コカイン使用で逮捕されたピエール瀧を巡る自粛の嵐とワイドショー報道の是非

wezzy

2019/3/17 19:05


 関東信越厚生局麻薬取締部(以下、麻取)は3月12日、麻薬取締法違反の疑いで、電気グルーヴのメンバーであり俳優のピエール瀧(本名:瀧正則・51)容疑者を逮捕した。麻取は同日午後、世田谷区にある瀧容疑者の自宅を家宅捜索し、任意同行を求めたのち尿検査をしたところ、尿からコカインの陽性反応が検出された。瀧容疑者は「間違いありません」と容疑を認めているという。

電気グルーヴは結成30周年を迎え、1月にはアルバム『30』をリリース。3月2日のZepp Fukuokaを皮切りとした『電気グルーヴ30周年“ウルトラのツアー”』の真っ最中で、10日の大阪公演を終え、16、17日の東京公演を控えたタイミングでの逮捕だった。

この東京公演は中止となり、また電気グルーヴ・石野卓球(51)も3月23日に北海道で開催予定だった『Pump It Presents Takkyu Ishino』の出演を取りやめる事態となっている。これまでの音源の販売も中止となった。このように電気グルーヴと石野の活動に影響が及んでいるだけでなく、俳優としての瀧容疑者の逮捕に、テレビ業界、広告業界、そして映画業界が大きく揺れている。

NHKは瀧容疑者が出演している大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』の放送を次回以降も継続するが、再放送では出演場面をカット。収録済みである今後の出演場面は「対応を検討中」としている。

放送済みの番組を有料配信する「NHKオンデマンド」では、出演番組の配信を当面停止する決定をした。番組のHPからは早々に写真も削除された。さらに瀧容疑者の冠番組『ピエール瀧のしょんないTV』(静岡朝日テレビ)は、放送休止を発表。HPも削除された。ウォルト・ディズニー・ジャパンは、映画『アナと雪の女王』で、瀧容疑者が声優を担当していたオラフ役の日本語吹き替え声優を交代すると発表している。今年、公開を控えている出演映画『麻雀放浪記2020』は予定通り公開に踏み切るが、『居眠り磐音』については撮り直しを行うそうだ。
広がる「作品に罪はない」の声
 こうした対応にネット上では「作品に罪はない」と、作品を封印したり代役をあてる等の対応に抵抗を示す声が多い。つい先月のことだが、俳優の新井浩文被告(40)が強制性交等で逮捕された際の業界の対応も、今回の瀧容疑者の逮捕と同様に、素早く、そして厳しいものだった。公開予定だった映画は公開中止を発表し、所属事務所も早々に契約を解除。NHKも瀧容疑者と同じく、出演作品のオンデマンドでの配信を取りやめるといった決定を下している。

新井被告の逮捕による業界の素早い対応を目の当たりにしてきたうえで、瀧容疑者逮捕を受けて同様の対応がなされることに、“またか”の空気が広がり「作品に罪はない」の声は大きくなりつつある。この空気を察知してか、「週刊文春オンライン」が俳優逮捕による作品自粛に関する緊急アンケートを開始している。

作品は自粛、ワイドショーは加熱
 自粛に関する懸念の声が上がるだけでなく、特に今回の瀧容疑者の逮捕を受けては、薬物の使用疑惑で逮捕された際の報道ガイドラインにも注目が集まっている。

薬物依存症や著名人の薬物使用の逮捕に関する報道には、有志団体が策定した「ガイドライン」が存在している。2017年に評論家の荻上チキ氏や国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦氏ら専門家により作られたものだ。その中には“避けるべきこと”として「薬物依存症であることが発覚したからと言って、その者の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと」という項目がある。

今回の業界の出演作品自粛の判断や出演番組の休止判断等はこれに該当するだろう。また“望ましいこと”としては「薬物依存症の当事者、治療中の患者、支援者およびその家族や子供などが、報道から強い影響を受けることを意識すること」とある。瀧容疑者の逮捕を受けてワイドショーは連日、その逮捕までの詳細や、逮捕後の業界への影響を報じているが、こうした行為は、“望ましいこと”ではなく反対に、瀧容疑者の家族のみならず他の薬物依存症の当事者や支援者、家族らが強い影響を受けることであろう。

瀧容疑者は容疑を認めているが、こうした素早い関係団体による自粛行為や、ワイドショーでの加熱した報道は、容疑者本人の更生や社会復帰の大きな足かせになるばかりか、家族らの生活も大きく脅かす。そして逮捕を受けて即、業界内は出演作品の販売や視聴を自粛する。いまの社会は、一度過ちを犯した人間が“やり直し”できる社会からは程遠い。

(鼻咲ゆうみ)

当記事はwezzyの提供記事です。

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