占いに依存して腐っていく姿が見たかった。第2シーズンを匂わせる『ハケン占い師アタル』最終話

日刊サイゾー

2019/3/16 01:30


  情報が溢れる現代社会において、どうすれば天職と呼べる仕事に就くことができるのでしょうか。悩める現代人の背中を温かくプッシュしてきた杉咲花主演ドラマ『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)。ベテラン脚本家・遊川和彦の筆も暴走することなくクライマックスを迎えました。最終回となった第9話を振り返りたいと思います。

(前回までのレビューはこちらから)

前回の終わり、派遣先のイベント会社で倒れてしまったアタル(杉咲花)。目を覚ますとそこは病室で、大崎課長(板谷由夏)が「大きな病気じゃないから安心して。医者は過労だろうって」と説明します。イベント会社Dチームのメンバーを毎週のように鑑定していたアタルは、相手の苦しみや痛みにも触れるため、かなりの体力を消耗していたのです。アタルの毒親・キズナ(若村麻由美)が「もう占いはやめなさい」と言っていたのは、アタルの体を心配しての言葉でもあったことが分かります。

とりあえず、1日ぐっすり眠ったアタルは、元気に職場復帰。前回、アタルが籠で飼っていたカナリアを空に放つという不吉なシーンがありましたが、どうやらこれは最終回を盛り上げるためのミスリードで、本気の死亡フラグではなかったようです。ホッとするような、余計な思わせぶりにカチンとするような……。

最終話の案件は、前回に続いてゼネコンのCSR(社会貢献)事業としての卒業式イベントです。これはアタルが発案したもので、自然災害で卒業式が開けなかった被災地の小学生たちのために、きちんと卒業証書を渡してあげようという趣旨のものでした。

被災地を励ます復興支援イベントのはずが、クラアント企業の宣伝色が強く、イベントに参加した小学生の親たちからはブーイングが飛び交います。卒業ソングを歌うはずだった地元出身の人気歌手は熱愛が発覚し、出演をドタキャン。代々木部長(及川光博)が「私が代わりに歌とダンスを披露してもよいのですが……」とマイクでアナウンスするシーンでは、多くの視聴者が「ミッチー、最終回なんだし、歌って踊れよ」と心の中で叫んだはずです。

ミッチーが歌とダンスを披露することもなく、卒業イベントは最悪の雰囲気に。そんな中、アタルは子どもたちの心の声に気づきます。子どもたちはゼネコンだとかクライアントだとかCSRだとかは関係なく、単純に小学生時代にお世話になった先生や家族、地域の人たちに「ありがとう」という気持ちを伝えたかったのです。アタルにそっと促される形で、子どもたちは事前に練習していた感謝の言葉をそれぞれ口にするのでした。子どもたちの純粋さのお陰で、卒業イベントは無事に終わることができました。

アタル、最後の占いは……?


 卒業イベントを終えたアタルは、やはり自分は占いの能力を活かした道を進むべきだと痛感します。せっかく、Dチームのメンバーと仲良くなったアタルですが、お別れの時間のようです。Dチームのメンバーもアタルの決断に納得し、アタルの背中をみんなで押すことになります。

アタルの最後の占いが始まりました。お腹の大きくなった神田(志田未来)には、目黒(間宮祥太朗)ときちんと話し合うべきだと伝えます。その結果、神田はお腹の赤ちゃんの父親である元彼と復縁することを目黒に打ち明けます。「がってんです!」とは言えずに落ち込む目黒には、「近いうちに運命の出逢いが待っています。だから、そのままの目黒さんでいてください」と励ますのでした。

コミュニケーション能力に難のある上野(小澤征悦)には、相手にストレートに気持ちをぶつけるようアドバイスします。いつもクールな田端(野波麻帆)には「物事を悲観的に考えすぎないで」と助言。その結果、上野はその場で田端にプロポーズ。田端も快諾し、結婚へと大きく前進します。

新しい企画書を書けずに悩む品川(志尊淳)には「将来は上野さんに負けない伝説のイベントをやることになります」と予言。そして義母の介護をするため退職することを考えている大崎課長には、「家族で話し合って、会社は辞めないでください。あなたは将来、この会社の社長になる人です」と目の前のトラブルを解消できれば、明るい未来が待っていると占うのでした。もうひとり、代々木部長には「この会社では出世の見込みはありません」と独立することを勧めます。

脚本家・遊川和彦を占います!


