加藤和樹×上口耕平『BACKBEAT』対談 「ビートルズも最初は『バンドやろうぜ!』から始まった」

SPICE

2019/3/2 20:00


20世紀を代表する伝説のロックバンド・ビートルズの創成期であるハンブルグ時代を描いた、1994年公開の伝記映画『BACKBEAT』をイアン・ソフトリー監督自身が舞台化した作品が、2019年5月から東京、兵庫、愛知、神奈川にて上演される。

ビートルズは元々5人編成のバンドだった―5人目のビートルズメンバーと呼ばれる男、スチュアート・サトクリフ(戸塚祥太)は親友ジョン・レノン(加藤和樹)に誘われ、ロックバンドにベーシストとして加入する。スチュアート、ジョン、ポール・マッカートニー(JUON)、ジョージ・ハリスン(辰巳雄大)、ピート・ベスト(上口耕平)ら5人の“ビートルズ”は、巡業で訪れたドイツ・ハンブルグの地で頭角を現してゆく。

本作でジョン・レノン役を演じる加藤和樹と、ピート・ベスト役を演じる上口耕平に話を聞いてきた。実在の、しかも世界的に有名なミュージシャンを演じる事を二人はどう捉えているのだろうか。

バンド練習真っ最中! 手応えはいかに?


ーー加藤さんはジョン・レノン役を演じる訳ですが、そうなると歌い方もジョンに近づけていくのでしょうか?

加藤:先ほど音楽監督の森大輔さんと話していたんですが、綺麗にうまく歌うのではなくジョンのギリギリ感というか、わざと気だるく歌う事が必要になるんじゃないかなって。(演出の)石丸さち子さんもおっしゃっていましたが、ジョンは「常に怒っていてそれが歌声にも出ている」と。ワザと外して歌う歌い方なので、そうなると僕がいつも歌う時と異なる部分を使うので、それに慣れていかないとなと正直感じています。

ーー一度きりのライブではなく、公演中に何度も何曲もその歌い方をしなければならないのは結構身体に負担が大きいのでは?

加藤:そうですね。いつもの発声法とは異なるので声帯を鍛えないと。決して出ないキーじゃないんです。そのキーに届くか届かないかというところでジョンはシャウト気味に声を出すので、ワザと届かないような歌い方をするのが難しいです。そしてそれがカッコイイんですよ。まったく同じに歌う事は難しいですが、歌い方のクセを抑えておけばジョンという役としては結構歌えるようになるんじゃないかな?
加藤和樹
加藤和樹

ーーこの舞台の初日が開いて、加藤さんが歌い出したらこれまでの加藤さんの歌声を知っている方は「えっ!?」ってなりそうですね。

加藤:今練習している僕自身が「えっ!? こんな歌い方でいいの?」って驚いているくらいですから(笑)。でもジョンの歌い方に寄せていくと不思議と力が抜けた歌い方になり、彼らの曲の雰囲気に合うんですよ。逆に綺麗に歌うとただつまらない曲になるんです。

ーー上口さんはそもそもドラムは初めて?

上口:「ほぼ」初めてです。でも興味はあったんです。サミー・デイヴィスJr.がバンドの音楽に合わせてタップダンスをしている映像を観ていた時に、サミーがドラマーに替わって自分が座るといきなり激しくドラムを叩き出して! それが本当に衝撃的だったんです。あと、ディズニーランドに行った時、ミッキーマウスがドラムをものすごく激しく叩いているのを見て、また衝撃をうけたり(笑)。そんな記憶もあって、以前舞台で一緒になったドラマーの方から個人的に教えてもらった事が少しだけありました。
もともとダンスをやっていて、ダンスのときに身体からリズムが流れるように踊れたら……と考える事も多々あったので今回の舞台に参加できるのはまたとないチャンスだと思っています。

ビートルズ創成期をどう描く?


ーーさて、お二人は実在の人物を演じる事になりますが、その点はどう捉えていらっしゃいますか?

加藤:実在はしていますが、ビートルズがデビューしてブレイクする前の若い頃の物語なので、そこをどう描くか、だと思います。いざこざやスチュ(スチュアート・サトクリフ)の事も乗り越えてビートルズがスタートした事とかもですが。

上口:過去の資料や映像を観ても、ジョン・レノンこそが「ミスター・ビートルズ」なんですよ。すごく頭の切れる人で生き方がロックンロールな人だったんだなあって思います。そこを和樹くんがお客さんにどう伝えていくのかは僕らも楽しみです。

ーーそんな上口さんが演じるピート・ベストも“5人目のビートルズ”と呼ばれる人なんですよね。リンゴ・スターが入る前のドラマー、ピートについていろいろ調べてみましたか?

