中国が台湾併合を強行したら沖縄はどうなるか?/佐藤優

日刊SPA!

2019/3/17 08:50

― 連載「佐藤優のインテリジェンス人生相談」―

“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!

◆中国が台湾併合を強行したら沖縄はどうなるか?

★相談者★ひろぴ(ペンネーム) 無職 男性 57歳

中国が台湾の武力解放をあきらめていない報道がなされました。その際、沖縄本島以西の安全が気がかりです。明治政府の宮古・八重山を中国へ引き渡すとした交渉から、現在の在日駐留軍基地の問題など日本政府の対応は沖縄に犠牲を強いています。

中国が台湾解放に際し、戦略上宮古、八重山に侵攻、一帯を封鎖すれば、一義的に自衛隊は対応を行うものの、米軍出動前に軍事的均衡となり、そのまま見捨てられるのではという危惧です。このような事象は絵空事でしょうか。

◆佐藤優の回答

中国が台湾を併合する機会を虎視眈々と狙っていることは間違いありません。さらに面倒なことは、米国にトランプ政権が誕生してから、米中対立に「人種主義」の要素が加わってきたことです。米中の事情に通暁している元外交官の宮家邦彦氏はこう述べています。

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アメリカ国内でも、人種偏見はしばしば問題になりますからね。トランプの側近スタッフだったアフリカ系の女性が暴露本を書いて、トランプを人種差別主義者だと告発し、話題になったこともありました。ただ、その程度でめげるようなトランプではありませんが。

いずれにせよ、差別意識があることは間違いない。おそらく中国もそれをわかったうえで、チャレンジしているんです。彼らは一八四○年のアヘン戦争以来、まさに白人によって蹂躙されてきました。その末裔であり、いまでも唯一中国の影響圏のなかにいるのが米軍なのです。それを排除したいと考えるのは当然でしょう。その意味では、いずれもレイシスト的だといえる。

ただし、アメリカは西太平洋を支配しているのは自分たちだと自負しています。それに対してチャレンジするなら、よほどうまくやらないといけない。ところが中国のやり方は、およそうまいとは言い難い。もともと大陸国家、陸軍国家だから、勝手に線を引いて海域を奪う、島を奪うという発想を繰り返してきた。だから両者は太平洋上でぶつかるわけです。

(『世界史の大逆転』66~67頁)

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◆アメリカが台湾に関与しなくなった場合

もっとも中国指導部は現実主義者なので、現時点で中国軍が米軍と武力衝突を起こしても、中国軍が大敗し、壊滅してしまうことをよくわかっています。従って、台湾の武力統一のような冒険はしないと思います。もっとも数十年後、中国の国力が大幅に増強し、米国が衰退し、米中が拮抗するような事態が訪れれば、中国が武力を背景に台湾の併合を試みる可能性はあります。

米国が孤立主義政策に転換し、台湾に関与しなくなった場合、日本にとっては深刻な事態が生じます。台湾には標高3952メートルの玉山(日本の植民地時代はニイタカヤマ)をはじめ、高い山があります。従って、台湾全土を占領するためには、中国大陸側からでなく、反対側の与那国島(沖縄県)の側からも攻撃する必要があります。中国が軍事上の理由から、与那国島の領海に侵入する、場合によっては与那国島を占領する可能性もあります。そうなると日中戦争になります。

もっとも、それは沖縄県が日本の一部に留まっていることを前提にします。このような事態が生じる前に、尖閣諸島をめぐり、日中間の軍事的緊張がかなり強まります。沖縄では「日本の都合で戦争に巻き込まれるのは迷惑だ」という機運が強まり、日本からの分離独立運動が起きるでしょう。中国が台湾を併合しようとする場合、日本から見捨てられるような事態に陥る前に、沖縄が日本から逃げ出すと思います。

★今週の教訓……台湾併合前に沖縄で独立機運が高まる

【佐藤優】

’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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