fripSide 平成最後の1万字インタビュー  南條愛乃「気持ちはずっと新人のまま」 八木沼悟志「ライブは観れるうちに観ておいたほうがいいよ!」

SPICE

2019/4/26 18:00

2009年に南條愛乃をボーカルに迎えて活動を始めた第2期fripSide。この春、「10周年に10大発表その1」として、11月に開催する全国10カ所のホールツアーを発表した2人に、平成最後のインタビューを敢行!fripSideとしての10年間を振り返ってもらいながら、過ぎ去ろうとしている「平成」についても語ってもらった。


第2期としての10年と、「only my railgun」という楽曲

――“第2期fripSide10周年イヤー”おめでとうございます。改めて、「10周年」ということについてどう感じていますか?

南條:あっという間だなという感じですね。始まった当初は自分も声優としてまだ駆け出しでしたし「2足のわらじは……」というのもあったので、なんとなく4~5年くらいなのかなという感じもしていたんですけど(笑)。

――10年続くとは思ってなかった。

南條:実は最初は「ほかにもボーカルの方がいて、曲に合わせてボーカルを替えるからそんなに大きくとらえてプレッシャーに考えなくてもいいです」みたいなことを言われていて。それも、今となっては事実だったのか罠だったのかわからないですけど(笑)。いつになっても2人目のボーカルが現れないでいるうちに、「LEVEL5-judgelight-」(第2期fripSide、2ndシングル)のレコーディングが始まり、「future gazer」(同3rdシングル)も録り「あれ、私一人なのかな?」みたいな。そんなこともありつつ、気づけばボーカルは一人なんだなと思いながら続けて。始まった当初2~3年くらいの記憶はああだったな、こうだったなというのは思い出せるんですけど、その後は本当にあっという間でしたね。

――「罠」という言葉が出ましたが、実際どうだったんでしょうか? 八木沼さん。

八木沼:罠っていうと、すごく語弊がありますね。

南條:まあ、そうですね(笑)。

八木沼:罠ではない(笑)。ただ、fripSideってもともと南條さんが入る前に7年間活動していた土台があるユニットで。そこに新しいボーカルさんに加入していただく形になるので、いろいろあるじゃないですか。悪い意味ではなく、「やっぱり私は向いてない」とか「この形で続けるのは難しい」となってしまう可能性があって。そうなっても大丈夫なように、レコード会社さんといろいろ相談してはいました。

――八木沼さんが、複数人のボーカルを招くという構想をしていたわけではないんですか?

八木沼:南條さんがボーカルを担当しますという発表のチラシをメーカーさんが作って秋葉原で配布したんですよね。そこに「fripSideは八木沼悟志のプロデュースユニットとして活動します」と書かれていて。僕が確認して出た文ではないんですけど、お互いの合意の下で続いていくものだからっていう方針が裏に隠されていたんじゃないかなと個人的には思っています。でも、南條さんからは「声優業に軸を置きたいから歌の活動はちょっと難しいですね」っていうご返答を何度もいただいていたので、もしかしたら南條さんに対する罠だったのかもしれないですね(笑)。

南條:そうですね……。レーベルのプロデューサーから聞いていたので。「あと2~3人ボーカルがいて、曲調に合わせて増えていくから。だから、ライブも一人で全部やることはないから」って。

八木沼:そんなこと言ってたの!?

南條:今では一人で3~4時間やってるよね(笑)。でも、ふたを開けてみたら、「only my railgun」(第2期fripSide、1stシングル)がドカーンって。

八木沼:行ったね。

南條:そこから「あれ?」ってなっちゃったかもしれないですね。

――南條さん一人で行こうと。

八木沼:なったね、絶対なった。メーカーさんも、第2期fripSideが僕と南條さんっていう体制になって数字が読めなかったと思うんですよ。予想ですけど、いろんなことを担保にしながら最善なことをPRしてくださっていたんじゃないかなと。僕は南條さんが引き受けてくれるように「歌も最高だし、求めている声だからぜひお願いしたい」と、ずっとラブコールを送っていただけなので。そのために周りの人たちが動いてくれた結果なのかもしれない。結果は、良かったんじゃないかなと思いますね。
撮影:岩間辰徳
撮影:岩間辰徳

――南條さんの意識は「only my railgun」のヒットで変化したりしましたか?

