ZOZO「3つのしくじり」! 有名ブランドとユーザーを「ガッカリさせた理由」とは?


――ファッションライター・南充浩氏が、いま話題のファッションニュースに斬り込む!

最近、勢いにやや陰りが出てきたと言われる、前澤友作社長率いるZOZO。今年1月末に、2019年3月期連結決算の純利益が前年比12%減の178億円になるとの見通しを発表しました。従来予想(純利益280億円)から大幅に下方修正し、07年の上場以来、初の減益決算となる見込みとなっています。また、昨年年末から、オンワード樫山、ミキハウス、4℃、ライトオン、「ノースフェイス」を展開するゴールドウインなどの有名企業がZOZOからの離脱を表明しており、メディアでは「ZOZO離れ」ではないかと言われています。これらの原因はなんだったのでしょう。さまざまな理由があるのでしょうが、今回は主なもの3つを見ていきたいと思います。

1.ゾゾスーツと組み合わせたプライベートブランド(PB)のがっかり感


 1月末の発表では、PBによる赤字は通期で125億円とのことです。また、初年度売上高目標に200億円を掲げていましたが、これを30億円に下方修正しています。要するに当初の見込みほどPBは売れなかったということです。

PB発表時の目玉となったのは体型計測用のボディスーツ「ゾゾスーツ」で、当時、ネット上ではすさまじい盛り上がりを見せました。自分で計測することによって、正しいサイズがわかるようになり、試着できないネット通販でもサイズ選びに失敗しにくくなると話題になりました。またそのサイズデータを活用してPBをオーダーするという未来的構想に多くの人が熱狂したのです。

しかし、当初に発表した計測用ゾゾスーツは何カ月たっても配布されないままで、唐突に計測方式を変更した新型ゾゾスーツの配布に切り替えられました。この新型ゾゾスーツの計測精度が高ければ何の問題もなかったのですが、決して高いとはいえず、採寸間違いが多発し、ユーザーのクレームがSNSを通じて拡散されました。ネットの評判の影響を受けやすいというのは、ネット通販のデメリットの一つでもあることが周知されたと言えます。

それでも熱心なファンはまだまだ諦めておらず、その直後に発表されたPBのオーダースーツで熱狂はピークに達したと感じられました。とはいえ、計測システムそのものが変更されていないままですから、スーツでも「大きすぎる」「小さすぎる」「丈が短すぎる」などの採寸間違いによるサイズの不具合が多発。これによって期待感は完全に沈静化してしまいました。

1月末の発表では、その時点のPBの売上高は22億6000万円でしたから、残り期間がたったの3カ月では目標である200億円に到達しないことは火を見るより明らか。30億円への下方修正は当然の結果だったといえます。

また、昨年12月には保温肌着「ZOZO HEAT」を発表し、年が明けてからはPBの新製品としてチノパン、スエットパーカを発表しましたが、いずれも昨年のジーンズ、Tシャツ、オーダースーツなどの熱狂には遠く及びません。ネット上を見る限り、ZOZOHEATはそれほどの話題にならず、年が明けてからのチノパン、スエットパーカは輪をかけて注目されていないようです。すでに計測データを利用してジャストサイズの服を着られるというユーザーの期待は霧散してしまっているのでしょう。

ZOZOHEATに限っていえば、12月上旬に発表するのではタイミングとして遅すぎます。ユニクロのヒートテックに限らず、各社の保温肌着は遅くても10月頃には告知・店頭投入が完了しています。特に18年秋冬シーズンは暖冬でしたから、保温肌着というジャンルそのものが苦戦に終わりました。チノパン、スエットパーカは別段驚くほどのギミックや機能性があるわけでもなく、価格も4,900円なので、それほど安いというわけではありません。ユニクロのチノパンとパーカは2,990円なので、やはり見劣りしてしまいます。

そもそもPBの商品群そのものにも疑問を感じさせます。ZOZO自身、主要顧客層は若い女性と発表していますが、PBの商品群は男女共通アイテムもあると言いつつ、Tシャツ、ジーンズ、ワイシャツ、スーツ、チノパン、スエットパーカと、メンズ色の強い商品ばかり。主要顧客層とのミスマッチではないでしょうか。

今後、よほどの機能性商品や割安感のある商品を発表しないと、PBはさらに苦しい展開を強いられることになると考えられます。

昨年末に、ZOZOは突然、「ZOZO ARIGATO」というサービスを発表しました。会員になると割引限度額上限5万円までが常時10%割引(初回30%割引)で買えるというサービスです。字面だけ見ていると、何の問題もないように思えますが、ZOZOだと全ての商品が正規価格より「10%オフ」された状態で表示されており、ブランド側からすると「ブランドイメージが損なわれる」ことにつながりかねません(なお、価格の表示方法は2月末に改訂されました)。

これに驚いたのが各有名ブランドです。オンワード樫山が真っ先に撤退を発表し、その衝撃は業界全体を直撃しました。続いて4℃、ミキハウスが撤退してしまいます。この3社はアパレル、アクセサリー、子ども服、それぞれの分野の大手企業で、ネームバリューがあります。この3社の共通点は、

