「億ション」を購入できる世帯年収とは? - FPに聞いた


以前、首都圏では2時間近い通勤距離も珍しくありませんでした。現在は生活スタイルが多様化し、通勤時間の短い都心でアクティブに生活することを目指す人も多くなったのではないでしょうか。高齢者にも都心志向が多くなっています。

都心に近い便利なところに家族で居住ということになると、億を超える購入金額となることも珍しくありません。果たしてどのくらいの年収があれば安心して購入できるのでしょうか。
○いろいろある億ション購入者

戦後にゼロからスタートして高度成長期を迎えた時代は、1億総中流といわれて、同じことをしていれば安心という時代でした。しかし現在の日本は、もはや均一の社会ではありません。同じ給与の同期社員であっても背景はさまざまで、妻の収入やその安定性、双方の親の経済的余力など、様々な背景の違いがあります。

「億ションに住む方はいくら位の年収の人ですか」のような質問はよくありがちなものですが、自分と同じ収入の人が入居しているからと言って、何ら安心要素にはなりません。しかし、客観的分析のために、どのような方が購入しているかは知っておくとよいでしょう。
○投資目的の購入者

都心のマンションが発売されると、ただちにそのマンションの複数住戸がネットの賃貸物件情報サイトなどに掲載されたりします。新築マンションが直ちに賃貸されるということは投資目的で購入されていることを意味します。自宅として居住することを目的としていても、目減りのしない資産としても億ションを位置付けている方の割合は高いと思われます。
○富裕層

年収2,000万円以上の経営者・役員・医師や弁護士などの高額所得者などが主な購入層のようです。夫婦で一流企業に勤めていても、サラリーマンは自力で億ションを購入するにはリスクが大きく、なかなか億ションには手が届かないのが現状でしょう。
○一戸建てやマンションを売却した買い替え層

都内の一戸建てを売却し、便利で快適なマンションを購入するケースは増えていくと思われます。また、都心の高級マンション購入者は同じ区域からの転居も少なくないようです。もともと都心にマンションを所有していて、住み慣れた同区域内で、より自分たちの生活スタイルにマッチした物件に買い替える層が意外と多いようです。初めての住まいの購入では、億ションはなかなかハードルが高いものがあります。
○1億円借りられる年収は?

現金で購入する分には、何も問題はなく、住宅ローンを借り入れるからこそ、年収が問題になるはずです。仮に1億円を借り入れることができる年収とはいくら位なのでしょうか。1億円を金利1.5%、35年返済で借り入れると仮定すると、月々の返済額は30万6,184円となります。

したがって、毎月30万円以上の返済ができる手取り収入があることが前提になります。現在の生活だけでなく、将来の予測、万一への備えなど、返済期間の35年間だけでなく、生涯にわたって判断することが大切です。

また金利の上昇も考慮に入れなければなりません。住宅ローンの融資額の上限は銀行や借り手によって違うかもしれませんが、長期の固定金利はフラット35のような証券化ローンしかありません。長期の固定金利の代表的商品であるフラット35の融資上限額は8,000万円です。フラット35を利用して億ションを購入する場合は、売値の差額と諸費用分は現金を用意する必要があります。高額のローンを借り入れる場合は変動金利による金利の上昇も想定しておく必要があります。

以前住宅金融公庫の長期固定金利が5.5%、民間が8%代ということも一般的でした。上記の条件で金利が3%と6%の場合の月々の返済額は、以下のようになります。

金利3%→月々の返済額 38万4,850円 年間の返済額 461万8,200円
金利6%→月々の返済額 57万109円 年間の返済額 684万2,268円

金利の上昇がいつ、どのくらいになるかわかりませんが、まったく上昇しないことは考えられません。

同時に夫婦で高収入であっても、「片方が働けなくなった」「給与が少なくなった」という事態もゼロではありません。起きうる様々なリスクを想定して対処の上、借入額を考えて下さい。
○金融機関の融資基準は?

金融機関が融資を行ってくれる基準からみるとどうなるでしょうか。金融機関の一般的な融資基準は年収400万円以上の場合は、年間収入の35%が返済額の限度となります。上記の設定で1億円を借り入れると想定すると……

30万6,184円×12カ月=367万4,208円(年間返済額)
年間返済額÷35%=1,049万7,737円(約1,050万円)

つまり1億円借りるにはおよそ1,050万円の年収が必要となります。

ただし、一応の基準はあるものの、銀行はその人を個別に判断し、返済が可能と判断すれば、基準を超えて融資を行うことはあります。ただし、上記の計算も簡易的に固定金利として考えていますが、変動金利による金利上昇も考慮が必要です。また、給与の減少も考慮すれば相当のプラスの余力が必要でしょう。
○夫婦で住宅ローンを借り入れる場合は?

夫婦で別々に住宅ローンを借り入れる場合は、相手が支払い困難になった場合は要注意です。経済的破綻だけでなく、妊娠、病気やケガ、看護や介護など収入減のケースはいろいろ考えられます。それぞれ団体信用生命保険に加入しますので、死亡や所定の高度障害の場合は保険料が支払われますが、それ以外の場合の病気やケガで働けなくなることのほうが多いはずです。

そうしたときにカバーする方法があるかどうかも検討しておくことが必要です。また厳密にいえばローン支払いを配偶者が肩代わりすれば贈与とみなされるリスクもあります。共働き夫婦の住宅ローンの組み方はいろいろありますので、最適なものを選択ください。

○■著者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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