南條:キャラソン以外の歌を歌う経験があまりなかったので、自分が持っているものを出すしかない状態でやった感じだったので、それがすごくドカンと売れて「おめでとう」みたいに言われてもぜんぜんピンとこないし、すごいことになっているな、って他人事の感じでしたね。その後2枚、3枚とシングルが増えていきますけど「次も1位を狙っていきましょうよ~」みたいなこともなく(笑)。いただいた曲に対して、その音に合いそうなものを出すということの積み重ねでした。

――今のように10周年を迎えるとは考えていました?

八木沼:10年先ってまったく予想がつかないじゃないですか。今この時点から10年先がどうなっているかもわからないですし。始めた当初、もちろん僕は結果も出てこの2人のfripSideもどんどん良いように発展していくことを望みながらも、やっぱりプロなので数字が追い付いてこないとダメなんだろうなということを感じながら、最大限に努力するという10年間でしたね。

――「only my railgun」の発売が、2009年の11月4日でした。10年経った実感はありますか?

八木沼:10年前って思えないよね、ぜんぜん。

南條:ちょっと前に愛美ちゃんが『バンドリ!』のPoppin'Partyで「only my railgun」をカバーしてくださって。その感想のなかに「『バンドリ!』から入って本家を聴いて良かった」っていうのがあって驚いたんです。変な意味じゃないんですけど『超電磁砲』を知らないオタクがいるんだ!? って。それくらい私たちはフェスとかに行っても毎回歌っていたし、fripSideにとっては当たり前な、いちばん近いところにある楽曲だったので。そう思いながら読んでいたら、書いている方が(アニメ『とある科学の超電磁砲』第1期放送時)当時小学生とか幼稚園とかで、「10年ってそういうことなんだ」と思って。

――下の世代が入ってくるには十分な時間ですよね。

南條:みんな10年前にfripSideを知って、同じペースで歩んできたと思っていたんですけど、さらにその下に若い子たちが生まれては育ちをしていて。当時幼稚園とかだと知らないよなと。ありがたいことにいろんな方にもカバーしていただいているので、そこから知って、さらに本家も聴いて。10年前なので私の声も歌い方もぜんぜん違いますけど、それを良いと言ってくださったり、うちのライブに来てくれて「生で初めて聴けました」って。5~6年前とかは「またonly my railgunかよ」ってすごく言われていたんですけど。

八木沼:「もう飽きた」とかね。

南條:「聴きたかったのが生で聴けてうれしかったです」とか言われて、10年って長いんだなって。嬉しいというか、ありがたいことですね。

――マスターピースになったんでしょうね。石川さゆりさんには「天城越え」を歌ってほしいみたいな。

八木沼:「飽きた」って声があがっていた時期に言ったことがあるんですよ。「でもさあ、今日初めて来ているお客さんもいるわけでしょ? 谷村新司さんがコンサートで名曲『昴』を歌わなかったらつまらないでしょ」って。

南條:ライブでも言ってましたね。

八木沼:「only my railgun」はずっとセットリストから外さず大切に歌ってきた。常に僕らのいちばん近くにあって、そこから離れないfripSide像というのを10年貫けたから良かったんじゃないかなと思うんですよね。

――楽曲制作しながら、fripSideにとって重要な1曲になるという予感みたいなものはありましたか?