1. ZOZOと顧客層がかぶらない
2. ZOZO内での売上高がそれほど多くない
3.自社での販売が強い

の3点でした。オンワード樫山は30代半ば以降の女性、ミキハウスは高額子ども服なので主婦層・年配層が多く、若い女性が多いZOZOの客層とはあまりかぶっていませんでした。4℃の顧客には若い女性が多いものの、ZOZO内での売上高が少なく、圧倒的に自社売上高が高かったのです。

売上高の点では、ミキハウスも同様の傾向があり、同社の木村晧一社長は、「週刊新潮」(新潮社)のインタビューで、「ZOZOでの売上高は年間1億円ほどだった」と話していました。一方、オンワード樫山はZOZO内での売上高が50億円ほどあったと伝えられていますが、EC全体の売上高に占める比率は25%ほどで、ほかのアパレルブランドに比べると、最も低い部類に属しています。

これらとまったく異なる環境にありながら離脱を発表したのがライトオン。ある意味で、上記3社以上の衝撃がありました。ライトオンはECそのものの比率が低いのですが、その中でZOZOの売上高が大半を占めていたにもかかわらず撤退を発表したのです。ちなみにライトオンは同時期にAmazonへの出品・出店も取りやめています。

そしてこの後に、今、売れに売れているアウトドアブランド「ノースフェイス」を擁するゴールドウインの撤退も発表。ベイクルーズも新商品は出品していません。いずれも思惑はそれぞれ違うものの、自社EC強化という方向性は同じで、撤退の口実を「ARIGATO」が与えたと見るべきでしょう。

そもそも、ZOZOの手数料は年々上がっており、そこにも各社は不満をためていました。「手数料は売上高の34%にもなり、それなりの売上高はあるものの、利益としてはほとんど残らない。だから撤退しても実はあまり痛手ではない」と話をしていた企業もありました。その一方で、前出の木村社長は、「手数料は20%ほどで他社よりは安くしてもらっていた」とインタビューで語っており、ZOZOはネームバリューの高いミキハウスを取り込みたい目的から、同社を優遇したのではないかと推測されます。

しかし、ミキハウスよりZOZOでの売上高が多いのに、手数料をより多く支払っている他社からすれば面白くないことは想像に難くありません。こういう不満が溜まっていたところにARIGATOサービスが、強引にメールの通知だけで開始されたことから、各社の不満が爆発してしまったと考えられます。

しかし、逆に考えれば、自社の販売力が育ち百貨店や大手スーパーマーケットから独立するという事態はこれまでも起きたことですから、ECという分野が育てば遅かれ早かれ、同様のことが起きたとも言えます。

筆者がネット通販を使い始めたのは2015年頃からなので、ごく最近のことです。ファッション好きだけがZOZOTOWNを利用していた当時の雰囲気はわからないものの、ファッション好きは口をそろえて、「昔はクールなサイトだった」と言います。しかし、今はどうでしょう。ARIGATOもさることながら、各ブランドが毎日のように割引クーポンを発行していますし、トップ画面に「最大〇%オフ」と表示されることも増えています。最近のZOZOTOWNしか知らない者からすれば、割引販売サイトにしか見えません。

昔は商品の画像や露出もブランドの世界観を優先してくれたECモールであり、それに向けて担当者との打ち合わせも綿密だったと言われています。また、ZOZOの営業マンの口説き文句も「われわれは安売りしません」だったそうです。

しかし、あるブランドのEC担当者によると、「今は、コーディネートもモデルもポージングも画一的。画像は極力メーカーが用意する風潮が強まったし、ほぼ毎日のように安売りクーポンが発行されている」とのことで、すっかり変貌してしまったといえます。

一定水準にまで達した企業規模を、さらに拡大しようとすると、大衆の取り込みが必要ですから、その手段としては「安売り」が不可欠になります。ユニクロだって低価格品を販売したからこそ、ほとんどの人が買うようになり、国内売上高8000億円に到達したので、施策としては間違ってはいません。しかし、それは「カッコいい」とか「ファッショナブル」とかとは、かけ離れていくことを意味します。昔とはすっかりサイトのイメージが変わってしまい、そこに出店ブランドが失望しているという側面は否定できないでしょう。

このほか、前澤友作社長が2月上旬、「いまお店で約1万円くらいで売られている洋服の原価がだいたい2000~3000円くらいだということを、皆さんはご存知ですか?」と2月上旬にツイートした(削除済み)ことも業界や消費者からの反感を買いました。このツイートに対し、実は一般ユーザーが「その売上の3割もZOZOがとっていることを知ってましたか?」とリプライしており、結果、ZOZOのイメージダウンにしかなりませんでした。また、論理的に考えても、ZOZOだって自社企画製品を販売しているわけですから、「ならZOZOの原価も提示しろよ」とブーメランを食らうことになってしまいます。「前澤社長は、アパレル企業がARIGATOサービスの値引きに無理解だということにイラ立ち、あのツイートをしたのではないか」といった論調もありますが、それだけではないでしょう。この時期は最も株価が下がっていた時期なので、それに対するイラ立ちの方が大きかったのではないかと、筆者は推測しています。

前澤氏が所持する株数は、ストックオプションにより付与された新株予約権を除くと 112,226,600 株で、そのうちの97,408,100株が金融機関に担保として差入されています(2月12日現在)。株価が下がりすぎることは精神衛生上良くないのだと考えられます。

これらの不安要素を抱えて、今後、ZOZOはどのような舵取りをするのでしょうか。
(南充浩)

当記事はサイゾーウーマンの提供記事です。

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