町工場・蒲田の魅力が体感できるホテルがオープン。下町の職人魂と技術が奏でる美


先週、東京蒲田に『ホテル オリエンタルエクスプレス 東京蒲田』がオープンしました。「蒲田ならではの町工場を感じるホテル」、町工場やそこで働くクラフトマンの『体験価値を持つホテル』がコンセプトです。

ホテルを運営するのは株式会社ホテルマネージメントジャパン。既存のホテルとはまったく違うホテルを作りたかったそうで、地元の町工場と異色のタッグを組みました。

大田区は町工場が3000以上ある地域。実際に使用していた機械や、加工技術が内装やインテリアが随所にあり、宿泊を通して町工場で働く職人のライフスタイルを体験できるとのこと。見どころを紹介します。

さっそく、重厚な工業機械に出迎えられた

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

まず目をひくのが、エントランスの入り口に飾られている旋盤機。回転する台に加工物をとりつけ、工具を当てて工作物を削って作りだす機械です。

これは、「ベルトかけ旋盤」といわれる古いもの。モーターなど、機械の中によくある丸い棒、シャフトを作ります。長年続いていた工場をたたむことになったオーナーから、古い機械なので売れず、処分したいと相談されたそう。

ただ、長年使用されていた思いと歴史がこもっているので、なんとか活かしたいと、インテリアとして採用されたとのこと。ホテルの外から「何だろう」と目をとめてくる方や、懐かしいと感慨深くおっしゃる方もいるそうです。

私の実家は三代続く工作機械の販売店で、同様に後継者がおらず店をたたむ工場から、古い工業機械を引き取ることもありました。子どもの頃見た倉庫の工場機械たちと油のにおい、父の話す機械の背景が思い起こさせられました。

このように、見た目の美しさ技術だけでなく、裏にある背景も感じながら、中を見ていきましょう。

フロアナンバーが、技術を表現する場に

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

まず、部屋に行く前に必見なのがフロアナンバー。それぞれの階で異なる加工技術が駆使されています。

ホテルに入ってすぐ左の展示で、各フロアナンバーで使われた技術のモデルと解説が一覧できます。

技術の「共演」によって実現する美しさ

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

フロアナンバーはエレベーターから降りると、存在感をもって目に入ってきます。6階は「曲げる」がテーマ。
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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

右下の部分に、加工技術とそれを行った町工場の名前が載っています。6の数字を作り出すのは、ステンレスパイプを「曲げる」「溶接」「ガラスビーズブラスト磨き仕上げ」という3つの技術の組み合わせ。

蒲田の町工場の強みのひとつが、工場同士の連携がとれていること。この作品は、協力し合い、技術が合わさって初めて可能になります。それぞれの技術のひとつ欠けても、実現しません。
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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

近くで見ても、溶接部分も金属が描き出す曲線も美しいです。

階ごとに違った技術が詰まっている

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

4階のテーマは「折る」。2社によるスチールプレートの折り曲げ・溶接技術と、ゴールドとシルバーの塗装技術が組み合わさっています。
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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

亀裂が入ることなくピシっと折り曲げられるのも高い技術ならでは。
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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

1Fのテーマは「合せる」。こちらは、共同で作っており、「アクリル切削」「ステンレス切削」「象嵌」の合わせ技。それぞれのパーツを別々につくってはめあわせています。
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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

100分の1ミリの精度で、ピッタリはめこまれます。接着剤がなくても外れることがありません。

ルームナンバープレートも階によって加工が違う

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

ルームナンバープレートも、階によって異なる加工が施されています。6Fは艶消し加工のようです。
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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

3階は虹色に変色させていました。

ステンレスの鍋を使っていると、自然にこうなったのを見たことがあるので、人為的にはどうするのか気になりました。日常で目にするシーンと重ね合わせるのも面白いかもしれません。

普段は脇役なものも主役に

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

また、普段は「縁の下の力持ち」的に使われていて目をとめられない建材が、当ホテルでは装飾の役割を担っています。

客室がある階の廊下の壁は「ガルバリウム鋼板」。アルミニウムと亜鉛の合金メッキ鋼板で、防食性が高いため、建物の外壁や屋根などに使われています。
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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

間近でまじまじと見られる機会はなかなかないのではないでしょうか。

部屋の中にも自然に溶け込んでいる

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幅140cmのベッド。スポーツ選手も愛用するエアウィーヴのマットレスになっています。
Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

こちらはツインルームです。落ち着いた空間で、どこに「工場的要素」があるのかな、と一見思いますが、それを探すのも楽しみのひとつ。
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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

壁の灰色の部分は、「木毛セメント版」。木片などの木質原料とセメントを混合し、板状に圧縮成形したものです。通常は屋根や外壁、畳の下地として使われています。

セメントではありますが、繊維が積み重なることで視覚的にふわっとした柔らかさを感じ、コンクリート打ちっぱなしのように硬くて寒々とした感じはありません
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全室にApple TVとBluetoothスピーカーがあります。
Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