八木沼:ないですよ。前任のボーカルのnaoさんが辞める前にTVアニメ『恋姫無双』の主題歌(「Flower of Bravery」)を担当したときは(オリコンの)ランキングでも26位で……。俺の音楽ってこんなもんなんだなと思い知らされて。「only my railgun」は自分なりに作りながら手応えはありました。でも、僕はあまりアニメとかもその当時は詳しくなかったので『とある科学の超電磁砲』というタイトルがどれくらいの大きさなのかもぜんぜん予想がつかなくて。ただ、曲ができて南條さんのレコーディングをした瞬間に、「これハマってるな」と思ったんですよね。でも、こんなに認知されるとは思いませんでした。

――当時だとアニメもヒットしましたし、ミュージックビデオにマギー審司さんが出てきたり、いろいろな面から話題になりましたよね。

八木沼:ミュージックビデオについては、僕もメーカーも自信がなかったんですよ。当時、「ただ南條さんと八木沼悟志をカッコよく撮影しただけでMVが成立する?」なんていう話もあって。それで、おもしろ芸人を入れようっていう話になったんですよね。それが結果として良かったんですけど、あれで止められなくなったよね。

南條:そうですね(笑)。

撮影:岩間辰徳
撮影:岩間辰徳

――この10年の活動でとくに思い入れのある曲、転機になった曲というと最初に浮かぶのは「only my railgun」でしょうか。

八木沼:あれはスタートダッシュの曲なので、転機という意味では違う曲ですね。どれも思い入れがあるので難しいですけど、「Decade」(2012年12月5日発売、アルバム『Decade』収録)という曲は南條さんと前任ボーカルのnaoさんがデュエットしている曲で。fripSideの活動10周年アルバムの曲だから、南條さんが入って3年目に作った曲なんですね。そこで明確に現行のfripSideが南條さんにバトンタッチされたような感じがしました。それまでの3年間は暗中模索、もがきながら作っていた印象があるんですけど、それ以降の僕と南ちゃんの作品っていうのは自然とできあがっていっている感じですね。

――南條さんにとっての「Decade」はどういった曲ですか?

南條:やっぱりfripSideのボーカルが代わって、それまでを応援してくださった方と、「railgun」から知ってくださった方がないまぜになっている時期は「ボーカルはどっちのほうが~」って比べられもするし、曲に対してやれることはやるけれども「自分がここにいていいのか」っていうのがもやもやと最初の3年間は続いていたんです。そこに「Decade」という曲ができて、fripSide10周年のライブでnaoちゃんと一緒にステージに立って。そのとき、satさんは「バトンタッチ」と言っていましたけど、はじめて「naoちゃんはnaoちゃんだし、私は私」って。「どっちがどう」とかいう意見は気にならなくなりましたね。お客さんのなかでも、同じfripSideという冠はついているけど別物でもいいし、どっちがどうって決めなくてもいいんだ、みたいな空気が見え始めましたね。

――南條さんにとっても転機の曲だったと。

南條:私にとっては「Decade」ともう1曲、「sister's noise」も転機になった曲ですね。基本的に今も、いただいたものに対して自分ができることをするっていうのは変わらないんですけど、fripSideではfripSideっぽい歌い方、ほかとは違う表現ができるんじゃないかと思っていたなかでできてきたのが「sister's noise」で。明確に歌い方を変えてやろうと思っていたわけではないんですけど、自然といつもと歌い方が違うなとレコーディング中に感じて。この曲をきっかけに、自分のなかで思うfripSideとしての南條愛乃の歌い方がだんだん膨らんでいったような気がしています。

八木沼:ちょうど俺もそうだな、「sister's noise」は自分のなかで楽曲のクオリティの限界を突破したなという感じがあったんですよね。南ちゃんが歌ってくれてミキシングしながら、これは自分が目指していた限界、ハードルを超えたなと思ったんですよね。彼女の歌が変わったことで引っ張ってくれたんじゃないかなと思っていますね。それ以前は僕のクリエイションで彼女の歌を引っ張っていて、そのあとは南條さんの歌声に僕のクリエイションが引っ張られているような気がしています。その変革の時期が「sister's noise」くらいだったかなって気がしますね。

――2012年の終わりから2013年初頭にそういった変化があったんですね。それから6年は前と。

南條:早いですよね、この間っていう気がするんですけどね。

fripSideにとってプラスに働いた 「ALTIMAとangelaの存在」

――fripSide以外の方との出会いで、影響を受けたり印象に残っている人はいますか?

