「地元の友達に負けたくない」横澤夏子が憧れる、“キラキラした東京生活”の大いなる盲点


 羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「東京を味わえる、一番キラキラした区に住みたい」横澤夏子
『中居くん決めて!』(TBS系、2月25日)

タレントがテレビで不動産を見せる、探すというのは、結構ナーバスな部分を含んでいる。どんな不動産を持っているか、もしくは借りたいかを話すことで、自分の財布事情がモロバレするからだ。特に賃貸物件の場合、家賃は給料の1/3程度に抑えるべきという“言い伝え”がある。となると、賃貸物件の値段がバレるのは、月収、ひいては年収もバレるということだ。

格差が広がり、リア充を嫌うこのご時世、テレビで不動産を見せる、探すタレントは限られている。「自宅や別荘の内部を見せるのはタレント・IKKO」「高級物件を狙って探すのは日本のインスタ女王である渡辺直美」といった具合に、キャラの立ったタレントしか思い浮かばない。化粧品ビジネスで一発当てたIKKOと、今や世界的セレブになりつつある直美なら、「視聴者も『高級物件がふさわしい』と納得するだろう」と制作側が思っているのではないだろうか。

こういう流れの中、『中居くん決めて!』(TBS系)で、久しぶりに上記の2人以外で不動産を探す芸能人を見た。芸人・横澤夏子である。21歳の頃から婚活パーティーに行くなどして婚活に励み、2017年に念願の結婚を果たした。相手は一般人男性で、利便性を考え、現在は都心の駅から近いマンションに住んでいるが、手狭なために引っ越しをしたいという。それなら、いっそ賃貸ではなく、購入した方がいいのかを、番組MC・中居正広に決めてもらいたいそうだ。

横澤の条件は、港区、中央区、千代田区という「東京を味わえる、一番キラキラした区」。賃貸であれば、「駅から徒歩5分以内、3階以上、家賃14万程度」の物件を探しているという。このエリアに住んだことのある人なら、即「無理だよ」と答えるだろうが、恐らく、わざと無知な設定にしているのではないだろうかと思う。上述した通り、家賃は年収を連想させる。横澤が的確な条件を掲げると、「それぐらい稼いでいますよ」と言っているようなものなので、彼女にとってはマイナスだろう。また、横澤は芸風として“キラキラした女性に憧れるキャラ”で売っているので、実際の収入は別として、テレビ上では「住みたいけど、住めない」ポジションでなければならない。

番組は格安物件から、億ションまで紹介するが、横澤が気に入ってかつ経済的に手の届く範囲の物件はなかった。同番組のゲストであるサンドウィッチマン・伊達みきおや富澤たけしは、「賃貸で様子を見て、家族が増えたら購入を考えれば」と勧めたが、中居は「賃貸にお金を払うのがストレスになっているのであれば、物件に出会ったら、即購入する」ことを勧めた。

横澤は、この番組に出演することで、キラキラに憧れるキャラを演じることができた。オリンピック後に地価や物件の値段は下がるかもしれないということは、前から言われており、今後、横澤のように家を探す新婚さんは増えるかもしれない。となると、横澤に今後、物件探しの仕事が来ることも考えられるので、この出演はビジネスとしてプラスだろう。しかし、もし横澤が、港区、千代田区、中央区を「東京を味わえる、一番キラキラした区」だと思って、キャラやビジネスではなく本気で定住したいと考えているのだとするのなら、結構しんどいのではないだろうか。

横澤は『文藝芸人』(文藝春秋、17年)で、自らの原動力について「地元(新潟県糸魚川)のOLの友達に負けたくない」と書いていた。もちろん、芸人だから、あえて露悪的に書いている部分はあるだろうが、見ず知らずのインスタグラムの女性の投稿をあれこれ言う芸風から考えると、他人の視線が気になるタイプ、もっと言うと自分が一番だと言われたい性質であると見ることもできるだろう。

「地元のみんな、見て。私は東京のキラキラした区に家を買ったの!」とアピールしたい気持ちもあるのかもしれないが、横澤の地元の人は、地元の価値観で生きているので、「芸能人として一発当てて、東京のおしゃれエリアに家を買う」ことがうらやましいと思ってくれるとは限らないのだ。実際、横澤は「文藝芸人」で「うちの地元じゃ、墓守をする人=家を継ぐ人が一番偉いという考えなのです。だから、給料がいいことなんて、まったく自慢にならなかったのです」と明かし、そのことを知って、「泣きながら家に帰った」とも書いていた。横澤の故郷だけではなく、日本の至るところに、市役所など安定したところに就職して、二世帯住宅を建て、親に孫の顔を見せることが幸せだと信じる人はいる。高年収の企業に就職して、独身で海外赴任してしまうよりも、低収入でも、親と暮らす、子だくさんの元ヤンの方が褒められる世界は、確かに存在するのだ。

また、上沼恵美子が『怪傑えみちゃんねる』(関西テレビ)で、かつて歌手デビューした時、セールスが一番悪いのが地元・淡路島だったと話していた。「同じ地元民なのに……」という理由で妬みが生まれ、応援する気持ちになれないということらしい。その代わり、ブレークすると「私が育てた」「えみちゃんとは親しかった」と言いだすとも付け加えていた。横澤が思ったほど、地元でちやほやされないのは、こういう人間心理も働いているのかもしれない。

しかし、本当の問題は、横澤がキラキラした区に定住してしまった場合である。横澤の価値観で言うのなら、キラキラした区に住むのは、勝者の証しだろう。ただし、そういうキラキラした区には、保守的もしくは排他的な人も多数いるので、そこに入れば、横澤は単なる新参者であり、代々そこに住む人と比べると“下”なのである。芸人として売れる、つまり勝者になった結果、一番下に行ってコンプレックスを刺激されるという矛盾を味わう可能性もあるわけだ。

横澤の言うキラキラ願望が、どれほど本気のものかわからないが、地元の人に尊敬されたいなら、両親にお城のような豪邸をプレゼントし、孫の顔を見せるのが効果的だろう。横澤の今の活躍ぶりなら、故郷に豪邸くらいたやすいはず。「横澤御殿」と呼ばれる豪邸が立った時が、かつての同級生への勝利宣言になるかもしれない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

当記事はサイゾーウーマンの提供記事です。

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