ヘッドボードや内装に使用されているのは「構造用合板」。複数枚のべニアを繊維方向を交互に重ねて接着することで、高い強度を持つ建材です。通常は木造建築物の壁下や床下、屋根下の地材として使われています。

オーディオガイドアプリで見どころを把握

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アプリは4カ国語に対応
Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

こういった「こだわり」は、うっかりすると見逃してしまいそうですが、『ON THE TRIP』を使うと、館内の見どころをガイドしてくれます。

『ON THE TRIP』は神社などの文化財から絶景、カルチャーまで、さまざまな旅先の理解をその場で深められるというGPS連動のスマートフォン向けオーディオガイドアプリですが、公式連携でホテルのプロダクトにまで対応するという試み。

なお、音声はガイドの「テツさん」という架空の年配の職人キャラクターが案内してくれるというユニークな仕様。何があるのかだけでなく、がどういう技術で、どのような思いで作ったのかまで説明してくれます。

また、蒲田周辺の18時以降に開く飲食店の情報も聞けます。お店に実際のお客さんとしてきて、実況しているかのようなテツさんの説明を通し、自分も実際にその場にいるような気持ちになれます。

金属と木、柔と剛とのバランス

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機械部分が露出した1階の天井。正面には町工場の現場の写真がある
Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

工場というと無機質で殺風景になってしまいそうですが、ホテル全体に温かみが感じられ、バランスにこだわったそうです。

金属の銀やコンクリートのグレーの色と同じくらい、木による茶色の配色を意識しているようで、ふんだんに木の素材が使われています。

また、露出している機械部分があっても、前にフェンスやネットを貼ることで、ワンクッションおいて目に入るからでしょう。

飲食スペースから、コミュニケーションが生まれるかも

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

朝食が用意されるレストランでもある、1階のスペースには大きなテーブルが置かれ、開放感があります。

午前1時まで使えるオープンスペースなので、仕事をしたり、旅の予定をたてたりでき、ほかのお客さんとのコミュニケーションも生まれるかもしれません。

なお、頭の上にある照明は1枚の鉄板を2つ折りにしたもの。日本で鉄板の折り加工ができる、最大サイズの「6メートル」となっています。
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せっかくなので、詰めこみまくりました。
Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

今回は朝食の体験もできました。町工場の職人はお弁当を食べたであろうと、ビュッフェ形式で好きなおかずをとって、オリジナルのお弁当を作れるスタイル。

客室に持っていって、部屋食が可能なのも嬉しいところ。なお、大田区は歴史的に海苔問屋が多いので、こだわりの海苔は必食です。また、鎌田で創業90年の老舗のお茶も味わえ、食による大田区の体験ができます。

ねらいと展望

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

『ホテル オリエンタルエクスプレス 東京蒲田』の運営のプロジェクトリーダーは、株式会社ホテルマネージメントジャパンの箕輪将臣さん。

日本ブランドが売りになり、ホテルそのものを目的地としてお客さんに来てもらえ、土地の特性を活かして展開していけるホテルにしたかったそうです。

どうしても旅行者は新宿などのメジャーな都市に宿泊してしまいます。でも、大田区蒲田は空港や鉄道のアクセスがいい場所です。また、昔から町工場がたくさんあり、労働者向けの大衆的な飲食店や、下町ならではの風情が残っています。黒湯といわれる珍しい温泉も点在しており、魅力的な場所だと感じました。

大田区観光情報センター、大田観光協会、大田工業連合 会青年部連絡協議会と連携をはかり、国内外から来る人に、知られざる大田区の魅力を知ってもらいたいそうです。

また、若者が町工場の仕事と魅力を知り、仕事をしたいと入ってきてくれることも期待しているそうです。最近の町工場はコンピューターの導入もふえ、スタイリッシュな環境にもなってきているのだとか。

実際、若い職人もいて、昔ながらの職人だと経験から実現性を考えて制限をかけてしまうところ、自由な発想で独創的な物づくりをしているのだそう。

なお、大田区は町工場が体験できるワークショップを行っており、協力して宿泊ツアーができたらいいかもしれない、とのこと。なかなか興味はあっても、工場の中に入っていきにくい感がありますが、ホテルを通してなら気軽に行きやすくなりますね。

地域そのものに泊まる、という考え方


これはもう、「ホテル」に泊まるのではなく、カルチャーも含めて「大田区・蒲田」に泊まると表現していいでしょう。地域を丸ごと体験するという考え方は、これからのさまざまな地域の先駆けになるのではないかと感じました。

なお宿泊料金は、今ならではの開業記念価格や早割価格もあり、大人1名の朝食つきプランが4090円から、素泊まりプランで2990円からとなっています。

ホテル オリエンタルエクスプレス 東京蒲田

所在地: 〒144-0035 東京都大田区南蒲田1-3-15

URL:https://tokyokamata.hotelorientalexpress.com/

TEL:03-3733-5511

アクセス:京浜急行線「京急蒲田」駅東口より徒歩3分

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

Source: ホテル オリエンタルエクスプレス 東京蒲田

Reference: ON THE TRIP

当記事はライフハッカー[日本版]の提供記事です。

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