八木沼:僕は黒崎真音さんとmotsuさんと一緒にALTIMAというユニットをやっていまして。今は活動休止中なんですけど、「とりあえずやってみよう、できなくてもチャレンジしてみよう」というユニットなんですね。そこで2人からもらった、より音楽を愛するための方法、「楽しい!」みたいな気持ちをfripSideに良い形で投影できたかなと思っています。こうやって南條さんと10周年を迎えられるための、モチベーションをくれたのはALTIMAの2人だと思っているし、すごく感謝しています。

――精神的な部分での影響が大きかったんですね。

八木沼:それだけじゃなくて、ALTIMAって僕がfripSideでやりたくてもできないことをやれるストレス解消のはけ口でもあって。こういう音楽をやってみたいけどfripSideでやるにはピーキーすぎるでしょ、っていう曲をALTIMAでやっていたので、fripSideにとってはプラスになったんじゃないかなと思いますね。

南條:私はシングル「僕は僕であって」と「The end of escape」でコラボさせて頂いたangelaさんですね。フェスとかで1曲限りのコラボみたいなことはたまにありましたけど、angelaさんとはMVも撮って、お互いのライブに出たり出てもらったり。一緒にフェスにも出たり。1曲限りじゃないお付き合いをさせてもらった外部の方で別ユニットの方って初めてだったので。

――アニソン界で男女の2人組ユニットというとangelaかfripSideが思い浮かぶじゃないですか。馬場と猪木のタッグみたいな印象がありましたね。いよいよそこが組むかと。

南條:でも、私からしたらめちゃくちゃ先輩なわけじゃないですか。atsukoさんはすごくパワフルな方ですけど優しくて気さくに話しかけてくださったり。ステージ上でもすごく引っ張ってもらって、歌いながら向けてくれる目線の優しさとかお勉強させていただくことが多くて、素敵な先輩だなと思っています。もし別の方とコラボとかそういう機会があったら私も……10年経っちゃったので後輩の子も出てくるじゃないですか。気持ちはずっと新人のままでビビりのままなんですけど、こういうふうに接してあげたら後輩の人も安心するんだなと。

八木沼:(angelaとは)同世代なんですけど、僕がゲームとかを作っていたときに、彼らはアニソンを歌っていたのでアニソン界ではずっと先輩なので。いろんな人に対するホスピタリティ精神っていうのかな。あれは本当に勉強になりますよね。こう接すればこうスムーズになるんだなって。

――コミケで出展されていたときも「angelaがいま~す」って呼び込みしていましたからね。すごいなと。

八木沼:気取らないですよね。

10年やって言えるようになった「精一杯がんばります」

――この10年で自分が変わったと思うところは……南條さんは「気持ちはずっと新人」とおっしゃっていましたが、かなりいろいろ変化がありそうです。

南條:そうですね、強くなったなと(笑)。10年前は、良くも悪くも純粋で……鎧とかも何も持っていないむき出しの状態で表に立っていた感じがするんですけど、そこからライブとかいろいろな経験をさせていただいて。自分のなかで捨てていいものは捨てられるようになったし、守らなきゃならないものも分かってきたり、人前に立つときの心構えとか……。できていないことや未熟だと思うこともめちゃくちゃいっぱいあるんですけど。

――当時の「むき出しの状態で表に立っていた」というのはどんな感じでしたか?

南條:10年前は、自分がいかに傷つかないかっていうことが念頭にあって。でも「できます」風な顔をして表に立っていましたね。今はできないこともいっぱいあるけど、足りないものを自覚しながらお客さんに楽しんでもらうにはどうしたらいいのかとか、自分のことより周りのことを第一に考えられるようになった。自分のことを言われても腹は立たないけど、違う人のことを言われると腹が立つとか、そういうことをひっくるめて強くなったような気がします。

――傷つくのが怖くなくなったんですかね?

南條:なんですかね、傷つくことはそれはありますけど、自分ができてないところをつつかれても「ごもっとも」という感じですし。それが表に見えちゃうのは良くないですけど、傷つくとは違うし。なんでしょうね、全部出来ているわけではないですけど、受け入れる。俯瞰で観られるようになったんですかね。

撮影:岩間辰徳
撮影:岩間辰徳

――前だったら、痛いところを突かれたときは「やめてくれ」みたいな反応をしていたんですか?

