサイトで最安値を検索できる。そのため、わざわざ旅行代理店に頼む必要がなく、旅行代理店離れが加速している。このままでは旅行代理店は無用の長物と化す。そんな危機感が旅行代理店業界に広がっている。

旅行代理店離れは今に始まったことではないが、業界にとって近年で大きなターニングポイントになったのが、てるみくらぶの破綻だった。それまで、なんだかんだ言われながらも旅行代理店への信用は高かった。しかし、同社が破綻し、先払いした旅行代金がほとんど返還されない事態が発生。これが旅行代理店への不信感を一気に高めた。

旅行代理店も、ただ手をこまねいているわけではない。これまで旅行を手配してきたプロとしての自負がある。培ってきたノウハウや代理店間のネットワークが何よりの武器だ。それらを駆使して、新たなマーケットを拓こうという動きが水面下では出てきた。そんな新たな開拓分野として有望視されているのが中南米エリアだ。その理由を大手旅行代理店社員は、こう話す。

「日本から中南米への直行便は、メキシコしか飛んでいません。その便数も少なく、中南米旅行はほとんどが乗り継ぎです。ネットによる個人手配は乗継便を探すのが難しく、手配できても待ち時間が長くなる傾向が強くあります。結局、中南米旅行を個人手配しても、移動時間に多くを費やすことになってしまいかねません。単に飛行機に乗っているだけ、空港で待っているだけの旅行になってしまうのです。代理店に任せれば、そうした乗り継ぎをうまく組んでくれますから、時間を有効的に使えるのです」

また、中南米では多くの国がスペイン語を公用語にしている。高級ホテルなら英語が堪能なスタッフを常駐させているが、ほとんどのホテルのスタッフはスペイン語しか解せない。スペイン語に馴染みの薄い日本人にとって、中南米は言葉が通じない国でもある。中南米の国々と専門に取り引きする貿易会社の幹部は、こう話す。

「意外に思われるかもしれませんが、南米は英語を理解できない人が結構多くいます。日本人のようにカタコトならまだマシなほうで、簡単な単語でもコミュニケーションが取れないケースも珍しくありません。外国人が多い観光地や空港でも、英語が通じないシーンは多くあります。スペイン語ができなければ、中南米旅行の個人手配はハードルが高いと感じます」

●中南米は代理店の優位性を発揮できる

コミュニケーションが取れないことは、旅行に行く心理的なハードルを上げるだろう。しかし、中南米にはガラパゴス諸島、マチュピチュ、イグアスの滝、ウユニ塩湖、ナスカの地上絵といった超メジャー級の観光名所が山のようにある。それだけに日本人の間でも「中南米を旅行したい」という憧れは強い。

従来、日本では中南米旅行への興味・関心は高くなかった。潮目が変わるのは、2014年のワールドカップブラジル大会と16年のリオデジャネイロ五輪が開催されたことだ。

「両大会を通じて南米への距離感は明らかに縮まったと感じます。以前なら、中南米はメキシコのリゾート地・カンクンぐらいしか売れませんでしたが、最近は中南米各地の旅行のリクエストは確実に存在します」(前出・旅行代理店社員)

しかし、中南米旅行は言語のほかにも、個人手配では越えづらいハードルがある。それが、治安の問題だ。ワールドカップ・五輪両大会ともに、開催前はテレビなどでも治安を不安視する報道はたくさんあった。

「比較的、治安がいいとされる中南米の都市でも、犯罪多発エリアは局地的に点在しています。同じ都市でも、区画が変わるだけで危険度が一気に増すことはザラです。そうした安全・危険を個人で把握するのは難しいでしょう。現地の事情に詳しくないと、危険な目に遭遇する確率は高まります。個人手配だと、そうした治安の悪いエリアを判別できませんから、治安の悪い地域のど真ん中にあるホテルを予約してしまうなんてケースもあります。しかし、旅行代理店はそうした情報には特に気を配っていますから、リスクを低減できるのです」(同)

まだまだ中南米の個人旅行手配はハードルが高い。そうした事情から、旅行代理店にとって中南米は代理店の優位性を発揮できる。旅行代理店にとって、中南米はブルーオーシャンであり、業界の救世主でもある。近々、日本で中南米旅行ブームが到来するかもしれない。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)

当記事はビジネスジャーナルの提供記事です。

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