天然キャラのまなぶが熱血漢に……カミナリの「深すぎるコンビ愛」

日刊サイゾー

2019/4/2 21:00


テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(3月24~30日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

高田純次「怪物と戦うときは、自分も怪物になったほうがいいんじゃないですか?」


「怪物と戦う者は、自分もそのため怪物とならないように用心するがよい」

哲学者・ニーチェの言葉である。怪物に勝つための力を得ようとすると、自分が怪物みたいな存在になってしまう。嫌いな人を懲らしめようとすると、自分もまた嫌いな人と同じように振る舞ってしまう。そうならないように気をつけましょう。そんな警句だろうか。

哲学者や偉人の言葉を聞くと、人はしばしばわかってないのにわかったふりをしてしまう。しかし、28日放送の『世界の哲学者に人生相談』(NHK Eテレ)という番組でこの言葉を聞いた高田純次は、いつもの調子で次のように疑問を呈していた。

「怪物と戦うときは、自分も怪物になったほうがいいんじゃないですか?」

なるほど、そうかもしれない。ニーチェの名前に臆さない高田のシンプルな疑問。番組で解説役を務める哲学の先生も、返答に苦慮しているように見えた。

さて、話は少し変って、27日放送の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で、占いに関する説が検証されていた。題して、「なにやら占い師に傾倒し始めた相方が改名を訴えてきても応じられない説」。怪しい占い師に熱を上げ始めたお笑いコンビの一方が、占い師に助言されたからといって改名を提案したら、相方はどう反応するのか、というドッキリ企画である。

1組目のターゲットになったのは、若手芸人のカミナリ。幼なじみの石田たくみと竹内まなぶから成るカミナリは、茨城訛りと激しいツッコミを武器にした漫才で、2016年の「M-1グランプリ」の決勝に進出。翌年の「M-1」でも決勝に残った。

今回ドッキリの仕掛け人となったのは、ツッコミのたくみの方である。たくみはまなぶの目の前で1週間、怪しい数珠をつけ、怪しい水を飲む。埼玉の占い師から買ったという水晶を見せたりもする。そして1週間後、2人きりの部屋でたくみは話し始める。自分だけ、4月から『王様のブランチ』(TBS系)のレギュラー出演が決まった。これを契機に、名前を変えようと思う。「石田たくみ」を「石田夢門」にしようと思う。「夢門」と書いて、「たくみ」と読ませようと思う。なぜか。

「先生が言ってた」

占いの先生が、平仮名は「あんまり良くない」と言っていた。だからオレは、4月から「夢門」になろうと思う。

目の前でこんなことを言い始めた相方に、まなぶはどう応じたのか?

テーブルを挟んで正対するカミナリの2人。占い師に傾倒して「夢門」になろうとしているたくみ(ドッキリの仕掛け人)に対し、まなぶ(ドッキリのターゲット)は最初から「頭おかしいじゃん」と全面否定の姿勢を示す。しかし、たくみは占い師の能力をさらにアピールし始める。

たくみ「これ(数珠)とかさ、先生からもらって1週間だよ。1週間でこんなおっきい(レギュラー番組の)話来たからさ」

まなぶ「違いますよ、それは。キミの努力だから」

たくみ「でも、何もだってしてないし、努力っつうか、ただ……」

まなぶ「いや、してるしてる」

たくみ「ただ普通に生きてただけで……」

まなぶ「してる、してる。芸人って気づきづらいのよ、努力に」

たくみ「そうか?」

まなぶ「そうそうそう。こんなんで決まりません。何度も言うけどオマエの努力なの」

たくみの目を見て、たくみの言葉を封じるかのように矢継ぎ早に、まなぶは繰り返し説く。キミは努力しているんだ。キミは努力してきたんだ。気づいていないだけなんだ。そんなまなぶの姿をVTRで見ていた浜田が、ツッコミを入れる。

「こいつが(占いの)先生みたいになってるやん」

松本も「洗脳しようとしてるんちゃう?」と呼応し、笑いを誘う。怪しい占い師の洗脳から相手を解こうとする側が、洗脳しているように見えてしまうという逆説。あるいは、信頼と信仰を区別することの難しさ。まなぶはたくみを幼なじみかつ相方として信頼してきた。しかし、そのたくみが信仰の側に取り込まれようとしている。「夢門」になろうとしている。2人の間の信頼をこれから先にもつなぐために、信仰の側にいるたくみに届く言葉を、まなぶは重ねようとする。こちら側に取り返そうとする。しかしその姿は、別の信仰に取り込もうとしているように傍からは見えてしまう――。

