特別展 御即位30年記念『両陛下と文化交流―日本美を伝える―』レポート 日本文化を代表する優品が集結

SPICE

2019/3/19 19:29


特別展 御即位30年記念『両陛下と文化交流―日本美を伝える―』が、東京・上野の東京国立博物館にて、2019年4月29日(月・祝) まで開催中だ。

国際交流が盛んになることを願われた天皇皇后両陛下は、時には宮内庁所管の皇室ゆかりの美術品とともに、諸外国をご訪問された。また、フランス・パリで開催された『KAIKO』展では、天皇陛下がご幼年の時にお召しになったお振袖4領などが出展され、皇室のご養蚕と日仏の絹の交流への関心が高まった。本展では、天皇陛下御即位に際して東山魁夷、高山辰雄によって制作された《悠紀・主基地方風俗歌屛風》をはじめ、両陛下が海外に紹介された優品を展示する。

3月4日(月)に開催された内覧会より、本展の見どころを紹介しよう。

海外にも紹介された、日本文化を代表する優品の数々


昭和8年(1933)12月23日に、昭和天皇と香淳皇后の第一皇子として誕生された天皇陛下。その後、1989年1月8日より、「平成」の御代が始まった。展示前半では、天皇陛下の御誕生から御即位、外国ご訪問と文化交流にまつわる品々を紹介する。

メインとなる第1会場に入ってすぐ、左手に展示されているのが、東山魁夷による《悠紀地方風俗歌屛風》。2双それぞれが縦240cm×横410cmと大型で、非常に目を引く。この屛風は、天皇陛下御即位に際して平成2年(1990)に挙行された大嘗祭の際に用いられたもの。悠紀地方の秋田県と主基地方の大分県の四季風俗が描かれたもので、悠紀地方を東山魁夷、主基地方を高山辰雄が担当している(※悠紀地方風俗歌屛風は前期展示(3月31日(日)まで)、主基地方風俗歌屛風は後期展示(4月2日(火)~4月29日(月・祝)まで))。

古くからの和歌屛風の伝統を受け継いでおり、やまと絵様式の群青による「すやり霞」を用いた空間構成や、画面上部に和歌色紙を貼り込む形式が踏襲されている。
松竹薔薇蒔絵十種香道具  	江戸時代・18世紀 宮内庁三の丸尚蔵館 前期展示
松竹薔薇蒔絵十種香道具  江戸時代・18世紀 宮内庁三の丸尚蔵館 前期展示
松竹薔薇蒔絵十種香道具  	江戸時代・18世紀 宮内庁三の丸尚蔵館 前期展示
松竹薔薇蒔絵十種香道具  江戸時代・18世紀 宮内庁三の丸尚蔵館 前期展示

こちらは、組香に用いるさまざまな道具を2段重ねの蒔絵箱にコンパクトに収めた「松竹薔薇蒔絵十種香道具」。「十種香箱」とも呼ばれ、香盆、銀葉盤、札筒、折据、香包、記録板、硯箱や香割道具などが含まれる。長方形の外箱には、竹と薔薇が水辺の若松とともに描かれている。江戸時代には蒔絵の調度に薔薇が描かれた例が多くみられたが、本品の薔薇は、吉祥の伝統的なモチーフである松竹梅の梅と置き換えられて、松竹と取り合わされているという。ほかにも、各道具の一つひとつに豊かな装飾が施されているので、間近でじっくりと鑑賞してみてほしい。
小栗判官絵巻 岩佐又兵衛筆 江戸時代・17世紀 	宮内庁三の丸尚蔵館 	巻替えあり
小栗判官絵巻 岩佐又兵衛筆 江戸時代・17世紀 宮内庁三の丸尚蔵館 巻替えあり
小栗判官絵巻 岩佐又兵衛筆 江戸時代・17世紀 	宮内庁三の丸尚蔵館 	巻替えあり
小栗判官絵巻 岩佐又兵衛筆 江戸時代・17世紀 宮内庁三の丸尚蔵館 巻替えあり

中世の説経節『小栗判官』を題材とした、全15巻、全長約324mにも及ぶ大作絵巻『小栗判官絵巻』。近年、人気の高い江戸時代初期の画家・岩佐又兵衛(1578~1650)とその工房により制作された。絵巻の内容は、常陸の豪族小栗氏の伝説を基にした、主人公の小栗判官と照手姫が、苦難の末に結ばれるまでの恋愛譚。浄瑠璃の語りそのままに画面が展開する、ユニークで色鮮やかな絵巻となっている。