南條:「ぜんぜんわかってない!」みたいな(笑)。「いろいろあるんだ、こっちには!」みたいな感じで、自分を守るところに100%自分の意識を向けるっていう感じだったんですけど。今だと、そういうことを言われても「そうなんだよ……がんばってはいるんだけどね」って。

――器が大きくなったんですかね。

南條:どうなんですかね。10年経って、20代前半だったのが30代半ばに差し掛かりいろいろなものがどうでも良くなったようなところもあるかもしれないですけど(笑)。

――八木沼さんはどういった変化を感じていますか?

八木沼:僕はアーティストとして前に出させていただいていますけど、本分は曲作りとかプロデュースなので。そのクリエイションの面ですごく精神的に変わったなと思っています。音楽を作り出すのを楽しんでいるんですよ、今は。10年前は聴いてくれる人たちが良いと思う基準と自分の基準が合っているか。その定規が同じなのかわからず、ビクビクしながら作っていたんですね。10年間やらせていただいて、だいたい僕がこういう風に作ってそこに南條さんがこういう歌を入れると、これはたぶん正解だなというのがより明確になってきていて。あとは楽しんで作るだけじゃないかって。10年前はタイアップが来ると怖い。できることならやらないほうが良い……くらいに思っていたんですけど、今は「どんどんください! 早く次行こう」って思っているかな。

――やはり、お2人とも器が大きくなった感がありますね。

八木沼:10年間で太って痩せたんですよ。器は大きいですよ(笑)。まあ、こだわりがなくなりましたよね。うまく言葉にできないんですけどね、自分の直感が信じられるようになったんですかね。

南條:satさんの話を聞きながら思ったのは、自分の力量がわかるようになってきたのかなっていう気がします。

八木沼:あ、俺もそれかも。

南條:昔は虚勢を張って「fripSideの南條愛乃ですから!」みたいな感じだったのが、今は「こんなことしか私はできないけど精いっぱい頑張ります」の気持ちになって楽になったのかもしれないです。

八木沼:俺も同じ。これしか作れないけど精いっぱいやるよって言えるようになったからかな。

――10年間突っ走ってきて、余計な力が抜けて走りやすいフォームになってきたんですかね。

南條:余分なウエアを脱いで。

――10年前の映像なんかを見ると、確かに南條さんは……。

南條:「only my railgun」の映像とか、何していいかわからなくてクネクネしてるんですよ。あれ一生流さないでほしいなって。カラオケとか止めてくれって(笑)。

――虚勢を張って立っていると言われると、そうだったのかなと思いますね。

南條:そうですね、fripSideのボーカルはこうあるべきみたいなものがあったんですけど。最近は、曲中はがんばってカッコつけますけどMCとかは素のままになってきましたし。人間っぽさが増したのかもしれないですね。

――デジタルサウンドだから、それに合わせようとして。

南條:カッコいいしスタイリッシュなイメージがあったから。「railgun」とかも強い曲なので、そこに自分を合わせていかなきゃみたいな気持ちがあったんですけど。それはそれ、これはこれ。「お休み大好き!」みたいな(笑)。

お客さんもいい意味で人間臭くなってきている

――ご自身やfripSideとしての変化について聞いてきましたが、逆にお2人から見た周りの環境。お客さんだったり、アニソンシーンについて感じることはありますか?

八木沼:いちばん顕著なのは、ライブ会場で親子連れを見るようになったことですかね。ちょうど僕くらいの年齢の親御さんで中学生くらいの子どもを連れて来ている方とかけっこういますよ。お子さんが一緒にきてくれているのはうれしいですね。
撮影:岩間辰徳
撮影:岩間辰徳

南條:10年経ってますからね。

――親子で楽しめるコンテンツに。

南條:もっとMC考えなきゃいけないかな。「会場のみんな~!」って(笑)。

――歌のお姉さんとキーボードのお兄さんに(笑)。南條さんからはどういった変化を感じますか?

