夜からのデートがお決まり。彼女が夜を愛する理由 #終電と私

Glitty

2019/3/14 20:30

写真/gettyimages

0時が近づくにつれて、街の人々は「終電」が気になりだす。

帰ろうか、残ろうか。時計を見ながら正解を考える。甘酸っぱい思い出も、切なく悲しいできごとも、思えば全部「終電」がきっかけだった。

そんな、誰もがひとつは持っている終電にまつわる物語「#終電と私」を集めてみました。

彼女との出会いは、先輩の紹介だった。

魚喃キリコの漫画にでてくるショートカットで少年のような見た目、背も高く、モデルをしているとのことだった。

話してみると表面とは裏腹、天真爛漫な少女。仲を深めて僕らは付き合い、同棲を始めた。

いままで彼女はいたがそんな過去はエピローグで、彼女との付き合いが異性との交際の第1章であった。

彼女とのデートはいつも夜からスタートする。

コンビニで氷の入ったプラ製のコップを買って、缶チューハイを注ぎ、それを片手に街を闊歩する。

彼女は「夜は姿かたちが変わって、まるで夜の展覧会だね」と呟いた。夜を愛でているように思えた。
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日をまたぎそうになり、終電を気にし始めるころ、彼女は「ホテルに行きたい」と言い始めた。夜を愛している彼女の頑なさに根負けして、ホテル街へと向かう。

1回だけ、彼女に「なんでホテルが好きなの?」と野暮に尋ねたら、「デートの終わりを他人に決めて欲しくないんだよね」と答えた。

そのときは真意が分からなかったが、いまなら分かる。

終電という社会の時間軸ではなく、彼女の時間軸を生きたくてのアンチテーゼだったのだろう。

***

彼女と別れて数年経ち、社会人になった僕はもちろん社会の時間を気にしながら生きている。

毎朝起きる時間も、打合せの時間も、刻一刻と迫ってくる締め切りも。

自分で時間を決めることはなくなり、社会の時間が自分の時間軸となった。
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先日、大学の同期と再会したときに彼女の話が出た。いま、ニューヨークでキュレーターをしているらしい。

いろんな背景を持った、価値観の違う人種のるつぼ。

そんなニューヨークで「彼女」を生きているのだろうか。自分らしい自分軸で過ごせているのだろうか。

ふと、ホテル街を歩いた夜のことを思い出す。

僕はスマホを手にとって、ニューヨークの終電が何時くらいなのかを調べた。

どうやらニューヨークには終電がないらしい。あぁ、なるほど。

24時間走り続ける地下鉄よりも、彼女がそこで生活していることに驚き、同時に喜びを感じた。彼女の歩みを止めるものは何もない。

「デートの終わりを他人に決めて欲しくないんだよね」なんて、もう言わないだろう。だって終電がないんだから。

当記事はGlittyの提供記事です。

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