上口:調べました。人物像や何故ビートルズを抜ける事になったのかも。ジョージがピートを「要らない」と判断したという説がいちばん有力のようですね。そもそもハンブルグツアーのために急遽呼ばれたドラマーですから。また彼だけマッシュルームヘアを拒んだという説もあって自分のポリシーが強いのかもと(笑)。さち子さんとも話したんですが「ピートは自分から発信しない人。不動の人」なのかなと感じています。

加藤:本当に(ピートは)喋らないよね(笑)。でも何か口にした時、その一言に重みがあるようにも感じます。映画版の中でも「ドラムは喋るもんじゃない」って言っていましたし。だからこそ一言が大きな影響力を持っているポジションなんだと思います。
僕がご一緒した元↑THE HIGH-LOWS↓の大島賢治さんも寡黙な方でした。そのどっしり構える性質がピートにもあると思う。そんな人物をこの耕平がどう演じるんだろうって。
(左から)加藤和樹、上口耕平
(左から)加藤和樹、上口耕平

ーー寡黙な人物を演じるのは、台詞の力に頼れないから何気に難しいのでは?

上口:そこはドラムの音で会話できるようにならないと(笑)! 役者自体がちゃんと演奏する事も大きなチャレンジの一つだと思っています。ピートはすごく尖ったイメージがあるんですが、実はクレバーで温厚な方だったらしいです。最後は技術面でビートルズを去っていくんですが、この『BACKBEAT』ではそういった点をどう表現していけるのか。ジョンをはじめ、周りの人たちとの関係性をどのように築いていけるのか。その辺りも研究しながら見せていきたいです。

ーーそれにしても世界的に有名な人物を演じるのは相当タフな事になると思うのですが、演じる上での何か秘策はあるのでしょうか?

上口:ハンブルグツアーの映像も含めて当時の資料がほとんど残っていないので、当時の彼らの音などを忠実に再現するだけではなく、荒っぽくとんがった当時のビートルズが当時のお客さんに与えたような「感覚」を、僕らが僕らのお客さんに与えることができればいいのではないかと思っています。

加藤:僕らが参考にできるのは、出来上がってからのビートルズしかないので、逆にいかようにでも作っていけると思います。演じる上での「余白」があると思うんです。

ーーお二人にとってビートルズはどんな存在ですか? 世代的にはかなり離れていますが……。

加藤:実はビートルズの音楽とはそんなに接点がなくて。僕は音楽をやってはいますが、バンドは経験してないので、これがいい機会になるような気がします。なまじ憧れとかがそれほどない分、フラットな状態で接していられると思うんです。これがもし大好きなB’zの稲葉浩志さんの役をやれって事であれば、もう畏れ多くて何もできなくなるかも(笑)。

上口:僕の両親がビートルズの大ファンで、世代がドンピシャなんです。だから家にはビートルズのCDがありましたし、昼間は音楽をかけながら母が掃除をしているような家庭でした。家族は僕がビートルズの作品をやると聞いてすごく喜んでいます! 僕もジョン・レノンが好きで彼がポートレートで着ているような細目のミリタリ―ジャケットとかプチパンタロンを買って履いてみたこともありました。でも彼や彼らの過去にこんな事情があったとは。当時彼らが音楽を始めたきっかけや真似したアーティストなどを知るにつれ、それ自体はありきたりなものなのに、じゃあ彼らが何故あんなに爆発的に観客の心を掴んだのか……決して超絶技巧の演奏テクニックがあった訳でもないし。

加藤:割と誰もが真似できるような楽曲だし、繰り返しも多いフレーズなんだよね。

上口:それでもこんなに若者の心を掻き立てたものがいっぱい詰まっているのが「ビートルズ」というモンスターバンド。
(左から)加藤和樹、上口耕平
(左から)加藤和樹、上口耕平

加藤:バンドを始めるきっかけって皆一緒なんだなって思います。友達を誘って「バンドやろうぜ!」的な、誰もが通る道を少年たちは通り、自分たちの実力試しで違う街でコンサートツアーをやってみようとする。それって今のバンド少年たちがやることと同じなんですよ(笑)。そう考えるとすごく身近な存在に思えます。

上口:若者たちのノリだよね。出来上がった後のビートルズはとても洗練されたように見えますが、そこに至るまではすごくヤンチャだし。

加藤:言葉を選ばずにいうと凄く汚い(笑)。でもその汚さが凄くカッコイイ。

上口:そうそう。そのロックの汚さや激しさ、そういった原点を今回知る事ができて嬉しかったです。皆最初は一緒なんだなって。

ーーお二人ともお付き合いのある石丸さち子さんが演出を務めますが、石丸さんはどのような演出家さんですか?

加藤:とにかく熱い(笑)!