 前回で伏線は全部回収を終えていたので、最終回はエピローグというか、はっきり言うと蛇足感は否めません。それでも脚本家の遊川和彦は、卒業式シーズンに合わせて、各キャラクターたちが占いに頼ることなく生きていく姿を最後に描きたかったようです。ちなみに第1話&第2話に続いて、最終回の演出も遊川自身が担当しています。

ここでアタルに代わって、脚本家・遊川和彦を占ってみましょう。広島県出身の彼は「映画監督になる」という大志を胸に上京しました。夢を叶える第一歩として製作会社のADとして働き始めますが、連続ドラマのチーフディレクターになることはできず、脚本家に転職することになります。AD時代の苦労や悩みを描いた加勢大周主演ドラマ『ADブギ』(TBS系)が好評となり、人気脚本家に。やがて『女王の教室』『家政婦のミタ』(日本テレビ系)で記録的高視聴率を残し、ヒットメーカーとしての地位を不動のものにしました。

阿部寛と天海祐希が共演した『恋妻家宮本』(13年)で映画監督デビューを果たし、長年の夢を現実のものに変えています。そして『ハケン占い師アタル』では脚本だけでなく、チーフディレクターも兼任することで、AD時代の果たせなかった願いをきちんと形にしてみせたわけです。映画監督やチーフディレクターには真っすぐな道程では辿り着けなかったものの、脚本家という別のルートを切り開いたことで、夢を手に入れることに成功したのです。

「失敗しても、いろんなことにチャレンジできる人が、いつか才能があると呼ばれるんです」と品川に贈ったアタルの格言は、脚本家・遊川和彦が自分自身に言い聞かせてきた言葉だったようです。

ハケン占い師は実在する!?


 気になる15分拡大最終回の視聴率は11.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)でした。第8話は9.8%と二ケタを割りましたが、無事に二ケタに復活、第1話の12.1%に次ぐ好数字を残しました。初主演ドラマ『花のち晴れ』(TBS系)がコケた杉咲花に加え、共演陣も地味だったことからオンエア前は期待されていなかった本作ですが、杉咲や志田未来らの演技は安定しており、遊川和彦の台詞の数々も人生経験抱負なベテラン脚本家ならではの含蓄を感じさせるものとして視聴者に好意的に受け入れられました。

個人的には、もっと遊川脚本の毒々しさに期待していました。Dチームのメンバーが、アタルの占いに依存して、どんどん腐ってダメ人間化していく危ういエピソードがあったら、かなりの話題になっていたのではないでしょうか。芸能界は霊能者とズブズブの関係にあることに言及できなかったことも残念です。ちなみにオセロの中島知子が依存していた自称霊能者はマンションを締め出された後、派遣社員として働くことで生計を立てているそうです。ネット記事で見かけました。ハケン占い師が実在することにびっくりです。

最終回は、イベント会社を去ったアタルが濃厚な負のオーラ漂わせる職場を見つけ、「ハケン占い師アタルです」と押し掛けるところで終わりました。新しい職場で、第2シリーズが続く可能性があることを匂わせるエンディングです。テレビ朝日は放送20周年を迎えた『科捜研の女』の沢口靖子のように、杉咲花にも占い師を延々と続けさせるつもりでしょうか。それはさすがにしんどいでしょう。沢口靖子道を歩めるのは、沢口靖子だけですから。

エンディングで印象に残ったのは、上野と田端の両家が初顔合わせした食事会のシーンでした。緊張しがちな食事会を盛り上げようと、普段はマジメな田端は「この結婚で、みんなが幸せになるかどうかを占います!」と唐突に言い出します。シュウマイをみんなで一個ずつ食べることで、ロシアンルーレットふうに「幸せになる、ならない」を判定しようというものです。その結果は、見事に「幸せに……ならない」でした。オー・マイ・ガーッ! でも、即座に上野がシュウマイを追加オーダーすることで「幸せになる」に変えてしまいます。要は占いや運勢といったものをどう受け止めて前向きに生かすかは、本人たちの工夫と努力次第ということをこのドラマは伝えたかったようです。

それにしても、第8話でアタルが放ったカナリアはその後どうなったのでしょうか。そのことが唯一の気がかりです。
(文=長野辰次)

当記事は日刊サイゾーの提供記事です。

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