今上天皇が平成10年(1998)の英国、平成17年(2005)のノルウェーご訪問の折に、紹介、展示された。
源氏物語図画帖 	伝土佐光則筆 江戸時代・17世紀 	宮内庁三の丸尚蔵館 場面替えあり
源氏物語図画帖 伝土佐光則筆 江戸時代・17世紀 宮内庁三の丸尚蔵館 場面替えあり

『源氏物語』の全54帖の場面を、それぞれの物語文の一部と、その内容に対する場面を絵で表した色紙を貼り込んだのが、この『源氏物語図画帖』。土佐派が得意とした美しい色彩と細やかな描写による細密画が特徴的だ。伝統的な図様にもとづく画面描写が多く、人物の面貌がやや面長で、背景描写が少なく、やわらかな金雲を多く用いている。

本作は、日本古典文学を代表し、絵画や工芸作品の意匠に大きな影響を与えた『源氏物語』の優品として、平成17年(2005)のノルウェーご訪問、平成21年(2009)のカナダご訪問の際に紹介された。

皇后陛下とご養蚕


19世紀、近代化を歩みはじめた日本の主要産業であった絹の生産を推進するために、宮中でもご養蚕が始められることとなった。その皇室ご養蚕を平成2年(1990)に引き継がれた皇后陛下は、存続の危機にあった「小石丸」という純国産種の貴重な蚕種を守り育てられた。展示後半では、こうした日本の染織文化を大切にされてきた皇后陛下のお心に触れられる作品が出展されている。

左:赤縮緬地吉祥文様刺繡振袖 昭和10年(1935) 宮内庁侍従職所管 前期展示 右:黒紅綸子地落瀧津文様振袖 昭和13年(1938) 宮内庁侍従職所管 前期展示
左:赤縮緬地吉祥文様刺繡振袖 昭和10年(1935) 宮内庁侍従職所管 前期展示 右:黒紅綸子地落瀧津文様振袖 昭和13年(1938) 宮内庁侍従職所管 前期展示

皇室では、お子様方の成長の折々のお祝いに、祝着をあつらえ、贈られてきた。本展で紹介されているのは、天皇陛下がご幼少時にお召しになられたお着物だ。いずれも、昭和初期における織り、染めといった染織技法が用いられており、金糸による鶴や菊花、竹などの吉祥文様を刺繍で表した格調高い御品となっている。

これらは、近代における日本の優れた絹文化を象徴する作品として、平成26年(2014)にフランスで開催された『KAIKO』展で紹介された。
養蚕天女 高村光雲作 大正13年(1924) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 前期
養蚕天女 高村光雲作 大正13年(1924) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 前期

本作は、大正13年(1924)の皇太子(明和天皇)ご結婚に際して、貴族院より皇太子妃(香淳皇后)へ献上されたもの。純国産種の繭・小石丸を手にし、頭には蚕蛾の宝冠をつけ、足下には桑の葉が添えられた、優美な女神像となっている。ご養蚕の守護神として制作されたもので、像と基台は一体となっていて、桜材による一木造りとなっている。作者は、近代彫刻を牽引して活躍した高村光雲。光雲は皇室の御用も多く手がけている。
イヴニングドレス、コート 昭和時代・20世紀 宮内庁侍従職所管 前期展示
イヴニングドレス、コート 昭和時代・20世紀 宮内庁侍従職所管 前期展示

最後に展示されているのは、艶やかで美しいイヴニングドレス。皇后陛下は、さまざまな行事にご出席される際に、お会いになる方、場所などにお心配りをされ、お召し物にも配慮されてきた。こちらは、昭和50年(1975)のネパール国王戴冠式ご列席の折にお召しになったもの。大柄の華やかな菊文様が、日本の伝統的染織技術である佐賀錦によって配されている。

先ほどの《養蚕天女》と併せて、このドレスもフランスで開催された『KAIKO』展で紹介された。
展示風景
展示風景

続く第2会場では、両陛下の国内外でのご活動を、写真パネルで紹介している。

『両陛下と文化交流―日本美を伝える―』は、4月29日(月・祝) までの開催。御即位30年という記念すべき年に、両陛下が担われた文化交流を、ぜひ目の当たりにしてみてほしい。

当記事はSPICEの提供記事です。

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