南條:私は音楽シーンとかそういう話はぜんぜんわからないんですけど、ライブだと10年前に知ってくださった方も単純計算で+10歳なので、お客さんもいい意味で人間くさくなっているというか。当時は客席を観る余裕なんかもぜんぜんなかったんですけど、fripSideの曲を聴きに来ているお客さんでいっぱいのライブ会場だと、ゴリゴリしているイメージを持たれている方もいると思うんですけど、けっこうみんなすごい満面の笑顔で観ていたりとか、泣いていたりとか。MCとかはゲラゲラ笑ってくれるし。盛り上がるところは盛り上がるし、聴くところは聴くし、みたいな。

――お客さんもクールな人ばかりではないと。

南條:なんか「fripSideのライブとか、怖いんじゃないの?」っていうイメージを持っている方もいると思いますけど、それこそ親子連れとかもいるので、来てみてほしいなと思いますね。曲はデジタルですけどすごくお客さんは人間らしい感じで。10年のなかでいつから応援してくださっているかはわからないですけど、何年か分の曲とかライブとかの共通の思い出とかもできてきたりしていて。温かい空気も感じますね。曲はバキバキだけども、雰囲気としてはすごくまろやかというか柔らかさもあるので。

――ちょうどいま、アニメファンにも新しい世代が入ってきている時期ですよね。先ほどあがった『バンドリ!』でも「God knows...」(2006年のアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』劇中歌)を新曲だと思っている人がいたり。そういったなかで、fripSideの曲はカバーされることも多いし、良い形の広がりがあるのかなと。

八木沼:カバーするってレコード会社とかいろんなハードルがあるじゃないですか。それを超えて皆さんカバーしてくださっているので、それはうれしいですね。

南條:カラオケランキングとか見ても、いまだに「only my railgun」が入っていたりしてうれしいですね。定番曲というか、そういうアニソンになっているんだなって。ただ、実感はないんですよ。フェスでも自分のライブでも絶対に歌う曲だから。自分のなかでの立ち位置は変わらないんですけど。

八木沼:何回歌ったかね、もう目をつぶってでも弾けますよ。

南條:私はいまだに歌詞を間違えます(笑)。

反骨心を失ったらダメになる

――そんな10周年、10大発表の第1弾ということで、11月からのライブツアーが発表されました。どういったライブにしていきたいですか?

南條:どんなセトリをsatさんが考えるのかなというのもあるんですけど。来てくれるみんなも、曲を聴いては「このCDリリースされたとき、ああだったなあ」とか思い出してくれるのかなとか「この曲を聴くとあのライブを思い出すなあ」とかあるのかなと。私のなかでも、もしかしたら歌いながらこれまでにやったライブを思い出すようなことがあるかもしれないし。リアルタイムでやっているんだけど、過去のこともなんとなく思い出すタイムマシンみたいな。

――過去がオーバーラップしてくるような感覚は、長く続けているからこそのものですよね。

南條:10周年という言葉に引っ張られて、10年分の何かを思い出したり追体験したりするのかなという気がざっくりとしています。ただ、この間終わったばかりのツアー(『fripSide Concert Tour 2018-2019 -infinite synthesis 4- 』)の最後のセトリが、本当に“ベストオブ・ベストオブ・ベスト”みたいなセトリで、とにかく死んだので……。10周年記念ということで、さらに“ベストオブ・ベストオブ・ベストオブ・ベスト”みたいなものが来たら、そんな振り返ってる余裕は私にもお客さんにもないかもしれないですね(笑)。そういう意味も含めてどんなライブになるか未知数なので私も楽しみですね。「only my railgun」がどの位置に入ってくるのか、とかも含め。
撮影:岩間辰徳
撮影:岩間辰徳

八木沼:10周年だから10カ所のツアー……こじつけてますねえ(笑)。たぶんですけど、南條さんと僕の10年間をいろんな角度から振り返るツアーにしたいというのが主軸になりつつも、10大発表はこれからまだありますからね。春、夏の活動も踏まえたツアーにしたいですね。でも、10年ってビックリですね。

――さっきもちょっとお話しましたけど、小さいころの10年ってものすごく大きいですけど最近の10年ってあっという間ですよね。

八木沼:10年で生活変わった?

