ヨシダナギさんらクリエイター達とアイヌ文化が生み出した奇跡!阿寒湖アイヌシ アター「イコロ」の新プログラム「ロストカムイ」

TheNews

2019/4/18 16:10


阿寒湖に佇む、凛としたアイヌの人々。そこには、美しさの中に、力強さや温かみがあります。世界各地の少数民族を捉えた作品で、多くの人々を魅了するフォトグラファー・ヨシダ ナギさんの写真です。

フォトグラファー・ヨシダ ナギさんの写真

阿寒湖アイヌシアター「イコロ」で世界が注目するアイヌ文化に触れる


いま、アイヌ文化が国内外から注目を集めています。明治後期の北海道を舞台にアイヌ民族が登場する冒険活劇マンガ「ゴールデンカムイ」も、幅広い世代から人気を集めています。阿寒の魅力は、火山と森と湖が織りなす豊かな原生的景観を有する大自然だけではありません。ここに息づくアイヌの文化もまた、旅をしたくなる理由のひとつです。温泉街の一角には、日本最大級のアイヌのコタン(集落)があり、伝統的な生活を守っています。そこで、自然と共存してきたアイヌの人々の暮らしやそこから生まれた音楽や歌、踊りを継承してきました。また、阿寒湖温泉地域は、2016年より「観光立国ショーケース」(観光庁)の1つに選定され、地方創生のモデルケースとして様々な取り組みを進めています。

阿寒湖アイヌシアター「イコロ(イコロ)」

2012年にオープンした阿寒湖アイヌシアター「イコロ」では、ユネスコ世界無形文化遺産でもある「アイヌ古式舞踊」や「イオマンテの火まつり」が上演され、年間約6万人の観客を動員しています。「イコロ」はアイヌ語で宝物という意味で、小さい「ロ」はアイヌ語音を表現したものです。



アイヌ文化の普及啓発活動に取り組む阿寒アイヌ工芸協同組合と、観光地域づくりに取り組むNPO法人 阿寒観光協会まちづくり推進機構は、より多くの人々にアイヌ文化に触れ、より深く理解してもらうため、二大演目「アイヌ古式舞踊」と「イオマンテの火まつり」をリニューアルし、新しいプログラムとして「ロストカムイ」を加えました。

「ロストカムイ」

3月19日(火)の一般上映に先駆け、3月18日(月)には、オープニングセレモニーが開催されました。ヨシダ ナギさん(フォトグラファー)、Kuniyuki Takahashiさん(サウンドデザイナー・プロデューサー・DJ)、UNOさん(ダンサー・ライブディレクター・イラストレーター)、WOW inc.(3DCG映像制作・演出)さん、坂本大輔さん(クリエイティブディレクター/JTBコミュニケーションデザイン)といった、現在注目のクリエイターが制作に携わり、この日も阿寒湖に集結しました。

アイヌの人々、床州生さん(阿寒アイヌ工芸協同組合理事/イコロ舞台監督)とともに、アイヌ古式舞踊、現代舞踊、3DCG、7.1chサラウンドを組み合わせ、5台のプロジェクターで舞台を立体化しました。完全なゼロスタートからの取り組みであり、家族のように迎えてくれたアイヌの人々への感謝と、この作品をきっかけに、アイヌの文化や芸能に興味をもってほしいというクリエイターの方々の共通の想いが作品に込められました。

幻想的なアイヌ世界が現出する「ロストカムイ」


フォトグラファー・ヨシダナギさんの写真

「ロストカムイ」は、「アイヌとエゾオオカミとの共生」をテーマとした物語です。

「ロストカムイ」

アイヌは、動物、草木、水や火や風など森羅万象にカムイ(アイヌ語で神様の意味)が宿ると信じています。特にエゾオオカミは狩りをする神「ホロケウカムイ」と呼ばれ、カムイの中でもアイヌに狩りを教え、時に助ける特別なカムイとし、畏怖し敬われました。しかし、 エゾオオカミは明治時代から減少し、 現在では絶滅に至りました。今日までアイヌの人々が口承文芸として伝えてきたユーカラ(叙事詩)の世界が、自然との共生のあり方を問う物語として、阿寒湖を舞台に描かれました。

「ロストカムイ」パフォーマンス

5台のプロジェクターからスクリーンや壁、床に立体的に投影され、オオカミが劇場内に現れたかのような臨場感です。アイヌの伝統文化とともに音と光が織りなす幻想的な演出に見入ります。

「ロストカムイ」

失われたカムイ、ホロケウカムイを、 かつてアイヌの人々と共に生きた阿寒の森とともに、伝統的な古式舞踊と現代舞踊によって舞台に再生され、鑑賞後も様々なことを考えさせられます。

