ホラーより怖い衝撃ドラマ『絶対正義』が教えてくれる「信念は凶器になる」

wezzy

2019/2/24 20:05


 大人の土ドラ『絶対正義』(フジテレビ系23:40~)が、放送開始から「予想に反して面白い!」「ホラーより怖い」と、反響を呼んでいる。

自分の定める「正義」の範疇から外れた者をSNS等で徹底的に叩き、必要以上に「正しさ」「正義」を求める現代。そんな時代のゆがみが生み出した、かつてない正義のヒロイン・範子は救いの天使? それともすべてを壊す悪魔ーー? 「私、何か間違ったこと言ってる?」と問いかける範子の狂気じみた「正義」は視聴者に恐怖と共感のどちらをもたらすだろうか。

高校卒業間近の1月、転校してきた高規範子はバスで痴漢されていた由美子を助けた。それ以来、由美子たちのグループは範子を「正義のヒロイン」と慕い仲間に加えることに。しかし、彼女たちは気づいていなかった。地味で礼儀正しい普通の少女だと思っていた範子の「本当の姿」に。

原作は「イヤミス」の旗手・秋吉理香子著書の『絶対正義』。映画化で話題となった『暗黒女子』や問題作『聖母』など、数々の衝撃作品を世に送り出し、コアなファンを獲得している。
不気味な範子と娘・律子
 最恐の主婦・範子を演じるのは昨年『ブラックスキャンダル』(日本テレビ系)で記念すべき初主演を飾った山口紗弥加。法律を唯一無二の基準にして生き、周囲の人間を容赦なく「正義」で追い詰める恐ろしい女性を熱演している。『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』(フジテレビ系)で狂気の妻を演じ、視聴者を震撼させた彼女の更なる怪演が見ものだ。

高校三年の三学期に転入してくるや、わずか数カ月のあいだに、温情で学生の喫煙を見逃した教師と警察官を懲戒解雇に追い込み、廃屋で寒さをしのいでいたホームレスまでも排除した範子。「正義」の名の下、まるでロボットのように冷徹な裁きを下すその姿には、義理や人情といった人間的な感情を一切感じ取れない。

いや、元々彼女はそんな感情を持ち合わせていないのかもしれない。なぜなら、裁きの対象が親しい友人でも唯一無二の我が子だとしても、その信念は揺るがないからだ。彼女の「正義」は誰に対しても異常なほどに平等で、かつ公平なのである。

すべてに対して正しくあることを追求する範子は、自身の娘・律子にもそれを強いている。決して母娘の仲は良好に感じられないが、2人はどちらも前髪を眉毛の上まできっちりと切り揃えた、おかっぱの「ニコイチ」ヘアスタイル。律子をまるで自分の分身かのように教育する範子に、背筋が冷たくなる。

正しすぎる母親を陰で「あの人」と呼び、正しすぎる行動に反発しているようにも見える律子だが、「寂しい」と訴えたり、範子の気持ちを試すような大胆な行動を起こしたり、その感情は複雑なようだ。しかし、達観したような瞳とふいに見せる不気味な笑みが、この娘が母に従う従順なキャラクターのままで終わらない事を物語っているようで、恐ろしい。
正義に翻弄される友人4人はどうなってしまうのか?
 範子と再会してからというもの、散々な目に遭わされる同級生の由美子(美村里江)、麗香(田中みな実)、理穂(片瀬那奈)、和樹(桜井ユキ)。異常な範子に対し怒りや恐れの気持ちを抱きつつも、友人である彼女を信じる気持を捨てきれていない。4人は学生時代、彼女から窮地を救ってもらったことを感謝しているからだ。

しかし、範子の「正義」により由美子は子どもを奪われそうになり、女優の麗香は仕事に大きなダメージを与えられてしまう。範子の能力を買い社員登用した理穂でさえ、彼女の起こすトラブルに耐え切れず、夫との仲まで険悪になってしまう始末だ。

唯一範子と渡り合えそうだったジャーナリストの和樹も、ジャーナリスト生命を絶たれるかもしれない危機に追い込まれている。果たして彼女たち4人は範子に反撃するのだろうか? それとも範子の「正義」に敗北してしまうのか? かつては「正義のヒロイン」であった範子が恐怖の対象へと変貌した今、どれだけ「正しい存在」であっても、いや正しくあればあるほどに範子は敵である。4人は彼女にどのように立ち向かっていくのか、今後の展開がとても気になる。少しでも希望が見えるラストだと良いのだが……。

演技派の女優陣たち
 主演の山口を含め、美村里江(元ミムラ、といえばわかるだろうか)、田中みな実、片瀬那奈、桜井ユキたち女優陣の成熟した演技が、この恐ろしい物語にリアリティを与えている。それぞれ問題を抱えたアラフォー女性を等身大に演じているが、特に印象深かったのは、美村が演じる由美子の自信のなさそうな疲れきった表情。華やかな3人とは正反対に、苦しい生活を送る彼女の劣等感や疲労が全面に表現されていた。笑顔で明るいイメージの強い、ふんわりとした女優だと思っていたが、今後は幸薄い主婦役でも需要が増えるかもしれない。

次に注目すべきは、この作品で女優デビューを果たした田中みな実。名だたる女優陣の中でもひけを取らず演技が自然で、視聴者から「上手い」「想像以上に良かった」と高評価を得ている。アナウンサーから女優へ活躍の幅を広げるとマイナス意見を囁かれることも少なくないが、今回の挑戦は大成功だったのではないだろうか。第二の「野際陽子」になれるかもしれない。

片瀬と桜井にいたっても、強そうに見えて実際は脆いという、人間味溢れる人物を巧みに表現していて申し分ない。実際の2人もそうなのではないかと錯覚するほどリアリティのある演技を見せてくれている。これまでは範子にしてやられ、苛立ったり怒っている場面の多かった2人だが、今後の展開によっては窮地を脱し、範子に一矢報いることができるかもしれない。2人の強さ溢れる演技に期待だ。
本当に恐ろしいのは人間である
 人間の恐ろしさを浮き彫りにするドラマ『絶対正義』は、この世で一番人を恐怖させるものが、幽霊や怪奇現象などではなく「人間」だということ、そして「信念」は心の支えになるが、時として凶器になることを教えてくれる。

クレーマーやモンスターと評される人物たちも、元々は「状況を改善したい」「自分の気持ちを理解してほしい」という信念から発生し、収拾がつかなくなってしまったなれの果てなのかもしれない。

自分は正しいと思い込み、聞く耳を持たない人間ほど始末に負えないものはなく、そんな人間とのトラブルを解決することは非常に難しい。最凶にして最強の主人公・範子はこのまま『絶対正義』を振りかざし、4人を恐怖で支配するのだろうか? 範子と娘・律子の挙動に背筋をゾクッとさせられながら、先の展開が気になって次回が待ちきれない。決して心温まる物語ではないが、刺激を求める視聴者にはオススメの作品だ。

当記事はwezzyの提供記事です。

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