南條:変わってないですね。

――そのなかで歌い続けてきた「only my railgun」が新しいアニメファンにも受け入れられているというお話もあって。

八木沼:そうですね。ただ、厳しい見方をすると「only my railgun」だけだったら僕らたぶんいまここにいないんですよね。それ以外のアニソンだったり、あまりスポットの当たらないオリジナルアルバムだったり、そういうところでお客さんをガッカリさせていないからやれている自負があって。だから“「only my railgun」のfripSide”と言われると「あ゛ぁ゛!?」って思うときはあるんですよ。その反骨心をなくすと僕はダメになるだろうなと思っていて。そこだけは曲げないですね。

――10周年のツアーも、話を聞いていると昔を振り返るだけのツアーにはならなさそうな気がしますね。

南條:曲にしても人間味の多い曲が増えてきているなというのがここ数年の印象かもしれないですね。歌詞の印象にしても、10年前だったらこの単語はNGだったけど今だったらOKみたいなものもあります。

fripSideから見た「平成」とは

――大きく打ちだされた「第2期fripSide10周年」という言葉もそうですけど、そういった形での区切りってひとつの節目になりますよね。5月からは元号も変わりますし。ちなみに、平成はどうでした?

南條:平成……弟が平成元年生まれなんですよ。その弟にも嫁ができ、子供ができ、いま家を建てようとしてますからね。あいつ、めっちゃ順調な人生送ってるなみたいな(笑)。

――正直、このざっくりした質問をするかどうか迷ったんですが、“平成最後のfripSideインタビュー”として聞いてみたいなと(笑)。

南條:私は昭和59年生まれなので、30年前だと5歳……。そうですね、平成。いろんなことがありました(笑)。あんな引っ込み思案で、授業で発表するのも嫌だった私が人前に立って歌うなんて思ってもみなかったですね。平成は……すごいですね! って、まとめが雑!(笑)

八木沼:(笑)。僕は平成元年が中2でしたから、そうすると思春期真っただ中じゃないですか。当時はぼんやりと音楽家になりたいけど、そんな夢みたいなことが叶うわけないだろうと思っていて。結局、普通の会社に就職して。でも音楽がやりたいとfripSideを作り、そこから今日までですよね。だから、そうだな……ずっと音楽やってたなあ、30年。それしかないですかね。もっと普通の遊びとか、普通の人が享受するような楽しみをかなぐり捨てて音楽に打ち込んだなという印象があるので。それが人生としてよかったのかよくなかったのか、まだわからないですけど、平成が終わっちゃうのはちょっと寂しいなという印象があるかな。

撮影:岩間辰徳
撮影:岩間辰徳

――ありがとうございます! 最後に、10周年ツアーについて読者に向けてアピールを。

南條:私が加入してから10周年で、皆さんがいつからfripSideを知って追いかけてくださっているんだろう。「ここ最近のライブはずっと行ってるぜ!」みたいな人は一緒に10周年をお祝いしてくれたらうれしいです。ただ、10年あるといろんな事情があったり、アニメから離れちゃったという人もいると思うんですけど、そういう久々に行くかっていう人も来てほしいなと思いますね。10年前に観たことがある人とかは、ぜひ来てもらって「南條、成長したやん」みたいに感じてもらえたらなと(笑)。頑張ります。

八木沼:僕も南條さんと同じで、よく足を運んでくださる方だけでなく最近見てないなという人にも来ていただきたいですね。先のことはわからないですから。観れるうちに観ておいたほうがいいよ! と言いたい。親子連れとか、友だちを誘ってとか、たくさんの人に来ていただけると嬉しいですね。期待に応えられるよう、10年分の感謝の気持ちとか、10年かけて築き上げてきたものをすべてお見せできるようなセットリストや演出、パフォーマンスで臨みたいと思っています。

取材・文=藤村修二・加東岳史 撮影:岩間辰徳

当記事はSPICEの提供記事です。

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