「ロストカムイ」

世界でもここでしか味わえないような、独創的で斬新なパフォーマンスでした。

上映後、ヨシダ ナギさんと床さんのトークショーがありました。ヨシダナギさんは、撮影時間以外にも、アイヌの方々と過ごす機会を持たれたようで、人懐っこさや優しい印象を抱かれたようです。

マイナス20度以下の早朝での撮影風景

※阿寒湖にあるヤイタイ島を背景に結氷した阿寒湖を舞台に撮影

真冬の早朝、マイナス20度以下の撮影にもかかわらず、モデルの方々は表情にその寒さを見せず、真っ白な世界を舞台に、どの写真も圧倒的なインパクトを残します。

マイナス20度以下の早朝での撮影風景

自然に溶け込むような衣装は、明治時代のアイヌの衣装とのことで、平取町二風谷地区の皆さんの協力のもと用意されたそうです。素材は、樹の皮をはいで、温泉や水で繊維状にほぐし、糸にしたものを紡いでいます。鮭の皮でつくった靴(チェプケリ)は、滑り止めになるようにヒレが靴底にあり、完全防水であるなど、会場は驚きに包まれました。

フォトグラファー・ヨシダナギさんの写真

フォトグラファー・ヨシダナギさんの写真



今後、4月16日 のSEIBU渋谷店を皮切りに、福岡、横浜、大阪など全国で開催されるヨシダ ナギさんの個展「HEROES 2019」において、今回撮影されたアイヌの方々の写真も飾られるそうです。

「自分が住んでいるこの日本にも、アイヌという先住民の方々が住んでいることを嬉しく誇りに思っています。今後写真や舞台を見て、みなさんが少しでもアイヌの文化や暮らしに興味を持ち、アイヌの人々はかっこいいと思ってもらえればうれしいです。」と、ヨシダナギさんが語られました。

アイヌの伝統酒「トノト」、鹿肉や山菜などを使った伝統的なアイヌ料理

会場では、アイヌの伝統酒「トノト」、鹿肉や山菜などを使った伝統的なアイヌ料理も振る舞われ、出席者はアイヌの味覚も堪能しました。ユク(鹿)のローストはジューシーで、ソースも相性抜群でした。

サウンドデザイナーKuniyuki Takahashiさんのライブ

最後に、サウンドデザイナーKuniyuki Takahashiさんのライブが行われました。鳥の声、地下から熱い泥が火山ガスとともにポコポコと噴き出す「ボッケ」の音も、フィールドレコーディングされ、自然音やアイヌの音楽、ストリングスや電子楽器等を組み合わせて音作りをされたそうです。



人だけではない、動物や自然ひとつひとつの存在を意識することにより生まれた感情が、新らたな音創りの基盤となったそうです。音楽というものは垣根がないと実感する、世界を舞台に活躍されているKuniyukiさんの世界観が音を通じて伝わります。シェーカー、風鈴、おかしの缶や剣の音、トンコリ等を使用した即興での音作りを披露され、会場は大喝采に包まれ、セレモニーは幕を閉じました。
アイヌの文化へのリスペクト、各クリエイターへのリスペクトが、言葉、音、映像、パフォーマンスのあちこちに感じられる、心地よく、貴重な時間でした。

阿寒湖温泉では、国立公園の夜の森を舞台に、アイヌ伝説に基づいたストーリーを体験し、自然との共生の大切さを体感するもう一つのデジタルアートプログラム「KAMUY LUMINA / カムイ ルミナ」が2019年7月にオープンされるそうです。「カムイ ルミナ」は、カナダ・モントリオールに拠点を置くデジタルアート集団、「Moment Factory(モーメント・ファクトリー)」が、その土地の文化と自然をもとに創り上げたデジタルアート体験「ルミナ・ナイトウォーク」シリーズのひとつとして制作した作品です。阿寒ユーカラ「ロストカムイ」とともに、魅力ある滞在コンテンツとなるでしょう。
アイヌの文化と海外を含めた最先端な芸術との交わりにより昇華されたアートは、世界中の人々を惹きつけるでしょう。

※文中の 小さい "ロ"は 、記事配信の仕様上表現できないため、本文では半角を用い "ロ" と表現しております。(TheNews編集部より)

M.Sawaguchi
ライター、輸出ビジネスアドバイザーとして活動中。
早稲田大学文学部にて演劇を専攻し、能、狂言、歌舞伎、浄瑠璃といった日本演劇、西洋演劇、映画について学ぶ。一方で、海外への興味も深く、渡航歴は30か国以上。様々な価値観に触れるうち、逆に興味の対象が日本へと広がる。現在は、外資系企業での国際ビジネス経験を元に、実際に各地に足を運び、日本各地発の魅力ある人、活動、ものについて、その魅力を伝えることで世界が結ばれていくことを願い、心を込めて発信中。

当記事はTheNewsの提供記事です。

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