【明田川進の「音物語」】第23回 「うたわれるもの」のキャスティングとオー・エル・エム神田氏の思い出

アニメハック

2019/4/17 19:00

 今回は2006年に放送された「うたわれるもの」について、お話しましょう。アダルト向けのPCゲームが原作で、最初のゲームにはキャラクターの声はついていなかったのですが、ありがたいことに原作のAQUAPLUSさんサイドからテレビアニメ用の設定にしてキャスティングも自由にして構わないといっていただけました。
 主人公のハクオロは最初、記憶を失っていて仮面を被っていますが、それを見て僕は「オペラ座の怪人」を思いうかべました。というのも、その直前に真崎春望さんという漫画家の方が描いた「オペラ座の怪人」のCDブック(※2005年発売)を手がけていて、そのときに無声映画から最新のものまで、ひととおりの「オペラ座の怪人」を見たことがあったんですよ。ハクオロは、かなり最後のほうまで記憶を失ったままでしたが、そうした設定や世界観自体がまず面白かったです。

ハクオロのように喜怒哀楽をあまり表に出さず、それでいて聴いている人を包み込むような感じをだせる方として、まず小山力也さんが思い浮かびました。特に他の候補もなく指名で決まったように思います。海外ドラマ「24 -TWENTY FOUR-」のジャック・バウアー役の吹き替え(※日本でのビデオ化は2003年から)が話題になった少しあとのことですから、ファンの中には「小山さんなら、なんとかしてくれる」なんて感じた方もいるかもしれません(笑)。エルルゥ役の柚木涼香さんは当時若手で、いいバランスのコンビだったと思います。

アルルゥは、見ている側が「この子はちょっとおかしいな」とすぐに分かるような芝居をイメージして沢城みゆきさんをキャスティングしました。自分の感情を言葉としては出せないけれど、意識としてはこういうことを言いたいと見ている人に伝えなければならず、しかも徐々に周りと打ち解けて、しゃべりが普通になっていく過程をだしていかなければいけません。沢城さんには、期待どおりとても良い芝居をしてもらえました。

ウルトリィ役を大原さやかさん、その妹のカミュを釘宮理恵さん、ほかにも浪川大輔さん、渡辺明乃さん、田中敦子さん……今だったらなかなかキャスティングできないような豪華な顔ぶれだったと思います。関係者の協力や、ゲームサイドのプロデューサーが自由にやらせてくださったおかげです。また当時はマジックカプセルが現場ではなく、HALF H・P STUDIOというスタジオから依頼をうけた音響監督として現場に通っていました。

この作品は2クールでしたが、監督とプロデューサーのジョイントが非常に上手くいっていた印象です。今はWHITE FOXの社長をしている岩佐岳さんがオー・エル・エムのプロデューサーとして頑張っていました。オー・エル・エムにはアニメの「ポケットモンスター」などを手がけた神田修吉さんという優秀なプロデューサーがいて、早くに亡くなられましたが、彼とはオー・エル・エムの設立前から親しかったんです。「ポケモン」のときにはゲームの発売前からテスト版をプレイしてクリアしたうえで臨んでいて、ポスプロやシナリオ関係は全部彼がチェックしていたはずです。NHKで放送された「アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル」(2004~05年)も神田氏から手伝ってもらえないかと声をかけてもらった仕事です。その流れで「うたわれるもの」も頼まれたような気がします。

オー・エル・エムは、現社長の奥野敏聡さんと神田氏のダブルプロデューサーでずっと進んできて、今のように大きくなっていったというのが外から見た僕の印象です。その神田氏のもとで働いていたのが岩佐氏で、「うたわれるもの」のときには岩佐さん専門のチームをかまえていました(※OLM TEAM IWASA)。

「うたわれるもの」は、小山さんと柚木さんのネットラジオ(※「うたわれるものらじお」)が爆発的に盛り上がったことを覚えている方も多いと思います。僕は関わっていませんが、ラジオがすごいという評判は収録現場にも漏れ伝わっていました。もうひとりの小山さん(※クロウ役の小山剛志氏)などは破天荒な人ですからラジオのほうでも、どんどん面白いことをやって盛り上げたのではないかと思います(笑)。

当記事はアニメハックの提供記事です。

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