“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士が見たピエール瀧出演作『麻雀放浪記2020』

日刊サイゾー

2019/4/18 19:00



“キング・オブ・アウトロー”こと瓜田純士(39)が、森羅万象を批評する不定期連載。今回のテーマは、ピエール瀧の逮捕で一時は上映が危ぶまれたが、最終的にはノーカットでの公開が決まった話題作『麻雀放浪記2020』(白石和弥監督)だ。「麻雀はあまり好きじゃないけど、白石監督とピエール瀧は好き」という瓜田は、果たしてこの映画を気に入るのかどうか――。

原案は、阿佐田哲也の250万部を超えるベストセラー小説『麻雀放浪記』。1984年には、和田誠監督、真田広之主演で映画化もされた。

それから35年ぶりの映画化となった『麻雀放浪記2020』は、白石和彌が監督を務め、斎藤工が主人公の“坊や哲”を演じる。1945年の戦後から、第三次世界大戦により東京オリンピックが中止になった2020年の新たな戦後へ、主人公がタイムスリップする設定でリメイク。20台のiPhoneを駆使して全編を撮影したらしく、これは邦画では初の試みだという。

「原案の本は読んでないし、前作の映画も見てない」という瓜田だが、「白石監督の作品はこれまでハズレがないし、ピエール瀧の演技も楽しみ」と言って、愛妻と共に映画館に入っていった。ピエール瀧逮捕によるPR効果もあってか、キャパ80席ほどの場内は満員。客層は20代風から60代風まで幅広く、男女比は7:3といったところか。

以下は、上映終了後の瓜田夫婦のコメントである。

* * *

――まず映画の感想に入る前に、おふたりの麻雀歴を教えてください。

瓜田純士(以下、純士) 小学生のときに麻雀の教本を買って、一生懸命ルールを覚えようとしたけど、点数計算や役が頭に入らず、麻雀ゲームをやっても負けっぱなしだったから、以後ドンジャラに逃げました(笑)。でも、ある程度の役や、燕返しとかのイカサマは知ってますよ。少年マガジンで『哲也-雀聖と呼ばれた男』を読んでたからかな。

瓜田麗子(以下、麗子) ウチは小学生の頃、ファミコンの麻雀ゲームにハマって、一時期やりまくってました。ルールや役はほどんどわかりませんが、この映画に出てくる麻雀シーンの意味は、イカサマも含め、ある程度理解できました。

――そんなおふたりから見て、この映画はいかがでしたか?

純士 最初の30分ぐらいはあまりに幼稚くさい展開に目と心が追いつかなかったけど、「あ、これは完全にコメディタッチなのか。原案や前作とはまるで別物なんだろうな」とわかってからは、そこそこ楽しめました。ただ、二度見たいとは思わない。

麗子 軽くて薄くて、おもんなかった。悪く言えば、学生の映画研究会の作品を見てる感じ。よく言えば、『世にも奇妙な物語』(フジテレビ)の中の一話をスペシャル版として映画化した感じ。どっちにせよ、内容的には15分で十分。2時間以上はきつかったわ~。

純士 確かに。でも原案や前作に失礼がないように、タイムスリップという新たな構想を入れてるところは面白いと思った。設定や作風をガラリと変えたんでしょうね。僕、あれを思い出したんですよ。北野武監督の『座頭市』を。昔の『座頭市』があまりにも素晴らしかったから、北野監督は金髪やタップダンスを交えたりして別物に仕上げたでしょう。それに近いんじゃないか。北野監督が昔の作品を傷つけまいとしたように、白石監督もあえてポップにAIとかも入れてエンタメにした。そういう作り手の仁義みたいなものを感じたし、そこがたいしもんだと思いました。

麗子 でも、白石監督のカラーが出てへんかったんちゃう? 『凶悪』とか『日本で一番悪い奴ら』とか『孤狼の血』は、めっちゃおもろかったのになぁ……。

純士 映像では(白石カラーが)出てたよ。戦後の雰囲気とか、暴力シーンとか、お札の置き方とか。

――話題のピエール瀧はいかがだったでしょう?

純士 いてもいなくても一緒。これまでの白石作品のピエール瀧はすごくよかったけど、今回の役は、彼じゃなくてもよかったんじゃないかな。

麗子 出番もそれほど多くないしな。

純士 逮捕者が出演することによる社会的影響が問題視されてるけど、心配しないでも、「そんなにヒットしねえよ!」って思いました。

――この作品は、斎藤工が10年間構想を温めていたものらしいですね。

純士 斎藤工はしょっぱいからなぁ……。

――しょっぱい、とは?

純士 しょっぱいじゃないですか。クセというか生き方がにじみ出てないから、オーラがないというか全部が軽い。そんな彼がコメディをやっても面白くはなりづらいですよ。

――斎藤工はテレビでお笑い芸人と度々コラボをするなど、いろいろなことに挑戦していますが。

純士 彼のこと、好きなんですよ。根性あるし。ただ、それでコメディ映画が面白くなるかどうかは別なんで。一人間としては好感を持ってるけど、演じることに関してはやっぱ、ピエール瀧の方が魅力的。ちょっと可哀想なんだけど、ルックス先行で出てきた人たちの性(さが)で、何をしても軽いんですよ。役者って、生き方や経験で味が出てくるものだと思うんだけど、斎藤工はまだまだ味が薄い。

――フンドシ姿で頑張っていましたが。

純士 福山雅治にも同じことを感じるんだけど、「イケメンが下品なことをするのが格好いい」という世界観って、ダサいんですよ。せっかくモデル体型で格好いいんだから、そんな柄にもないことをせずに、イケメンキャラでいればいいのにって思う。

麗子 痛いねん、見てて。

純士 彼が、阿佐田哲也の『麻雀放浪記』やコメディを好きなのはわかる。でも「俺はなんでもできる」というのは、ファンが求めてない気がする。そういうのは得意な人がやればいい。竹中直人だけがシモに徹してりゃよかったんですよ。

――本作の竹中直人はどうでしたか?