なるほど、高田純次がニーチェに抗して言うように、怪物を倒すために自分が怪物になる覚悟をしなければならないこともある。たくみは言う。オマエに何かを買えとは言っていない、すべて「オレのことだから」。すると、何かのスイッチが入ったかのように、まなぶは語り始めた。

「いやいや、キミの人生はオレの人生だし、オレの人生はキミの人生なんだよ。一緒に歩んでいくの。ね? そいつが、そんなクソみたいなもの買わされて、つけて信じて、名前改名するとか、ふざけんなと思うよ」

洗脳された人への対応として、これが適切なのかはよくわからない。けれど、自分が怪物になることに慎重になりすぎるあまり、人それぞれだからと何もしなければ、大切なものを取り戻せなくなるときがあるのかもしれない。相方のために、図らずも怪物のようになってしまうまなぶと、相方を怪物のようにさせてしまうたくみ。カミナリの2人の関係に、深い信頼を感じた。

27日放送の『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)に、女優の工藤夕貴が出演していた。10代でデビューし、ハリウッド映画にも出演歴がある工藤。近年は、女優業だけでなく農業にも従事している。工藤いわく、「食べ物を自分の手で育てられることが、本来は人間の生活だと思う」。富士山の麓に自宅を構え、自ら開墾した農地で、自給自足に近い生活を送っているのだという。

番組では、そんな工藤のもとに「大都会東京で迷える女子」を送り込み、2泊3日の農業体験を通じて「女磨き」をさせるというような企画を実施していた。題して、「女を鍛えるネイチャー工藤塾」。今回は(次回があるのかどうか知らないけれど)塾生として、ゆきぽよや藤崎奈々子ら4人の女性タレントが参加していた。

1日目、まずは畑を耕す。率先してクワを持ち、作業を進める工藤。しかし、慣れない農作業にゆきぽよらは、「しんどい」「腰が痛い」と、すぐに愚痴をこぼしてしまう。そんな塾生に、塾長であるところの工藤は説く。

「なんのために一生懸命ほじくってるって思うかもしれないけど、これが(野菜が)育ってくベッドになる。お母さんでいう子宮みたいな。今こうやって私たちが土を触ってる瞬間に、やっぱり地球とひとつになってるんだよね。アースしてる」

2日目、田んぼの草刈りをしたり、ドラム缶風呂に入ったりした後、夕食は野外でオーガニックカレー。食後、焚き火を前に工藤は、「明日の朝は、来なきゃよかったと思うかもね」と思わせぶりなことを言う。どうやら、体力的にキツい試練が朝から待っているらしい。不満の声を上げる塾生に、工藤は自説を述べる。なぜ体を追い込むのか。そうすることで、ミトコンドリアが活性化し、体が強くなるからだ。2月に冷たい湖で泳いだって自分は平気だが、それもこれも普段からミトコンドリアを覚醒させているからだ。説明を終わると、工藤は笑いながらこう言った。

「呼んで。ミトコンドリア女優って呼んで」

3日目、早朝4時から登山が始まる。約2時間の往路、塾長の人生論を聞きながら歩き続けた塾生を山頂で待っていたのは、日の出に照らされた富士山だった。感動の声を上げる塾生。昇る太陽を見ながら、塾長は語る。

「勝手に朝日が昇るんじゃなくて、私たちが回転してるんだからね。宇宙の法則によって回転させられてる」

自然との共生。自給自足の生活。素晴らしいことだと思う。「子宮」とか「アース」とか「ミトコンドリア」とか「宇宙の法則」とか、なんだか気になるキーワードはある。体力的に追い込まれた塾生に塾長が優しい言葉をかけ、塾生落涙、みたいな展開もあった。個人的にはムムムと思うが、そのあたりはこれ以上ツッコまない。人それぞれだし。

怪物と戦う者は、怪物にならないように用心しなければならない。ミトコンドリア・ライターになる前に、この件からは早急に目をそらしておこうと思う。

(文=飲用てれび<http://inyou.hatenablog.com/>)

当記事は日刊サイゾーの提供記事です。

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