「後手に回ったと言われるより、過剰だと言われる方がまし」 ピエール瀧作品の”自粛”判断の背景にある”けしからん罪社会”

AbemaTIMES

2019/3/15 16:10


 コカインを使用した疑いで12日に厚生労働省麻薬取締部に逮捕されたピエール瀧こと瀧正則容疑者。捜査が進む中、議論を呼んでいるのが関連作品の扱いだ。

折しも瀧容疑者は「電気グルーヴ」の30周年ツアー中。しかし今日と明日の東京公演の中止が決定、CDなども出荷停止となっている。さらにTV番組は過去の有料動画が配信停止、放送予定の番組休止となるなどの影響も出ている。また、来月開催される「静岡まつり」のPRソングについて、静岡市は曲の使用の自粛を決めた。

音楽、俳優、バラエティ、CMと多彩な才能で活動の幅が広かったこともあり、5億円とも30億円とも言われる違約金が発生するとの報道も出ているが、「好きなドラマ、映画がお蔵入りはショック」「暴行や性犯罪のように傷つけられた人がいたら話は別だけど」「作品に罪はない」といった声もあがっている。出演者などの不祥事で、放送の自粛や作品のお蔵入りは必要なのか、それとも過剰反応なのだろうか。

 ジャーナリストの江川紹子氏は「例えば不倫の問題もそうだが、企業や商品のイメージを良くするためにやっているCMならまだ分かる。しかしドラマや映画、音楽といった文化的な作品が潰されることに違和感を覚えている。今回は人を傷つける犯罪ではないので、過去の作品や、いわば"ちょい役"のようなものにまで無きものにしてしまうのは過剰ではないか。一方、そこで放送や上映を続ける判断をした企業にクレームをつけたり、叩いたりする風潮が萎縮を招いていると思う」と話す。

 「清原和博さんが覚せい剤で逮捕された時、甲子園球場内の資料館から清原さんのバットの展示が取りやめになったというニュースを受けて、話を聞いてみた。結局のところ"クレームがあるから"という回答だった。"でも、出してほしいという人もいるでしょう"と言うと、"後手に回ったと言われるより、過剰だと言われる方がいい"ということだった。マスコミも含め、最近の風潮は全てこれだと思う。仮に彼が罪を犯したことが事実だとすれば罰は受けなければいけない。ただ、そのことのために全ての作品がお蔵入りになって、共演者や私たち視聴者までもがある意味でペナルティを受けなければならないのか、という発想もできると思う。ちょっと違う角度からこういう問題を考えてみるというのも必要ではないか」。

 IT関連のトラブルにも詳しい深澤諭史弁護士は「テレビ番組も映画も一つ文化、芸術で、スポンサーとしてもそこに投資している、ということが宣伝にもなっているので、当然切り離すことはできない。ただ、CMの場合はまさにイメージそのものを売るので、ネガティブなことに対しては取り下げの方向で考えざるを得ないだろうが、一方で映画やドラマの場合は演技を売っているとも言えるという違いはある。また、やはりネットの時代になって、"けしからんと""不謹慎だ"と発信する人たちの声が強くなる傾向にあると思う。この角度からこう解釈を重ねると、不謹慎だよねというような、"よくそこまで想像力が働くな"と言いたくなるケースも増えている。要するに"けしからん罪"だ」と指摘した。

 週刊東洋経済の山田俊浩編集長は「例えば『アナと雪の女王』場合、イメージを守るという理由から判断するのは分かるが、LIXILのトイレのイメージ悪化につながるだろうか。全てがそこまで深い考えを持って判断しているのではないように思えるし、例えばそれが建築物なら壊すことはしないと思う。結局、"コストや技術的に可能だよね、それならやらないと"ということで差し替えやカットをする。やれることはやっておいた方が無難だということで、あまり深い意味はないと思う」とコメント。

慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「瀧容疑者が出ていることで作品の世界観が完成していたり、差し替えによって前後の文脈がおかしくなってしまったりするのであれば、そのまま出すのは構わないと思う。単純に瀧容疑者の存在を消していこうとするのは問題の本質をとらえていないし、あまり意味がないと思うし、差し替えが間に合わないからという理由で放送や上映を取りやめるというのは違うと思う」とした上で、「そういう"けしからん"系の人は"ノイジーマイノリティ"とも言われるが、おそらく暇な人が多いと思っている。そういう人たちにネットで絡まれても、戦っちゃいけないという意見があるが、そのとおりだと思う。結局はこの暇な人たちにアプリをダウンロードしてもらい、コンテンツを見てもらい、PVを稼いでもらっている部分があって、いわば暇な人たちをお客さんにしてしまっている社会だと言えると思う」と主張した。

 また、AV男優のしみけんは「NHKはみんなのお金で作品を作っているんだから、放送するかしないかを僕たちが決められるようにすればどうか」と提案すると、ふかわりょうは「画期的だが、お金を払っているのにそういう人を見せるのかというクレームも出てくるだろう。むしろ民放以上に難しい空気がNHKにはある気がする」と話していた。

議論を受け、小川彩佳アナウンサーは「今回のように被害者のいないケースと性犯罪のように被害者のいるケースの間の線引きは考えるべきだと思うが、日本で薬物が蔓延せずに済んでいるのは、毅然とした対応が一定の抑止になっているからではないかとも思う」、フリーアナウンサーの柴田阿弥は「委縮によって面白いものが生み出されにくくになっているのは確かだと思う一方、SNSがあることで差別的な表現への指摘や理解が広がって行くことも可能になったと思う」との見方を示した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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