履いたブーツを返品してくる20代女性客、要求を呑んだ店長の真意は?

日刊SPA!

2019/4/29 15:54

「ブーツを買った20代の女性が商品を返品してきたんですが、明らかに履いた形跡がありました。非常識だと驚きましたが、その時の店長の対応に、接客とはなんぞやというスタンスを強く感じることができました」と語るシューズショップ店員の前川保志さん(仮名・35歳)。

◆履いた形跡のあるブーツを「返品したい」という客

JRに隣接している駅ビルの中の靴屋に、女性客がやってきた。3日前に買った1万5000円のブーツを返品したいと言う。

「返品の理由は、『他の店で似たようなブーツが売っていて、そちらの方が安かったからコレ返品します!』って。正直に言えばいいってもんじゃないのに、やれやれと心の中でため息をつきながら、返品されたブーツを見てびっくりしました」

靴底に汚れがこびりついていることから、明らかに何回か履いていると分かったのだ。前川さんは「ちょっとお待ちください」と女性客に断り、ブーツを持って50代の店長の元へ。

「店長は『お客様が言うことが全てだから、返品を受けなさい』とレジからお金を取り出して僕に渡しました。明らかに嘘をついている客に、なぜだろうという疑問が生じたんです」

そこで前川さんは、休憩時間に店長に尋ねると、次のような答えが返ってきたのだという。

「そんな客は放っておいていいよ。こちらが拒否したら、ひょっとして店内で騒ぐかもしれない。そうなると周囲の他のお客さんも不愉快になって帰るかも。店を通ったお客さんも、騒いでいる客を見たら足が遠のいてしまうだろう」

とはいえ、理不尽な要求をすべて受け入れる必要があるのか。前川さんも「店長は店のイメージを損なわないために、何度か履いて汚れている靴の返品を受けつけたってことですか?」と尋ねたそうだ。すると店長はこう言った。

「今日は常連さんも何人かいた。だから、あの人たちのためにも返品を受け付けたんだよ」

だが前川さんは店長の答えに釈然としなかった。

「いくら常連が周りにいても、毅然とした対応を取るべきです」

◆店長の真意とは?

前川さんは、1年半ぐらい前にやってきた30代の女性客を思い出した。外反母趾の症状が進行したため、これから治療をすると言っていた客だった。手術をするか、インソールで調整するかはこれから決めるそうだが、今はまず靴を購入したいということだった。

「後日、返品か交換をしたいとやってきました。その日に購入した靴を履いてみたら、つま先付近の皮が少しよれてしまったとのことで。ぺろんとはがれていましたね。ですが、デザインは気に入っている。だからそのお客の為に、特注で靴を作ってあげたんです」

実はこの靴、製造元は採算が合わないという理由で製造をストップしていた。だが女性客が強く希望していることを知ると、特別に対応してくれることになったのだ。まさに異例の対応だったが、彼女は相当喜んでいたという。だがそれきり、その客は来店しなかったのだ。

「だから、どんなにいいサービスをして、その場で喜んでくれても寄りつかないお客だっている。過剰な誠意を見せるのはどうなのかと思いました」

すると店長がスマホを取り出して操作すると、ある画面を見せてくれた。そこには、外反母趾の女性が購入したあの靴が映っていた。

「女性は外反母趾をテーマにBlogを書いているよ。うちの店で買ったこともね。寄りつく、寄りつかないのは客の自由。でも店にやってこなくても、うちの店の靴が、お客さんに喜ばれているというこがわかると嬉しいね。だから、ひとつのクレーム等で他のお客さんを巻き込んじゃいけないんだ」

たとえ店に来てくれなくても、お客さんが喜ぶことが幸せ。この店長はまさに、接客業の鏡のような人間だろう。

「だから接客は面白いと店長が言っています。彼の言葉がきっかけで、僕もそう思うようになりましたね」

前川さんの店舗では、可能な限りお客の要求を呑むのがスタイル。素晴らしいことだと感じる。だがいい話に水を差すようで悪いが、過剰なサービスが悪質クレーマー増加の原因にならないよう、注意するべきだとは思う。<取材・文/夏目かをる>

― シリーズ・店員が語る困ったモンスター客 ―

【夏目かをる】

コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマン取材をもとに恋愛&婚活&結婚をテーマに執筆。難病克服後に医療ライターとしても活動。ブログ「恋するブログ☆~恋、のような気分で♪」

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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