純士 竹中はクセがありすぎて昔から苦手だったけど、この映画を見て好きになりました。彼はいつも「クセがあるアピール」がすごいんですよ。本当に味があってうまいのは香川照之であって、竹中じゃない。竹中までいくと、ただの変な人なんですよ。でも今回はよかった。荒唐無稽な作品の世界観に合ってたからかな。

麗子 ウチも竹中直人の頑張って変なことしてる感が今まであんま好きちゃうかったけど、今日のはちょっと見やすかった。ただ、オナラ連発とかは誰も求めてないし、おもんないどころか汚くて生理的に無理やから、ない方がよかったと思う。

純士 一番よかった役者は、ヒロインのドテ子を演じた子(チャラン・ポ・ランタン「もも」)かもしれない。いい塩梅なんですよ、スタイルや顔の垢抜けなさが。オンライン麻雀に没頭する斎藤工から、タブレットを取り上げるシーンとか可愛かったじゃないですか。サセ子の私なんかどうせダメでしょと思いつつ、斎藤工のことをどんどん好きになっちゃう様子にリアリティがありました。

――AI搭載のアンドロイド役を演じたベッキーはどうだったでしょう?

純士 話題性重視のキャスティングでしょうけど、アンドロイドを演じるのは年齢的に無理があった気がします。

麗子 ほうれい線とか生活感が出てて、アンドロイドっぽくなかったもんな。芝居はうまいし、よかったけど。

純士 まあでもこの映画は、近未来のリアリティはハナから追求してないと思う。2020年つったら来年の話なのに、セグウェイでオフィスを走り回ったりしてるやりすぎな感じは、明らかに意図的なギャグでしょう。

近未来なのに子どもたちが路地裏でチンチロリンをしてる感じや、警察が制圧にくるあの感じは、園子温監督の『TOKYO TRIBE』の世界観にも近かったですね。それをよしとするか否とするかは、好き嫌いでしょう。僕個人の感想を言うと、昭和テイストの犯罪ものやヤクザものを撮らせたら天下一品の白石監督も、ことコメディになると、古い人が無理して若ぶってる感が出ちゃってる気がした。でも、『TOKYO TRIBE』よりはよかったです。一応、笑いもあったし。

――麻雀シーンの緊迫感はどうでしたか?

純士 誰も強そうに見えなかったから、まったくヒリヒリしなかった。たとえば、斎藤工とか竹野内豊とか福山雅治が凶悪犯の役をやって、女を誘拐して「おまえを殺すぞ!」と言っても、「100%殺さないな」ってわかるじゃないですか。でも、ピエール瀧とかリリー・フランキーが同じセリフを言うと、話は変わってくる。やっぱ生死に関わることや、人間のドロドロした欲望に関わることは、イケメンが演じると嘘くさくなるんですよ。

作品に対する斎藤工の愛情は伝わってきたけど、「ヒリヒリした勝負をしたい」という男には見えなかった。「賭けるものは何もねえ」みたいなホームレス風のジジイ相手に、何をそんなにうろたえてるんだって。「俺の方が腹をくくれてない」というシーンが必要だったんだろうけど、とりまきがいるわけじゃないんだから、あんなジジイ、ほっぽって逃げればいいじゃないですか(笑)。

ドサ健を演じた的場浩司もヤカってるだけで全然強そうに見えなかった。よって、ミスターKの強さにも説得力を感じませんでした(笑)。

――全体的に辛口なので、よかった点をもう少し挙げてもらえますか。

純士 坊や哲とドテ子のラブストーリーかな。ただ、惜しむらくは、「最終的に結ばれるふたり」だということに説得力を加える描写が欲しかった。「かつて坊や哲が愛した女の孫だった」などの腑に落ちる設定があれば、なおよかったですね。

あとは、キーとなる牌の使い方が、さりげなくてよかった。それと、なんかの記事で読んだんだけど、この作品ってiPhoneだけで撮影したんでしょ? それは素直にすごいと思った。

麗子 え? マジで? それはすごいわ!

――この映画は、麻雀人気復活の起爆剤になりえますかね?

純士 それは無理でしょう。今どき麻雀なんか流行るわけがないですよ。そもそも麻雀をやらない人たちは、この映画を見に行こうなんて思わないんじゃないですか?

――いやいや、後ろの席にいた麻雀をやりそうにない若い二人組の女性客も、終始楽しそうに笑っていましたよ。

純士 ああ、あいつらね。笑いすぎてて「うるせーよ!」と思いましたし、「人間的にレベルの低い奴らだな」とも思いました。

――そこまで言わなくても……。

純士 思ったことを正直に言うし、感情がすぐ顔に出る。そういうストレートな性格だから、僕は麻雀が弱いんですよ!(笑)
(取材・文=岡林敬太、撮影=おひよ)

『麻雀放浪記2020』瓜田夫婦の採点(100点満点)
純士 20点
麗子 3点

※瓜田純士のYouTube好評配信中!(瓜田純士プロファイリング)
https://www.youtube.com/channel/UCv27YAy0FZ-4wwisy5zPmeg

※「“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき」の記事一覧
https://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/

当記事は日刊サイゾーの提供記事です。

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