上口:確かに! あと役者を最後の最後まで信じてくださる方。稽古をしていて一つの課題が生まれた時、自分も周りもその答えは今日中には出てこないだろう、と内心思う場合があるんですが、ただ一人、さち子さんだけは「いや、まだまだ!」とその答えが出るまで何度もトライさせてくれるんです。で、そのトライの中でふっと答えが出てくる事があるんです。ここまで役者を信じてくださる演出家さんはなかなかいないと思います。

加藤:さち子さんは絶対あきらめない人です。だからこそ、さち子さんの座組みに入った暁にはとことん最後までやりますから大変ですよ(笑)! でもこっちも最後まで付き合おうと思えるくらい信頼しているんです。

ーー熱い石丸さんと、そしてスチュアート役の戸塚さん、ジョージ役の辰巳さんと作っていく舞台です。戸塚さんたちと本格的な合同練習はまだこれからと聞いていますが。

加藤:今はそれぞれ他の仕事もあるので個々で練習をしていますが、とはいえグルーヴ感、バンド感は「せーの」で音を出した時に分かるものだと思います。それを作り出す空間が出来るのを今は楽しみにしています。この音作りの中で芝居の空気感も出来上がっていくと思いますね。

上口:辰巳くんとは先日、ほぼ初めまして状態で僕のドラムと辰巳くんのギターを合わせるという出来事が(笑)! 個人練習はしてきましたが、生まれて初めてバンドで合わせるって事自体が感動でした。僕がリズムをキープして皆がそのリズムを感じながら無言で音を出していく。こんなに気持ちがいいものなんだって初めて知りました。そこに戸塚くんの歌声、和樹くんの歌声が混ざっていくとどんな事になるんだろうってワクワクしています。
上口耕平
上口耕平

ーー立ち稽古もまだ先ですが、今時点でどんな作品にしていきたいですか?

加藤:バンドを組んでやっていますが、ジョンは一貫して怒りを放っていると思うんです。その相手は人なのか時代なのか……常に満たされることがないんです。それは彼の生い立ちの部分にも関わってくるとは思うんですけど。幼少期に母親に育てられていないとか。だからこそ自分の音楽で自己表現していくしかないんですが。信頼できる仲間と一緒に活動するようになっていくんだけど、そのなかの一人スチュが絵の方に行ってしまい、ジョンはスチュとは単なる仲良しバンド仲間ではなく、男の友情……を超えた愛情をも感じていたんじゃないかと。その点は本人が否定はしていたけれど、どこかでそういう想いはあったんじゃないかなって。自分と同じ志の同類だと思っていた人が離れていく。その孤独感もジョンの中にはあったと思うんです。今回はその辺りをしっかり描きたいですね。

上口:それがまた10代のうちの出来事である事もポイントだと思うんです。10代って常に迷いずっと満たされない何かを抱えている。個人的な意見ですがスター性の一つが「孤独」なんじゃないかなって思うんです。どこか足りなさを感じていてどこかあがいていて孤独を感じている。でもこの演奏の瞬間だけは全力を懸けている。その一瞬のキラキラが10代ならではのビートルズの輝きなのかなあと思うんです。この「孤独」というワードは一人ひとりに当てはまっていて、僕が演じるピートも最終的には「孤独」を感じる事になる。ちょっと痛いけどこのキラキラする瞬間を僕たちが表現できたらなあと思います。

お互いの印象は? 「甘えん坊」「漢気」


ーーお二人の共演は『タイタニック』が初めてですよね?

加藤:そうなんですが、もっと前から知っているような気がするね。

上口:僕もそんな気がするんです、なぜなんだろう。初対面の時から初めてという気がしなかったんです。

加藤:すごく波長が合うな、という感覚していました。だから今ではお互いに何も隠す事がないので

上口:全部吐露しています(笑)。

ーーそんなツーカーなお二人ですが、お互いの魅力、長所と聞かれたらなんて答えますか?

加藤:耕平はこう見えて甘えん坊なんです(笑)。裏返すとちゃんと自分の弱さを見せる事ができる人なんです。信頼できる人にだけかもしれませんが。

上口:そうだよ(笑)!

加藤:(やや照れながら)弱さを認める事ができるって、それ自体が人としての強さだと思うんです。弱さに気が付いていないと後で気が付いた時に足元からくずれてしまうから。僕は自分の弱さを人に見せられないタイプなので、耕平のそれはすごい武器だなと感じています。

上口:僕からみた加藤和樹という人は包容力、漢気を感じさせる人。最初からファンでした。すべての事に真摯に取り組むんです。僕が時に気に病むことがあって和樹くんに相談すると、実の家族かというくらい真摯に向き合ってくれる。安心して何でも言えるし、学年では和樹くんが一つ上ですが、兄弟のような感じで大好きなんです。
(左から)加藤和樹、上口耕平
(左から)加藤和樹、上口耕平

取材・文=こむらさき 撮影=ジョニー寺坂

当記事はSPICEの提供記事です。

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