賞賛される『わたし、定時で帰ります。』への違和感の正体

wezzy

2019/4/25 09:05


 4月16日から新ドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)がスタートした。同作品は、朱野帰子著の同名小説が原作で、「絶対残業しない」「必ず定時で帰る」をモットーにWeb制作会社で働く東山結衣(吉高由里子)が織り成すワーキングドラマだ。第1話では、新入社員の教育係を任されるも、ジェネレーションギャップに苦しむモーレツ社員気質がある同僚・三谷佳菜子(シシド・カフカ)に、東山が定時で帰ることにこだわるようになった理由を明かし、三谷を元気づける姿が描かれた。

また第1話には、上司の福永清次(ユースケ・サンタマリア)が東山に「もっと頑張ろうよ、まだ仕事してる人いるんだし。自分ことしかしない人? お給料貰えればそれで良い人?」と定時で帰ることをなじられるシーンや、三谷が新人に「新人というものは始業30分前に会社に来るもの」と説教するシーンなどがあった。ワークライフバランスを重視する東山を始めとした若手社員VS旧態依然の感覚を持つ社員という構図でストーリーが展開していくようだ。

働き方をテーマにしたドラマだけあって、「今年から年有給消化義務というお達しが……」というセリフが出てくるなど、今年4月に施行された働き方改革関連法案についてもキチンと反映させている。ただその演出においては、2019年4月から放送するにしては少々時代遅れな気がしてならないと筆者には感じられた。

小説「わたし、定時で帰ります。」は、2016年8月から『yom yom』(新潮社)で連載をスタートしている。3年前であればこの対立構造も目新しさがあっただろう。ただ、時代は進み長時間労働を抑制するべく、定時退社を促す機運は世代を問わず高まっている。もちろんそこがどれほどのブラック職場かにもよるだろうが、2019年4月現在、定時で帰ろうとする東山の働き方は決してマイノリティとはいえないのではないか。

そもそも残業自体は依然として残っているものの、その原因は「上司が仕事をしているから帰りにくい」「残業を美徳とする風潮がある」といった昔ながらのものだけだろうか。株式会社IBJが先日発表した調査結果によると、残業の理由の理由で最も多かったのが「仕事が終わらない、人手が足りない」で、半数以上を占めた。業務過多や人手不足がビジネスパーソンの最新かつ現状の悩みであり、効率よく働いて定時で帰ろうとする東山の働き方を異端視するストーリー構成に違和感を覚える。

同作品のストーリーは非常に見やすく面白かった。数年前に放送されていれば、「定時で帰ることにこだわる」という“斬新な”働き方をする東山の言動に、毎週釘付けになる視聴者も多かったかもしれない。ただ、今の時代では東山のやっていることは特に珍しくなく、アンチヒーローというわけでもない。

筆者は、「ドラマは時代のトレンドを作るコンテンツ」と考えている。同作品には今の働き方を揶揄するアンチテーゼをぶつけてくれることを期待していただけに少し落胆してしまった。逆に、「ドラマは時代のトレンドを作るコンテンツ」という考え方こそが旧態依然としているのかもしれないが……。第2話以降の展開にはまだ期待を残したい。

当記事はwezzyの提供記事です。

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